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「それなら魅了にかからないようにしようぜ!」  作者: イチイ アキラ


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01 生まれ変わった。マジか。

「それなら魅了にかからないようにしようぜ!」



「生まれ変わったー……マジかー……」


 ベッドの上で頭を抱える。

 生前、最期には無かった髪の感触に泣きそうになるが、現状には頭を抱えるしかない。

 メルヴィンは公爵家の長男。

 しかし自分の名前と家族構成に。国の名前などにも。

 これは前世で妹たちがプレイしていたゲームの世界に似ていると理解した。

 今しがた寝ていたら夢でみて思い出したのだ。

 時間はまだ夜明け前。こんな時間に起きだしたら使用人たちに迷惑をかけてしまう時間帯。

 そう、使用人、だ。

 前世のバイトに精を出していた人生では信じられないような。


 自分はメルヴィン・コーディング。

 コーディング公爵家の長男。

 まだ六歳。

 けれども前世は大学卒業間近の――……。


 頭を抱えて、シーツに落ちている髪が銀髪なことにも。

「あ、白髪だと思ったら銀髪か」

 やらばやはり自分は生まれ変わったのだろう。鏡をみたら目の色にもびっくりするだろう、きっと真っ青だからだ。

「マジかー……」


 自分は少し歳の離れたかわいい妹たちの、かわいい我儘にちょっと振り回される三人兄妹の長男だった。

 けれども早くして亡くなった。


「若い分、めちゃんこ進行早かったんだよな……」

 気がついたらあれよあれよ、だった。

 妹達が編んでくれた帽子の感触を、頭を抱えて思い出す。

 そして泣かないように目をきつく閉じた。

 泣いてもどうしょうもないのは前世で経験済みだ。

 ならば前世の記憶を大切に――宝物にして。そして現在に生かそう。

 何せ生まれ変わりだなんて。まるで自分こそがゲームの主人公のようだ。

「確かテンプレな……イラストが気に入って買ってきてたって言ってたんだよな……ワゴンセールで」

 題名までは思い出せないが、自分の名前からそのゲームの内容をしっかり思い出す。夢でみたより鮮明に。


 バイトして買ったゲーム本体。

 けれどもいつしかそれは妹一号の専用機に。楽しそうにゲームしているかわいい妹の笑顔をみたら、それなら自分用を改めてとまたバイトして――それが妹二号の。そうだよね、協力プレイとかしたいよね、うん。

 妹たちが喜んでいるなら兄冥利に尽きる。

 妹たちとは一号とは六歳、二号とは八歳、歳が離れていたから、本当に可愛かったし。

 親には甘やかすなと怒られたが。親には自分が妹たちにゲーム機を買ってあげたにみえただろう。いや実際にそうなのだが、本当は自分用でしたとは飲み込んだ。

 妹たちが気にしちゃうから。

 妹たちが喜んで御礼を言ってくれたのは嬉しかったので。

 親はそんなバイトのために結構よい自転車を買ってくれていたから、実のところ親が一番金を払ってくれたようなもの。自分にも親は甘かったとおもう。こそっと自分だけお年玉も増やされたし。

 良い親だった。

 そんな仲良い兄妹でした。

 妹たちも兄が好きなシリーズが出た時はちゃんと本体を返してくれていましたとも。その頃には自分用は据え置きのもっと高いの買っていたりしたんだけど。

 二人でお年玉貯めて自分のためにソフトを買ってくれたり。

 本当に可愛い妹たちだった。

 ……形見になったのかなぁ。

 早死にして、ごめん。


 それはさておき、今気がつけばそんな妹たちがプレイしていたゲームに似た世界に生まれ変わったことに。

 居間のテレビで恋愛ゲームをできる妹たちはある意味最強だった。

 まあ、兄がゲーム好きなの知っていたから……いや、そもそも居間でずっとゲームしていたの自分だった。初めはクリスマスに親に買ってもらったゲーム機を……そりゃ、物心ついた時から兄が居間でゲームしていたら、そりゃそうなるよな、妹たちよ。ごめん。英才教育しちゃった。


 またもそれはさておき、そういう理由でメルヴィンは自分のジャンル外のゲーム知識があった。何だったら攻略本も読んでいた。だってテレビ占領されて暇だったとき本が目に入ったら読むじゃん?


