夜の追従
掲載日:2026/11/08
夜はひとつの長い廊下だ
私は踵の音を殺して
あなたの影の
そのまた後ろを歩いている
街灯は等間隔に灯り
そのたびに私の輪郭を
少しずつ薄めては
また継ぎ足すように描き直す
呼びかけようとした名前は
硝子のように冷え
言葉になる前に
夜気へ溶ける
これを幽霊と名付けるには
浅はかで
オカルトマニアから手厳しい
お叱りを受けることでしょうか
どうでしょうか
ふと東の空
青黒い色で滲みはじめる
振り向かないあなたの肩越しに
私は初めて自分の影が
長く真っ直ぐに伸びているのを見た
それがなんだか喰らおうとする化け物じみている
あなたは光の縁を渡り
私はあなたが落としていった暗がりだけを進む
近づけば遠ざかる
遠ざかればよく視える
それは星のよう
追うことしか知らないこの足が
いつのまにか
夜のかたちを覚えてしまっている




