ムカデ砦の攻防
俺たちは静かに、そして素早く谷へ駆け下りた。
「俺が引きつける! スセリ、補助を頼む! ハッチとミナは遊撃だ!」
「生命力強化!」
スセリの補助魔法で俺のHP最大値が1.5倍に上昇する。
防御力と素早さアップの魔法ももらった。
ムカデが固まっているところの真ん中に突っ込み、天地理槍を水平に構えて、振り回しながら俺もコマのように回転する。
「回転斬り(フューリー)!」
死魔が分断され、鎧の破片が飛び散る。
スセリは俺の斜め後ろでしゃがんでいる。
守りやすいよい位置取りだ。
「どんどん来るぞ!」
俺の突入に気づいたムカデたちが集まってきた。
大小合わせて46体、叡智と精神の祝福による認識力と集中力アップの効果で、一瞬で数が把握できた。
砦を造営してるんだな。
石垣や木で組んだ階段が見える。
「階段を目指すぞ!」
「あい!」
ミナが大剣の一振りで、三体を斬り飛ばした。
「うあきゃっ!退魔封印殲滅斬り!」
ハッチは奇声をあげながら飛び回り、両手の神剣でムカデを細切れにしている。
なんか派手な技名を叫んでいるが、きっと雰囲気で言ってるだけの力まかせの攻撃だ。
突入からわずか13秒で46体のムカデを倒した。
階段の下に着くと、上からムカデが飛び降りてきた。
「そい!」
天地理槍を突き上げる。
4体のムカデを串刺しにして、槍を振り飛ばして左の岩に叩きつけた。
「上行くぞ!」
勢いをつけて階段を駆け上がり、第二層に飛び出した。
ムカデたちの視線が、俺に集中する。
さっきより多いな。
「ハッチとミナは左を!」
俺は右側の50体に右手を向けて、火魔法をぶっ放す。
「業火灼熱地獄」
右手の平から青白い炎が噴出して、ムカデたちを焼き尽くす。
「ノってきましたってか!」
ハッチとミナのまわりは数え切れないほどのムカデの残骸の山だ。
奥に階段が見える。
砦ってことは、上にボスがいる感じか?
スセリの回復と補助があるから、ハッチもミナも攻撃に特化した立ち回りだ。
大勢の軍隊で攻めるような砦を、俺たちは四人で圧倒的な速度で攻略していく。
「上だ!」
上の階層から岩が落ちてきた。
ムカデたちが落としてきているようだ。
「破壊破壊破壊破壊!」
ハッチが嬉々として岩を破壊している。
ムカデは死魔であり知能はないかと思ったのだが、どうも生前の戦の記憶がいくらかはあるらしい。
まあ、砦を造営するくらいだから、それなりの知能はあるのか。
落ちてくる岩を破壊しながら階段を駆け上がって第三層に辿り着いた。
ムカデの数は30体くらいだが、さっきまでより鎧が上質な感じだし、身体も大きくて強そうなやつらが群れている。
「気をつけろよ!」
「あい!」
ミナが大剣で斬りかかる。
振り下ろして三体をまっぷたつにして、斬りかえしてさらに四体を両断した。
「弓兵か!?」
奥から矢が飛んでくるが、そんなもの問題にならない。
ムカデたちを斬りまくり、弓兵を斬り飛ばすと、その後ろにひときわでかいのがいた。
指揮官級ってところか?
3メートル近いでかさで、両手持ちの大きな斧を振りかぶっている。
「ボボォーボォー!」
振りかぶった斧が俺たちに迫る。
冑の下の目を赤く光らせて、こいつはたいした迫力だぜ。
「避けろ!」
「あい!」
俺たちが左右に飛びのくと、振り下ろされた斧が地面に巨大な穴を開けた。
轟音に地面が震え、土煙がもうもうとたちこめる。
「うお! すげえ威力!」
まあ、迫力はすごいが、この速度では俺たちには当たらない。
「行くぞ!」
指揮官級が斧を振りかぶるところに踏み込み、ハッチが右腕をミナが左腕を切り落とした。
「っそい!」
十文字の刃が首を飛ばすと、指揮官級は地響きを立ててうつぶせに倒れた。
奥の階段を駆け上がると、第四層は石畳になっていた。
山の斜面に木で囲いが作ってあって、その前に門番っぽいムカデが二体立っている。
ミナとハッチがすかさず飛びかかって倒す。
門番はこちらに気づいて一歩踏み出そうとしたところで、まっぷたつになっていた。
「はぁはぁ、ちょっと休憩」
万宝袋からコップと水を出してみんなに配る。
「この先はボスっぽいよな?」
木の囲いの先の通路は、結構奥まで続いているようだ。
さてと、ボス攻略といきますか!




