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集灯町~廃校舎の七不思議~  作者: パパパパーン


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第一章 朝の音楽室と少女のカノン

毎朝が修学旅行当日の様に、ワクワクを抑えきれない私は日が昇るずっと前に目が覚めるの。

もう嬉しくて嬉しくて笑いを抑えるので必死なんだから。

音を立てない様にそぉーっと身支度をしてパパとママを起さない様に静かぁーに、静かぁーに


ゆぅぅぅーくり

そろぉぉぉーり

そろぉぉぉーり


と、玄関のドアを開けるの。

もう本当に嬉しさがこみ上げちゃって

ウフフフフ、ニタニタしている自分が分かるもん。

もう本当に嬉しいんだから。


 家を出た時のヒンッヤリとした空気が好きなんだ。

空はまだ真っ暗で星が夜空を彩っているけど、「彩ってる」とか凄い!私そんな言葉言えたんだ。

面白い私。

どれが何の星かなんて全然わからないけど、夜明けの空を見るだけでウキウキしてくる。

キャー、私って【詩人】みたい。【詩人】じゃなくて【私人】ですけど。

なんちゃってぇぇぇぇウフフフフ。


 家を出てちょっとだよ、ほんのちょっと歩いたら、静かな住宅街に薄っすらと日の光が差し込み始めるの。

もう本当に綺麗なんだから。

ほんとだよ。

緑に満ちた木々の葉がヒンヤリとした風に身をゆだねるてさやさやとたなびくのが素敵なんだ。

その中をテクテク歩くのがだーい好き。

嬉しすぎて嬉しすぎて、誰もいない街路樹を八の字に縫う様に歩く自分もだーい好き。

 

 ときどく聞こえる小鳥のさえずりは、私には「ホーホホッホホー」って聞こえるけど、皆にはどう聞こえてるんだろう?「ホーホケキョ?」それってホトトギスでしょ。

 違う違う「ホーホホッホホー」だって。私はね、小鳥のさえずりに合わせる様に歌いながら学校へ行くんだ。

 私、学校大好きなんだ。ほんと学校って天国だよね。学園天国だよ。


♪アユレディー!イェーイ!!(イェェェイ!!)♪

♪ヘーイヘイヘイヘーイヘイ!(ヘーイヘイヘイヘーイヘーイ)♪

♪へーイヘイヘイヘーイヘイ!(ヘーイヘイヘイヘーイヘーイ)♪

♪ヘイ!(ヘイ!)ヘイ!(ヘイ!)ヘイ!(ヘイ!)ヘイ!(ヘイ!)へ―ーーーイ!!!♪


 歌いながらお気に入りの白いワンピースを着て、涼しい朝の風に私の長い髪がゆらゆらゆれるの。

「おはようございます」ってすれ違うおじいちゃんやおばじゃんに挨拶を返しながらの学校までの道のりって本当に楽しいんだから。


 小学校の正門の前に来たらピタッと止まって。まずは深呼吸。

はい、吸ってぇー、はいてぇー。深呼吸ぅぅーー。

をちゃんと繰り返して、気持ちと体を落ち着かせるの。だって、このテンションで学校に入ったら私変な人だと思われるじゃない。

そんなのやーよ私。

人の視線で傷付くタイプなんだから私。

 

 正門をくぐったら、まっすぐに音楽室に向かうの。もうここからドキドキが止まらないんだから。きっとCMでやってる動機息切れって、この事を言うんだわ。

 だって音楽室に近づくだけでドキドキして息苦しくなるんだもん。ドキドキドキドキ私の胸が五月蠅いぐらいに鳴ってるのが分かるんだもん。

 きっと隣に居たら「うるさーい!!」って怒鳴られるわ。


 音楽室のドアの前まで来たら必ずやる事があるの。

 大したことじゃないの。イエスキリスト様にお祈りする様に両手を合わせて目を閉じてお祈りするだけ

 「今日も音楽室までこれてありがとう」

 ってね。ただそれだけなんだから。それから音楽室のドアを開けるんだ。

   

 この時間だと音楽室の中はまだ薄暗いんだ。

 窓の外には真夏の夜明け前の静かな空が広がっている。窓を開けるとサァーッと風が入ってカーテンがヒラヒラ揺れるのよ。

 思わず目をつぶって風に身を委ねると、とっても気持ちいんだから。

 それから冷たい空気をゆっくりと吸い込むの。この瞬間、まだ高鳴っていた胸の鼓動と音楽室の空気が一つになって私の心と溶けあうんだ。

 それでね、まるで私が音楽室の一つになったみたいになるの。不思議でしょ。でも本当なんだから、こんど絶対にやってみて。

 ほんとに本当なんだから。あー、疑ってるでしょう。もぉー、絶対嘘だと思ってるでしょう。じゃあ、今度私と一緒に行こう。

 ね、約束だよ。ウフフ、やったぁ。絶対に絶対だからね。嘘付いたら、針100万本飲ませるからね。アハハハハハ。

 

 それからね。ピアノを触りながらピアノの周りをクルリと1周回るのが私のお決まりなの。ピアノの漆黒の体が鏡の様に周囲の景色を映し出しているのを見るのが大好きなんだ。

 

 はい、ここまできたら次は・・・・。

 えへへ、なんだと思う?そうそう、音を立てない様に床と椅子を傷つけない様に大切に椅子を引くの。

 それから鍵盤の蓋をゆーっくりと開けて、赤い鍵盤カバーを綺麗に畳むの。

 そうするとね、じゃじゃーん!私の目の前に綺麗に磨かれた白と黒の鍵盤が目の前に現れの。鍵盤って綺麗だよね。私何時間でも見てられる気がする。え?ほんとほんと嘘じゃないってぇ。

 

 ポーンって、右手の人差し指で【シ】の鍵盤を一つ鳴らし音に身を委ねる。


 ポーンと鳴った【シ】の音が、音楽室の空気を震わせて、その震えがジーンって、私の胸の奥まで届いて、まるで心臓が音に包まれたみたいになるの。

 

 私【シ】が好きなんだ。だって【シ】は【幸せ】をって言うじゃない。

 【シ】を聞き終えたら、両手を鍵盤の上に添えるの。目を閉じ溢れ出る喜びを抑え込みながら、一音一音確かめる様に弾き始める。

 

 淡い朝日が窓から差し込んで、音楽室全体が黄金色に包まれる中、大好きがいっぱい詰まった音楽室で今日も私とピアノの時間が動き出す。

 私とピアノが奏でる曲は【カノン】私が大好きな曲。

 私の名前【輪唱カノン】と同じ名前の曲が大好きなの。

 

 何時間弾いていたんだろう。時間を忘れて弾いていると、突然音楽室の扉が大きな音をたてて開いた。


 私は、指を止め、身をかがめて身構えた。

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