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集灯町~廃校舎の七不思議~  作者: パパパパーン


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第八章 灯影ゴーストキャンパス

【灯影ゴーストキャンパス CM】


アップテンポのカノンの曲が流れる。ピアノとシンセが重なり、光の粒が画面いっぱいに弾ける。


画面中央に、カノンお姉ちゃんがステージライトの中から登場!

 

白と水色のセーラー風ドレスが光を反射し、

胸元の音符ブローチがキラッと輝く。

髪のリボンが風に揺れ、背景の校舎が虹色に光る。

カノンお姉ちゃんがウインクしながら

 

「みんな〜〜〜っ!こんにちはっ♡

灯影ゴーストキャンパス管理人の、カノンですっ」

 

キラキラと輝く衣装をなびかせ、ウインクしながら手でハートを作っているカノンお姉ちゃん


カノンお姉ちゃんがくるっと回ると、

背景が切り替わり、校舎がテーマパークのように変化する。

無数の風船と鳩がが舞い上がり、幽霊スタッフが笑顔で手を振る。


「ここはね、幽霊さんと人間がい〜っぱい遊べる、世界でたったひとつの『学校テーマパーク”』なんだよっ!」

 

後ろで机と椅子がふわ〜っと浮き上がって、カノンも一緒にふわふわと浮いている。


「ほらっ、見て見て!ポルターガイスト体験もできちゃうの♡机も椅子も、あなたも、ふわ〜〜〜っと浮いちゃうよっ!」


 側にいる観光客がふわっと浮いて手を振り、カノンお姉ちゃんが笑顔でハイタッチしている。


イエェーーーイ


カノンお姉ちゃんがトレーを持つと、

揚げパンがふわっと乗り、光の粒が弾ける。

トレーの上で色とりどりの光が踊る。


「給食室ではね、幽霊コックさんが作る、懐かしの給食と未来を感じる最新の給食を作ってるの。」


幽霊コックさんが帽子をクルっと回してウインクする。


肖像画から半分体を出した幽霊画家が、

空中に絵を描く。

カノンの笑顔が絵の中に浮かび上がる。


「美術室では、幽霊画家さんがあなたの似顔絵を『スッ・・・・』て描いてくれるよ!」


絵が完成すると、光の花びらが美術室に舞う。


水がふわっと舞い上がり、

いくつもの虹がプールにかかる。

カノンがその虹を滑り台のように滑って笑う。


「プールでは、流れるプールも大きな波も特大噴水もいっぱいあって最高に楽しいの♡」


幽霊ライフセイバーが敬礼している。


画面が夜に切り替わり、

校舎が幻想的な青い光に包まれる。

花子さんと人体模型がにこやかに手を振る。


「そして夜は・・・・ドキドキの 七不思議ナイトツアー!

 怖いから覚悟してね。私達全員で脅かしちゃうんだから♡」


カノンお姉ちゃんはじめ、大勢の幽霊が画面一杯に押し寄せる。


カノンがステージ中央で両手を広げる。

後ろに幽霊スタッフ全員が並び、光の粒が舞う。


「みんな〜〜〜!【灯影ゴーストキャンパス】で最高の一日を過ごそうねっ♡カノン、待ってるよ〜〜〜!!」


【灯影ゴーストキャンパス 8/31オープン】

カノンのテーマ曲が最後まで流れ、

画面に「光と影の学校へようこそ!」の文字が輝く。


 

