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罠の森は誰のため?

「火魔法?」


「わからねえ、まずは走れ!」


 殺気も感じられない遠距離からの攻撃。

 これは相当な手練(てだ)れだろうし、機動力を削がれる森の中ではかなり厄介だ。


 ムル教官の先導で、森の中の道なき道を疾走(しっそう)する。

 常人では考えられない速度だが、ミナはもちろんスセリも問題なくついてきている。


「どうやらまいたようだな」


 5分ほど走った。

 そして、速度を落とす。

 相当な距離を移動しただろう。

 森はまだまだ続くようだ。


「何者なのでしょうか?」


 スセリは息も切らせていない。

 お姫様っていうと、なんかこうかよわいイメージがあるが、スセリについてはなんの心配もない。

 むしろ、頼もしいくらいだ。


「わからんな。ムイチにタケミナカタ、スセリ姫様にこの俺だ。全員がそれなりに名が通ってる。つまり、誰が狙われてもおかしくないってことだ」


 ムルさんが緊迫感(きんぱくかん)(かも)し出しているが、手にはおにぎりを持っている。

 そして、おもむろにおにぎりを食べはじめた。


 自分で出した緊迫感(きんぱくかん)を自分でぶち壊す、ある意味これも自作自演といえるのだろうか。


「誰が誰に狙われてるかもわからない森の中か。本当に厄介だな」


 ムル教官は警戒しながら歩みを速めた。


「止まれ!」


 ムル教官の声に慌てて足を止めると、巧妙に隠された落とし穴があった。


「動物や魔獣向けの罠じゃないな」


 2メートルほどの穴の底に、先を(とが)らせた金属の杭がいくつも仕掛けてある。

 穴に落ちてしまえば鎧をつけていたとしても無傷ではすまないだろう。


 動物や魔獣相手ならば、木の杭などで十分だろうから、金属の杭は鎧などの防具をつけた人間を(ほふ)るためだと考えられる。

 つまり、かなりの確率で俺たちを狙ったものだ。


「この落とし穴は新しいな。しかも、専門家の俺ですら近づくまで感知できなかった。この森とこの敵、どうなってやがる」


 ムル教官が舌打ちをしている。


 道なき森の中に、こんな落とし穴を設置する。

 それだけでもかなりの重労働だ。

 そして、俺たちが通る道をどう予測したのか、もしくは偶然なのか?


 果たして俺たちを狙ったものなのか、それともそうではないのか?


 現時点ではわからないことがあまりに多い。


 わかっていることは、さきほど襲撃を受けたことと、今こうして落とし穴に落ちかけたってことだ。


 速度を上げたいところだが、罠を考えると慎重に進む必要があるだろう。


「あれも罠だな」


 ムル教官が指差したところには、草を結んで足を引っ掛けるようになっていた。


「地味だが不意をつかれると引っかかる。そして、それに合わせて別の罠を連動させてあるようだ」


 俺たちは慎重に進んだ。


 罠はいくつもあって三度ほど引っかかりそうになった。


 そうして30分、俺たちはやっと森を抜けた。


「やばかったな」


 ムル教官が泥のついた手をズボンでぬぐっている。


「落とし穴の手前で上から丸太が落ちてくるやつ、あれはミナが気づいてくれなければホントやばかったですよ」


「あい」


「浄化しますね」


 スセリが浄化魔法をかけてくれた。


「ありがとう」


「いえ、しかし、本当に罠が多かったですね」


 スセリが不思議そうな顔をしている。


「そうだな」


 実際、見つけただけでも、相当な数の罠が仕掛けられていた。

 ムル教官に聞いてみたが、こんなことははじめてなのだそうだ。


「橋ですね」


 森を抜けると切り立った崖に出た。

 崖の底には川が流れていて、対岸の崖まで100メートルほどの橋がかかっている。

 崖から下の川までの高さは20メートルくらいあるのだろうか。

 ゴウゴウと水の流れる音がするし、かなりの水量で流れも速い。

 崖も思ったより高いし、落ちたら無事ではすまないだろう。


「吊り橋か」


 崖の端に大きな柱が二本立っていて、対岸の柱とロープで繋がれている。

 それで木の板を並べた橋を吊っているわけだ。

 かなり揺れそうだし、はっきりいって怖いな。


「うーん」


 吊り橋の手前でムル教官が考え込んでいる。


「どうしたんですか?」


「追っ手が先に橋を渡ってるみたいだな」


 ムル教官が言うには、それらしい足跡があるのだそうだ。

 専門家ではない俺にはちょっとわからなかった。


「それに見ろ。対岸で待ち構えてやがる」


 ムル教官が目配(めくば)せしたほうを見ると、なるほどたしかに刺客が隠れているようだ。


「20人程度だがどうする? 迂回(うかい)するか?」


「いえ、正面から突破しましょう。追われたままでは気持ちが悪いですから」


 居場所が察知できない森の中ならいざ知らず、橋の向こう側は平地だ。

 おそらく地面を掘り下げるかなにかして、陣地を作って隠れているのだろうが、20人程度では脅威には感じない。

 なにせ、俺はチートで反則的に強いのだ。

 いたずらに策を(ろう)するより正面から当たったほうが強い。


「渡っているときに橋を落とされるのが一番厄介だ。タケミナカタは俺とムイチが渡るまでここを守ってくれるか?」


 ミナが俺のほうを見た。


「ミナ頼む」


「あい」


「スセリも俺たちが渡りきるまでミナと一緒にいてくれ」


「わかりました。御武運(ごぶうん)を!」


 スセリは俺たちに補助魔法をかけてくれた。


「俺が先行して罠があれば解除する。ムイチは敵を頼む」


「わかりました」


 細い吊り橋、高いところはあまり得意じゃないんだが・・・

 さて、まあがんばってみるか。


「いくぞ!」


 ムル教官と俺は、狭い吊り橋に足を踏み出した。

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