第2話「漆黒の翼!!」
どちらかといや、娯楽性を重視したい性格です。
紫色の巨大メカ・・・人類にパープルマーズと名付けられたそれは、八本の触手をチタゾールに巻きついて百万アンペアの電気を流し込んでいた。
「東京タワーすらへし折る触手攻撃ってだけでもキツイのに電気まで!キツイわね!!」
「ほんとキツイ!普段のニケちゃんの態度並にキツイ!!!」
「それはごめん・・・」
「そこは素直に受け取らないで!?」
操縦レバーを手にしゅんとするニケの隣に座る朱璃が、十本の指を高速で動かして様々な色のボタンを正確な手順かつ迅速に押すと、チタゾールの全身がオレンジ色に発光、巻き付いている触手を全て焼き切った。
「よ〜し!喰らえ〜〜〜!!」
朱璃が特大サイズのボタンを押すとチタゾールは口を開き、超高熱火炎を吐いて敵を焼き尽くした。
「最初に襲撃してきたシルバーアンノウンと、ブラウンチェーン、エメラルドピッグ、ピンクジェノサイダーにホワイトアウトに、今倒したパープル・マーズでもう既に六体撃破〜どいつもこいつも余裕!」
未知の巨大兵器に学校が襲撃されてから二ヶ月の間に、五体もの巨大兵器が世界各地に現れ破壊と殺戮を繰り返していた。
秘密裏に組織されていた防衛軍も、世界各国の軍隊と協力してそこそこ善戦するも、侵略ロボットたちは強力で勝つことはできず・・・そこへチタゾールが現れ人類逆転勝利!がここ最近のお約束である。
「子供向けアニメや特撮みたいに毎週現れないだけマシだとは言え、結構キツイわね〜」
「メンテや修繕の頻度が増えて大変だ〜!!!」
「しっ!人に聞こえるでしょ!!」
ニケは慌てて朱璃の口に人差し指をあてる、軍事利用等されないように自分たちがチタゾールの生みの親である事は秘密なのだ。
特に今歩いているのは日曜日の商店街なので通行人は多く、気の強さは気の弱さの裏返しを地で行くニケちゃんは焦らずにいられない。
「おやおや、お二人さん痴話喧嘩〜?」
朱璃とニケが相変わらずイチャイチャしていると、化粧品が溢れ出そうな買い物袋を腕にぶら下げた黒ギャルの黒夢が話しかけてきた。
「誰がふうふよ!!さっさとなりたいけど!!!」
「黒夢ちゃん!君も買い物来てたんだ」
「ぎゃははは!マジウケるんですけど!隠さなくていいっての!と〜っくに、バレてっから!おたくらでしょ、あの恐竜みたいなロボットで正義のヒーローやってるの!!」
わざとらしく大声で笑う黒夢...そんな彼女より、その発言内容を聞いて通りすがった大衆がどよめいた。
「はあ!?なにを言ってるの!!」
「ウチさあ、聞いちゃったんだよね〜アイツの口から目的ってやつを」
「黒夢ちゃん、妄想で語るのは・・・」
「我々は地球人に侵略されちゃったから、それを防ぐために今のうちに倒しておかないと、的な!それをあんたらは無線かなんかでたまたま傍受して、念の為にアレを作った、とかそこらでしょ」
わざわざ黒夢は更に声のボリュームをあげ、笑い混じりに語る。馬鹿馬鹿しいと冷笑し場を離れてゆく者より、これは本当か?と不安を抱き場に止まる人間の方が多い。
「はあ?証拠なんて無いでしょう!?」
「動揺しすぎ!わっかりやす〜!!あいつらの言うことが真実だって証拠はないけど、本当に会ったって証拠なら、いまに見せてやんよ〜〜〜ッ!!!」
「なっ!?」
轟音が鳴り響き、黒夢以外の、今この場にいる人間以外は立っていられないほど地面が大きく揺れ始める。
「これが未来の侵略者様から見た侵略者様にいただいたすっごい力〜〜〜!私の愛機〜〜〜!ネーロ・アーラちゃんっ〜〜〜!いえ〜い!!」
やがて地面が割れ、その中から、七枚の翼が背中に装備された漆黒の機体が姿を現した。
「マジ天使っしょ〜!」
今の話は本当だったのか!と悲鳴をあげながら、揺れが収まって自由に動けるようになった民衆は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「天使が地面から現れたらもう堕天使じゃ!!」
「言ってる場合か!こうなったらバレても仕方ないわ、私たちも呼ぶわよ!!」
「もう呼んでる!」
「ナイスぅ!!」
朱璃が事態を予見し、密かに通信機により信号を発していたのもあって、ちょうどいま、青く澄み渡る空からチタゾールは町中に降り立つ。
「一度きりの人生、暴れなきゃ損っしょ〜〜〜!!」
「その一度きりの皆の人生を、わたしたちは守らなきゃいけない!」
「だから、私たちは負けるわけにいかないわ!!」
各々が自分の愛機に搭乗!夕陽が沈みゆく町、チタゾールとネーロ・アーラは対峙、夕陽に染まる水面にも映し出される両者は、ほぼ同時に駆け出した!!