【灯影ゴーストキャンパス開幕前の朝】


 8月31日。

 朝から太陽の熱い光が降り注ぎ、蝉の声が朝早くから鳴り響いていた。


ミーンミンミンミンミン

ミーンミンミンミンミン


ニュースでは連日の最高気温更新を伝え、熱中症注意や暑さ自慢をする町の報道をしている。


そしてこの日、集灯町は今年最大の活気に満ち溢れていた。


朝から数日前から観光客が押し寄せ、報道陣が殺到し、レポーターやお笑い芸人など多くの芸能人がオープン前の灯影ゴーストキャンパスを報道していく。


中継車が何台も並び、巨大なカメラが校門を狙っている。


芸人達が汗だくでリポートし、後ろで幽霊がピースして映り込んでいる。



灯影ゴーストキャンパス周辺はまるで別世界だった。


 校門の前から商店街の角まで、

 人、妖怪、人、神様、人、妖、人。

 そしてその間を、幽霊たちが甲斐甲斐しく動き回っていた。


 白い半透明の姿で、

 冷たい麦茶を配る幽霊のおばあちゃん。

 おにぎりを浮かせて渡す幽霊の少年。

 行列の整理をしているのは、かつての体育教師の幽霊で、

「押さない!走らない!霊も人も仲良く!」と声を張り上げている。


 幽霊たちはみんな笑顔だった。

 人間たちも、神も天使も悪魔も妖もみんな笑顔だった。



 数日前からテレビでは連日この話題。

 「たった1ヶ月で完成した奇跡のテーマパーク!」

 「幽霊が働く観光地!?安全性は?」

 「管理人カノンさん、笑顔がまぶしい!」


 ニュース番組でも、バラエティでも、

 カノンお姉ちゃんの姿が映っていた。

 ピアノを弾きながら笑う姿。

 幽霊スタッフとハイタッチする姿。

 そして最後に必ず言う。


「みんな〜、灯影ゴーストキャンパスで待ってるよ♡」


 その一言が、町中を明るくしていた。


 福大たちは校門の前で立ち尽くしていた。

 あの廃校舎だった灯影小学校が——

 今はまるで夢の国のように輝いている。


 校舎の壁は淡い光を帯び、

 屋根には虹色のラインが走り、

 校舎の窓からは光の粒がフワフワと飛び出している。

 風船と幽霊と人魂が校舎の周りをプカプカと浮かび風に身を任せている。

 かと思えば、窓の中では幽霊たちが準備に追われている。

 校庭には屋台が並び立ち、今か今かと観光客を待ち望んでいる。

 校庭の特設ステージでは、照明や音響の最終チェックが行われ、幽霊スタッフ達が飛び回っている。

 体育館の屋根には「WELCOME TO GHOST CAMPUS」の文字が光っていた。


 福大は呆然とつぶやいた。


 「・・・これ、本当に・・・あの学校・・?」


 雷斗が口を開けたまま固まり、

 賽は目を丸くして、

 まつりちゃんは


「キャハハハハ!カノンお姉ちゃん、テレビ出てたもん!」


と興奮している。


 大人たちも言葉を失っていた。

 光代さんでさえ、

 「・・・まぁ、悪いようにはしないって言ったけど・・・ここまでとはねぇ・・」


 と苦笑していた。



 オープン前日から並んでいる人たちは、

 幽霊たちに飲み物をもらいながら談笑している。

 「幽霊さん、ありがとう!お金は?」

 「サービスですから。」

 「ありがとう。」

 「いえいえ、でも、ただより怖いものは・・・・ありませんよぉ。」

 「幽霊さんがそんな事、言わないでよ。」

 「はっはっはっは。」


 そんな会話が自然に交わされていた。


 近隣住民への配慮も完璧。

 幽霊たちは夜通しで交通整理をし、

 ゴミ拾いをし、

 「人も霊もマナーを守って楽しく!」

の看板を掲げていた。


 まるでこの町全体が、

 “光の祝祭”に生まれ変わったようだった。


 賑やかな町の雰囲気に当てられているぼくは、ふとあの夜のことを思い出していた。


 影に囚われ、学校の七不思議を巡るように見た、カノンお姉ちゃんの過去。

