村の探索と感動の再会
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洞窟の前でフィッシュマンたちを倒した後、俺たちは村の中と周辺を調べることにした。
残党が残っていないかしっかりと安全を確かめて、それから洞窟の中の婆さんや村人に伝えることになった。
まずは村の中を調べた。
俺が先頭を歩き、ジレとキクムさんが続く。
「ほとんど荒らされていないな」
最後尾を歩いているキクムさんが不思議そうにつぶやいた。
「そうですね」
襲撃を受けたにしては、家屋なんかにほとんど被害が無い。
ジレは物陰からフィッシュマンが出てこないかとびくびくしているようだ。
「火もかけられていないし、家の中を物色した形跡もない。備蓄の食糧にも手をつけていないな」
キクムさんが食料庫の中を確認して驚いている。
たしかに襲撃を受けた村には見えない。
人がいないだけで、なにかを壊されたりした形跡が無いからだ。
キクムさんの家に着いた。
ここも荒らされた形跡は無い。
族長の家であり、それなりのお金も保管してあったが、それも手付かずだった。
「食料も金も手付かずだ。なんのための襲撃なんだ? ムイチ、どう思う?」
「わかりませんね」
あの攻撃的で知性を感じさせない、荒々しく暴力的なフィッシュマンたちが通ったにしては、破壊されたものが無さ過ぎる。
襲撃の意図がわからない。
「俺らを食べるつもりだったんじゃないか?」
ジレが口を開いた。
「あ、それはたしかにありえる」
フィッシュマンたちがなまじ人の形をしていたために、人の戦争や襲撃の観点で考えていたから考えが及ばなかった。
しかし、たしかに人を食うことが目的だったとしたら、村の食料やお金などに手がつけられていないことにも納得がいくのだ。
あの発達した顎や歯は、肉食だと考えられるし、人を食料として襲撃してきたのなら村に手をつけないで洞窟まで追ってきていたのも辻褄が合う。
「そうかもしれないな」
あらためてそう言うと、ジレが青い顔をして身震いをした。
念入りに見回ったが、村の中にはフィッシュマンはいなかった。
西のヤギを放牧しているところを確認したが、ここも被害は無かった。
東の川のあたりにもフィッシュマンが通った形跡は無かった。
南の海から来て村を通り、そのまま北の洞窟に向かったということか。
やはり、人を食うのが目的だったのかもしれない。
「畑のほうに行ってみよう」
南の畑は、俺が指導して荒れ地を耕した場所だ。
畑を作ってすぐにサルタヒコ元帥たちがやってきて俺は連れて行かれたので、その後はどうなっているのか知らない。
ここまで調べてきて食料に手がつけられていないことを考えると、畑が荒らされていない可能性は高い。
無事に作物は育っているのだろうか、ワクワクしながら畑に向かった。
畑に近づくと人影が見えた。
6人いるのが見える。
「誰かいるぞ?」
ダッシュで畑に着くと、そこには見知った顔があった。
「ムイチさん!?」
ミナの家臣団の人たちだ。
そういえば名前も知らないや。
「姫は!? 姫様はどうなされたんです?」
リーダーが激しく詰め寄ってきた。
「無事だよ。無事だから落ち着いて」
聞くと、フィッシュマンの襲撃の知らせが届いてすぐに、家臣団の人たちは畑を守るためにここに来たのだそうだ。
しかし、フィッシュマンは畑をスルーして、そのまま村に向かったらしい。
「なぜ畑に?」
「姫様といっしょに耕した畑ですからね。姫様が戻られるまでしっかり守らないといけませんから」
家臣団の忠誠すげえ。
たしかに畑はしっかりと手入れされていて、芋のつるや野菜の葉が綺麗に並んでいて、収穫の時を待ちわびている様子だ。
これはいい畑です。
なんだかとてもうれしくなった。
「ところで姫は?」
また、激しく詰め寄られる。
忠誠が高い人たちって暑苦しいよなw
すると、港町アマから続く街道に、いくつかの人影が見えた。
俺たちに気づいたようで、走る速度を上げて駆け寄ってきた。
うお、猛烈な速度だ。
「師匠!」
やっぱりミナだった。
後ろからスセリとヤカミ、ルウが続いている。
「姫様!?」
リーダーが駆け寄ってミナに抱きつこうとして、ミナの右クロスカウンターで豪快に沈められた。
容赦ないのねミナ・・・。
家臣団の人たちが再会の感動で泣いている。
「姫様ぁ、よくぞご無事で」
大の大人がぼろぼろと泣いているが、その心情はわかる。
やべえ、ちょっともらい泣きしてしまった。
「オオナムチさん、その方たちは? 襲撃はどうなったのです?」
スセリがやってきた。
「この人たちはミナの家臣団だよ。襲撃してきたフィッシュマンは殲滅して、今は村と周辺の安全を確認しているところだ」
「な、ス、スセリ姫様!?」
起き上がってきたリーダーが、スセリの顔を見て叫んだ。
「そうですが、なんでしょうか?」
スセリが首をかしげながら答えた。
こういう仕草がいちいちかわいいのは反則だと思います。
「で、ヤカミ姫ぇ!?」
続いてやってきたヤカミの顔を見て、驚きで背筋をビッと伸ばしている。
「イナバ国のヤカミ姫でございます」
ヤカミがうやうやしく上品に礼をした。
美人ってこういうのが様になりすぎて卑怯だ。
ヤカミは傾国どころか富国の美姫だ。
その美貌に男達が狂い国が傾くというのが傾国の美女だが、ヤカミの場合はその美貌を求めて訪れる男達で国が倍以上に大きくなった。
国を富ませる美しさなのだ。
ヤカミの仕草には、うっとりさせる力がありすぎだろうよおい。
スセリが姫様で、ヤカミが姫と呼び捨てなのは、リーダー達がイズモ国だからなのだろう。
ヤカミはイナバ国の姫だもんな。
「スセリ姫にヤカミ姫? なんだこれは?」
キクムさんも面食らっている。
ジレはスセリとヤカミの美しさに、顔を赤くしてぼーっとしているようだ。
「まあ、話せば長くなりますし、洞窟の人たちも含めてみんなで話しましょう」
「そうか、早くみんなを出してやらないとな。ムイチ、扉を壊しに行ってくれるか? それからみんなを集会所に連れてきてくれ」
「わかりました」
「俺たちは集会所で準備しておく」
「スセリ、後は頼むぞ」
「はい」
俺は洞窟に向かって走り出した。
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