 そしてまさか自分が攻略対象に生まれ変わっただなんて。


 妹たちよ、兄ちゃんは君たちの推しに――いや、妹たちの推しは違うキャラだったわ。


 メルヴィンに対しては「妹のこと庇わない兄なんてサイテー!」とのことだったはす。


 そう、妹たちがツッコミいれていたゲームだったと思い出しました。

 題名までは覚えていないのがあれだけど、登場キャラクターは画面越しに覚えている。


 メルヴィンは「悪役令嬢」ポジションとなるオーレリアの兄だ。


 今世も「兄」である。


 そして「主人公」に攻略される対象であり……「悪役令嬢()」を蔑ろにする「兄」である。


 妹たちが「サイテー!」と言っていたときに自分も頷いていた。妹たちは自分という兄に大変可愛がられていたので、自分を引き合いに恋心で主人公のことばかりを守り、実の妹が悩んでいるのも気にしない最低兄貴だと余計に怒っていたような……兄貴冥利。

 ちなみに年頃になったけど自分は恋人いませんでした。できてないまま早死にしました。こんちくしょう。


 またまたさておき、頭を抱えたまま状況を考える。

 そう、今世も兄なのだ。

 そしてオーレリアは二つ歳下で、また可愛い妹だ。シスコンの魂は生まれ変わっても、だ。

 昨夜、眠る挨拶をしてそれぞれの部屋に別れたが、まだ四つの彼女を自分は可愛がっている。

 可愛がっているのだ。

 兄貴の魂、なんとやら。

 それがゲームが始まると主人公に傾倒し、蔑ろにしてしまうようになる。

「むむ……」

 考える。考える。

 それはゲームシナリオなのか。

 妹たちがツッコミ入れまくりのシナリオなやつ。

「……それなら、ツッコミ入れられたくないなあ」

 メルヴィンは考えた。

 そもそも無理があるシナリオで――現状、本当に無理がありすぎて。


 自分はコーディング公爵家の跡継ぎ。

 そして妹は将来の王太子の許婚。

 妹は、それが生まれながらにして決まっていた。

 いわゆる政略というやつだ。

 それは今の王様の前の王様がやらかした余波であるのだが。

 だからその政略を御破算にすることになると――ゲームのエンディング後は恐ろしいことになるのでは。

 そのあたりはゲームの背景はそこまで作り込まれていなかった。

「……つか、ゲーム……良く考えたら、さあ……」

 ゲーム画面を思い出す。


 主人公は男爵家に引き取られた少女の成長と恋という、ありきたりお約束なゲームだった。

 だが、そのゲーム。

 主人公の――育成ゲームである。


 各種パラメータを上げていくのだ。 

 学力。

 体力。

 魔力。

 そして――魅力。

 あと音楽とか料理とかもあった。

 だが注目するのは「魅力」だろう。


 この世界、魔力――魔法があるのだから。


「って!? つまりこれ魅了(・・)じゃねえ!?」

 

 それならば対処しようがある。

 前世の知識や経験をフルドライブだ!

 ゲームに寛容であった前世のお父さんお母さん、おかげで今世はドツボにハマらずに済みそうです。


「そして今世のお父さんお母さん! お助けください!」


 あっさり頼った。

 そして両親への説明から説得、彼が思いついた対処――提案は、案外すんなり受け入れられたのだった。

 理由は自分たちの前の前の世代。


 前例があったのだ。

 悪い意味での、前例が。

 それがあるから政略で、すでに妹は婚約が決まっている理由。


 それを先王ダスティンのやらかしと人は言う。



 今回は頑張る少年たちが主人公です。

 よろしくお願いします。


 これから暑くなる季節なのでどうか皆様ご自愛を。けれどもその暑さの中でも献血などしてくださる方々に、ここより御礼申し上げます。


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