 パパやママ、大人達の罪。

 みんないっぱい苦しんで、いっぱい泣いて。

 最後に泣きながら見送ったカノンお姉ちゃん。

 笑顔で光の中に消えたカノンお姉ちゃんの姿は今でも忘れられない。


 小学2年生の夏休み初日の夜と、廃校舎の灯影小学校で見た朝日、カノンお姉ちゃんとぼく達は間違いなく一生忘れられない夏を経験したんだ。


それが今・・・・

テレビの中で笑っている。

目の前でアイドルみたいに輝いている。


 「・・・あの悲しい別れは・・・・

 なんだったんだろう・・・。」


 ぼくは嬉しいのか、寂しいのか、よく分からなかった。

 でも胸の奥がじんわり温かくなるのだけは確かだった。


 きっと、これが“カノンお姉ちゃんの朝”なんだ。


 【助けて】


 行列の熱気とざわめきの中、

 突然、空からキラキラした光が降ってきた。


「・・・あれ・・・?」


 ぼくが見上げた瞬間——


カノンお姉ちゃんが飛んできた。


 アイドル衣装のスカートをふわっと揺らしながら、

 光の尾を引いて一直線にぼくへ向かってくる。


「福大ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ドンッ!!


 そのまま抱きつかれて、


 クルクルクルーーー!


 僕とカノンお姉ちゃんは一緒になって回転した。


 そして僕の胸に顔をうずめて、

 カノンお姉ちゃんは満面の笑みで言った。


「来てくれたの・・・嬉しい♡」


ズキュン!!


 ぼくは——

 顔が真っ赤になって固まった。


 心臓がバクバクして、手も足も全然動かない。


 雷斗が「お、おい・・・」と引きつった声を出し、

 まつりちゃんは「キャーーーー!!」と大興奮。

 賽ちゃんは僕たちを凝視している。

 大人達は笑って眺めている。


「か・・・カノンお姉ちゃん!?」

「なに?」


 カノンお姉ちゃんが上目遣いで困った表情で顔をグイッて近づけた、その瞬間。


 白雪の背後に、氷のオーラが立ち上がった。


「・・・福大に・・・近づき・・すぎ!」


 白雪の目が細くなり


 キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!


 氷の槍がカノンに向かって飛ぶ。


 しかし——


 カノンお姉ちゃんは

 スルッと空中でかわした。


「わっ♡ 危な〜い!」


 そして——


カキィィィィィィーーーン


ぼくが氷漬けになった。


「ええええええええええええええええええええ!!?」


 ぼくは氷の中で涙目になりながら震えた。


 白雪はプンプン怒っている。


「福大・・・渡さない・・・。」


 カノンお姉ちゃんはお腹を抱えて大笑いした。


「アハハハハハ!!

 福大、氷になってる〜〜〜!!」


 その笑いにつられて、

 雷斗も、まつりも、大人たちも、

 幽霊たちまで笑い出した。


 ぼくだけが氷の中で泣いていた。


 ひとしきり笑ったあと、

 カノンお姉ちゃんはふっと真顔になった。


 その表情は、あの夜に見た“本当のカノン”だった。


「・・・ねぇ、みんな。・・・助けて。」


 ぼくたちは一瞬で空気が変わったのを感じた。


 何をしてほしいかなんて分からない。

 でも——


 カノンお姉ちゃんが“助けて”と言ったら、

 ぼくたちは必ず助けに行く。


ぼくも、雷斗も、まつりちゃんも、賽ちゃんも、白雪も。

 パパ達もママ達もみんな


 ぼくたちは迷わず声を合わせて言った。


「分かった。」


 カノンお姉ちゃんは目を丸くして、

 そして——

 あの時とは違う、心からの笑顔を見せた。


「・・・ありがとう。」


 今度はちゃんと届いた。

 カノンお姉ちゃんの言葉が。

 そしてぼく達もちゃんと受け取れた。


「オープニング準備が全然間に合わないの!!

