焼魚ってとてもおいしいよね
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俺がこの世界に来て最初に訪れた村、そこが魔物に襲われているという。
ルウの故郷でもあるし、次に行こうと思っていた場所だ。
ここからは半日の距離だ。
そして、危機を知らせる使者がここに来ているということは、魔物が襲ってきたのは少なくとも半日以上前だということになる。
俺の移動は速いが、それでも足りない。
どうする?
なにができる?
「スセリ、後はまかせた」
「え? どうなさるのですか?」
「先に行く」
俺は両手を前に突き出した。
俺は村に意識を集中して、そこに空間をつなげるようにイメージして魔力を高める。
ゲートとか転移ってやつだ。
いつか試してみようと思っていたが、やるなら今だろう。
「この魔力は!?」
高まった魔力が、俺から威圧の形で吹き出されている。
アマ国王たちが怯えている。
「なにが起こるのですか?」
突き出した俺の両手の前に、小さな黒い穴が出現した。
この穴を広げて村につなげるのだ。
この世界には生命力と魔力というステータスが存在する。
俺はそれをステータスの表示で確認することができた。
そして、婆さんから魔法を習ったときに確信したのは、この世界の魔法というのはイメージを魔力で具現化しているだけだってことだ。
強いイメージを持ち、そこに魔力を込めれば実現できてしまう。
それが魔法の正体だ。
たとえば婆さんは五行の理の術を使うが、スセリはまた別の術を使う。
系統がたくさんあるのは、もともと定まった形が無いということなのだ。
ただ、人におしえるには形に定める必要があるから、魔力が高くてイメージ力の強い者が術者となって、その術を広めたりしているのだろう。
俺は現代日本の厨二だ。
現代日本はイメージの宝庫だ。
アニメ、ゲーム、映画、漫画、ラノベ、ありとあらゆるファンタジーが溢れている。
魔法や術式の効果や概念、視覚イメージまで、オタクの俺は膨大に知っているのだ。
その知識の中で、いつかやってみようと思っていたのが転移ゲートだ。
遠い場所に一瞬で移動できるというのは、ロマンであり実益も高い。
今まさに俺は、その転移ゲートをやろうとしているのだ。
村をイメージする。
どこへ飛ぶか指定するのだ。
頭の中に村の光景が流れる。
次第に場所が定まっていき、ピントが合うようにクリアになっていく。
もう少しだ。もう少し。
「キタ!」
カチリと何かがはまるように固定されたのは、婆さんがいる洞窟だった。
その瞬間、黒い穴が人が通れるくらいのサイズに拡がり、薄暗い地面が見えた。
「後から来い!」
スセリやヤカミが驚いている。
俺が穴に飛び込むと、一瞬だけ違和感があって薄暗い洞窟に着いた。
家の庭から飛ばされたとき、女神ツクヨミにこの世界に飛ばされたときの感覚だ。
「よし!」
転移ゲート成功だ。
穴は一瞬で閉じた。
はじめてだし、一人で試してみたのだが、いずれは他の人が通れるのか試してみる必要があるな。
「ムイチさん!?」
声がするほうを向くと、部屋には村人達が大勢集まっていた。
声をかけてきたのはキクムさんの奥さんだ。
突然に現れた俺に驚いている。
「おひさしぶりです。なにがあったんですか?」
「海から魔物があらわれて海岸で漁をしていた男達が襲われました。知らせを聞いてすぐに村人はこの洞窟に避難したのですが、魔物は村を襲いました。今は夫や婆様が入り口で防いでいます」
「わかった。俺も行くよ」
怯えている子供たちに、だいじょうぶだと手を振って、俺は洞窟の入り口に向かった。
入り口に着くと、キクムさんたちが入り口の扉を板や丸太で補強して、魔物の侵入を防いでいるところだった。
男達が四人と婆さんだ。
ジレの姿も見える。
外からは、叩きつけるような音や、うなり声のようなものが聞こえる。
地鳴りもしているし、かなりの大軍のようだ。
みんな必死な顔だ。
「キクムさん!」
俺が声をかけると、キクムさんが振り向いた。
「ムイチ!?」
懐かしい再会だが、なごんでいる暇は無い。
「なぜじゃ? なぜここにいる?」
婆さんが驚いている。
「話は後です。今の状況をおしえてください」
「海から魚人間が攻めてきた。村人は全員ここに避難していて、ここで持ちこたえている状態だ」
「魚人間?」
「なんだかわからん。魚の顔をしていて全身に鱗がある人間だ。言葉は通じないが知能はあるようで、槍とかこん棒を使っていた。100匹くらいいるようだが、増えているかもしれん」
海から魚人間が攻めてきた?
