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その後、デルサイ王国の村や町を魔族が襲撃することは、一旦なくなった。だが、放っておけば、またいずれ魔族の襲撃を受けることもあるだろう。今回、怪我の功名と言おうか、魔族と人間の交流の端緒を得た。デルサイ王国に入植した魔族の中には、魔族の土地に知人や知己の残っている者もいる。そういう者を通じて、魔族と人間の繋がりを太くし、同化して行けるといい。きっと、争いや悲劇が減るだろう。ちなみに、デルサイ王国に以前から住む魔族に依れば、魔族と人間は混血できるらしい。
イドリーらは、デルサイ王国とナール王国の協議で処遇が決まるまで、3ヶ月程デルサイ王国に留め置かれた。その間、魔族の使用人が世話をし、信用を勝ち得ていたようだが、使用人が魔族であることを明かしたのかは、拓真はまだ聞いていない。
拓真は、まだ当面は魔族の入植地で暮らすつもりだ。最近では、タレス村を通じてレイナード町でも魔族が受け入れられ始めている。魔族達には、日々のちょっとしたところで、魔術を用いて人を助けるよう促している。それが功を奏しているようだ。あまり目立つ事をやるよりも、日々の積み重ねが効くのでないかと、拓真は思っている。
とはいえ、魔族が広く受け入れられるためには、何か魔族と共存するメリットを示す必要があるだろう。産業の育成に取組みたい。何か、魔族特有の、国内の他地域と競合しない産業を興せないものか。魔族社会は、文化や芸術という点では、貧しいと言わざるを得ない。ならば、デザイン性を求めるものよりも、機能重視の方が良いかもしれない。
魔族と言えば、その特徴は何と言っても高い魔操力だ。それを利用して、この世界にはない道具を作るのはどうだろうか。例えば、調理器具。地球にあってこの世界にはない調理方法や調理器具がいくつか思い付く。他にも、武器、はあまり作りたくはないが。楽器や、建築資材なんかも、魔術なら細かな調整がし易くて良いかもしれない。
いずれは、魔族の入植地を離れ、ユミルの住む家に戻ろうと思う。親しくなった者達が老いて死んで行くところは、あまり見たくはない。かと言って、拓真自身はまだしばらく、老いるつもりもない。
ユミルの家に戻ったら、次は何をしようか。折角、この世界に招かれたのだ。どうせなら何か、この世界に住むヒトにとって良いものを、良いと信じられるものを残したい。科学や技術、魔術の発展が、必ずしもヒトにとって良いとは限らない。それは手段であり、それを用いて何をするかが問われる。拓真が、良いと信じられるもの。それはーー。
(まあ、俺は俺として生きるしかないんだ。好きなようにやるさ)
願わくは、その先に人々の、そして自身の、幸福な死が待っていますように。
これにて完結です。
ここまでお付き合い下さった方、ありがとうございました!