 みんな助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 ぼくたちの返事はもう決まっていた。


「任せて!!」


【灯影ゴーストキャンパス・初日】


 オープン初日の灯影ゴーストキャンパスは、

 朝からずっとお祭り騒ぎだった。


 校庭では屋台から美味しい匂いが漂い。特設ステージからは有名な歌手やお笑い芸人が観客を湧かせている。


 体育館はどこまでも広がり、観光客がドッジボールやバレーボール、ボーリングにビリヤード、ゲートボールにパターゴルフ、あらゆる球技を楽しんでいる。

 カノンお姉ちゃんとぼくたちは、

 飛んでくるボールを拾ったり、

 幽霊たちと一緒に審判をしたり、

 汗だくになりながら走り回った。


「はい次の試合いくよ〜!」

 カノンお姉ちゃんの声が体育館に響いている。



 13階段では、

 踏むたびに“ポンッ”“キンッ”“トンッ”と音が鳴り、観光客が階段を上り下りし、

 ぼくたちはそのリズムを合わせて誘導した。


 「せーのっ!」

 みんなで階段を踏むと、

 階段全体がひとつの楽器みたいに音を奏でた。


 カノンお姉ちゃんは笑いながら手拍子をしていた。



 理科室では、

 人体模型が白衣を着て、

 カノンお姉ちゃんと一緒に化学実験を披露していた。


 「次はね〜、この薬品を混ぜると……」


 ドンッ!!


 光の煙がふわっと広がり、

 観光客が歓声を上げる。


 ぼくたちは薬品を運んだり、

 賽ちゃんが人体模型の腕が取れたのをそっと戻したり、大忙しだった。



 美術室では、

 カノンお姉ちゃんがモデルとして座り、

 幽霊画家たちが空中に絵を描いていた。


 ぼくたちは観光客の席を案内したり、

 絵の具を浮かせて渡したり、

 完成した絵を受け取って手渡した。


 「カノンお姉ちゃん、今日めっちゃ可愛い!」

 まつりちゃんがはしゃぐと、

 カノンお姉ちゃんは照れながら笑った。



 女子トイレでは、

 花子さんが観光客と恋愛相談をしていた。


 「え〜?その男の子、絶対脈アリだよ〜♡」


 ぼくたちは順番待ちの列を整理しながら、

 花子さんの恋バナに耳を傾けていた。


 白雪は男子の落とし方を真剣に聞いていた。



 校長室は無数の鏡で埋め尽くされ、

 鏡の中には“過去の自分”と“未来の自分”が映っていた。


 ぼくたちは鏡をピカピカに磨きながら、

 観光客が迷わないように案内した。


 「未来のオレ、なんかカッコいいな。」

 雷斗が真剣に鏡を見つめていた。



 そして最後は音楽室。


 カノンお姉ちゃんがピアノを弾き、

 幽霊楽団が演奏を始め、

 ぼくたちは観光客の誘導や照明の調整を手伝った。


 音楽室は、

 光と音と笑顔で満たされていた。



 夜になると、七不思議ナイトツアーが始まり、キャンパス中に観光客の悲鳴が響いた。


 「きゃああああああ!!」

 「うわああああああ!!」


 でもその悲鳴は、

 どこか楽しそうだった。


 ぼくたちもカノンお姉ちゃんも、

 幽霊たちも、

 みんなヘトヘトだった。


 でも——

 本当に楽しかった。



 ツアーが終わり、

 校庭のベンチに座り込んだぼくたちに、

 カノンお姉ちゃんが歩み寄ってきた。


 汗で前髪が少し乱れていて、

 でもその笑顔は、

 今までのどの瞬間よりも明るかった。


「・・・助けてくれて、ありがとう。」


 ぼくたちは顔を見合わせて笑った。


「いつでも呼んでね。絶対に駆けつけるから。」


 ぼくが言うと、

 カノンお姉ちゃんは目を丸くして、

 そして——

 ゆっくりと微笑んだ。


「うん。

 ・・みんなも“助けて”って言ってね。

 私もみんなのこと助けに行くから。

 だって私たち・・・。」


 カノンお姉ちゃんは、

 朝日みたいに優しい笑顔で言った。


「友達だもん。」


 その言葉が、

 灯影ゴーストキャンパスの夜空に

 静かに溶けていった。

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