魔物は一匹ではなくて、かなりの大軍のようだ。
しかし、魚人間ってなんなんだ?
「今までにこういうことは?」
「ない。わしですら見たことが無いし、言い伝えにもない」
婆さんですら知らないのか。
本格的にわからないな。
扉への攻撃は激しさを増している。
俺は土魔法で扉を補強した。
1メートルの固めた土で補強したので、外からの音もあまり聞こえなくなった。
「これで大丈夫だと思いますよ」
「ふう、すまない。もう持ちこたえられないと思っていたところだ。助かった」
キクムさんが額の汗をぬぐった。
「どうやってここに来たのじゃ?」
婆さんがあやしむように俺を見る。
まあ、突然に現れればそれはもう不審だろう。
「転移ゲートでアマ国王城から飛んできました」
「転移ゲート?」
「別の場所と空間をつなげて、そこへ一瞬で行くことができる魔法です」
「なんじゃと? そのような術は聞いたことがないわい」
「まあ、俺もはじめて使いましたからね。成功してよかったですよ」
「なんじゃそれは・・・」
婆さんは不可解そうな顔でぶつぶつ言っている。
俺はキクムさんとジレに、そこらの板を置いてテーブルを作ってもらって、万宝袋から熱いお茶を出した。
「まあ、一服しましょう」
茶碗に注いでいく。
この茶碗は土魔法と火魔法の練習に作っておいたものだ。
「ああ、すまんな」
キクムさんは茶を飲むと、いくらからリラックスできたようだ。
「どうします?」
「いかんな。もう一晩ここに詰めているのだが、ここには食料が無い。このままだと衰弱で死人も出るだろう。退却を待つのは得策ではないな。体力があるうちに討って出る必要がある」
「そうでしょうね」
キクムさんはさすが族長だけあって、的確な判断だ。
しかし、浮かない顔をしている。
「どうしたんです?」
「いや、敵は多いからな。村には戦えるものがおらんのだ」
「魚人間ってどんな感じなんです?」
「背は子供くらいで頭が魚だな。見た目のサイズからは想像できないくらいに力が強い。動きも素早いな」
うーん、よくわからない。
まあ、見てみよう。
「ちょっと見てみます」
俺は土魔法で固めた扉に魔法で小さな覗き穴を開けた。
「なんだこれ!?」
視覚強化で見てみると、外にはうじゃうじゃと魚人間がいた。
まさに魚人間。
半魚人ってやつか。
青魚が人間になったみたいな感じだ。
テラテラと光る鱗、黒くて無機質な目玉。
口からは鋭い歯がたくさんのぞいているから、肉食系なのだろうか?
槍なんかの武器を持っている。
この意味不明な生物、まあひさびさにステータスを鑑定してみよう。
LV22 フィッシュマン
HP 240/210
MP 46/46
微妙・・・。
フィッシュマンって魚人ってことか。
そのまんまじゃねーか!
わかったようなわからないような、とても微妙な感じだ。
ワ国兵士の半分くらいの強さだな。
はっきり言って雑魚だが、この村の戦士のHPは10とかだから、村人から見たら恐ろしい敵だろう。
「キクムさん、俺やりましょうか?」
この程度の敵なら100だろうが1000だろうが余裕だ。
最近ずっと船造りでおとなしくしてたから、ひとつ暴れてやるとするか。
「ならば俺も行く。ムイチだけを危険な目にあわせるわけにはいかん」
この程度なら危険なんてないんだけどな。
しかし、キクムさんは族長としての立場もあるのだろう。
どうしても行くと聞かなかった。
「じゃあ俺たちが出たら外から扉はふさぎます。敵を一掃したら扉を開けますよ。そんなに時間はかからないと思います」
俺は万宝袋から天地理矛と生太刀を取り出した。
「なんじゃそれは・・・!?」
神級武具の威容に、婆さんも目を見張っている。
扉の前に立つ。
「キクムさんいいですか?」
「いつでもいい」
「ムイチ、がんばってくれ!」
ジレが声援を飛ばしてきた。
「よし、行きましょう」
俺は土魔法を解除して、扉を外側に開き、火魔法で扉の前にいたフィッシュマンたちを焼き飛ばした。
「出ます!」
そして、期待のまなざしで俺を見送ろうとするジレの腕を掴んで、キクムさんとともに扉の外に出た。
素早く扉を閉めて外から土魔法で封じる。
むお、焼魚くせえ!w
おや、100どころじゃなかったか。
視界いっぱいのフィッシュマンが俺たちに殺到してきた。
「え? え?」
ジレが目を白黒させている。
留守番のつもりだったのだろう。
茶目っ気で連れて出てしまった。
「さて、ショータイムだぜ!」
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