「なっ!!」
チタゾールは頭突きを繰り出すが、ネーロ・アーラはそれを片手で受け止め・・・るどころか、鷲掴みにし、そのまま翼を羽ばたかせて空高くへ舞上がる。
「なんてパワーなんだ!」
「怪力にも程があるわ、五万トンあるのよ、これ!?」
朱璃とニケはジタバタ藻掻いてみたり、オレンジ発熱光で敵の腕を焼き切ろうと試みるも、敵は全く動じない。
「なんて耐久力なんだ!」
「無駄な足掻き乙〜!ま、くたばってくださいな〜っと!!」
高度二千メートルの高さまで来て、ネーロ・アーラはチタゾールを地上目掛けて投げ飛ばした!
「落ちるかああああっ!!」
「この子が飛んできたのを忘れたのかしらね鳥頭!!」
激しい重力に体が悲鳴をあげるも、朱璃はレバーをギリギリ限界まで下に引いて、更にそこから右へ!そして真上へ!精いっぱい動かして、チタゾールは体勢を立て直す事に成功、足裏からジェット噴射して空中戦に臨む。
「ふい〜疲れた〜!」
「お疲れ!帰ったら手作り料理を山ほど振る舞うわ!」
「わ〜い!ニケちゃんの料理めちゃくちゃ美味いからなあ!」
「結婚したら毎日作ってあげられ...なんて、今はそんなこと言ってる場合じゃないわね!!」
ニケが目にも止まらぬ速さで大小さまざまなボタンを二回ずつ押すと、チタゾールの胸がスライドして発射口が現れ、そこからガトリングガンと紫色のビームが同時に発射された。
「おっそ〜い!そんなノロマな武装で私に追いつけるなどとは思い上がるなよ!!的な〜!?あはは!!」
大口を叩くだけあってネーロ・アーラは、軽々と、縦横無尽に、重力など存在しないに等しい華麗な動きで、ビームもガトリングガンも更に放たれたロケット弾もすべて避けながらチタゾールに迫る。
「あんた、目に見える物だけしか見てないのね!!」
「はっ――――!?」
突如として、ネーロ・アーラの背中が爆発!翼が千切れとんでゆく。
「なんで〜〜〜〜?これ中古だったん!整備不足なの渡された感じ!?ありえね〜〜〜!!」
翼を失い落下した漆黒の天使は海に叩きつけられて、冷たく広い地獄に沈んでいった。
「レーダーにも捕捉されない、ステルスミサイル!」
「バレなかったね!」
苦戦したのもあり、朱璃とニケは満面の笑みで勝利を祝してハイタッチ。こうして難敵を撃破した二人は、かつてないほど強大な影が迫っている事を知る由はなかった。
ロケットアニメ勉強してから書く必要が・・・って期限8月31日!?てなわけで鳥急ぎ、いや取り急ぎ