思い知れ日本のチカラ
「ふう、外の空気はいい」
洞窟から出ると山のふもとだった。
これはどのあたりなんだろうな。
「この川沿いの道が歩きやすいのですが、八十神たちに会わないように山中を抜けていきましょう」
「パフェは? 俺様のパフェは!?」
スセリの提案に、ハッチは不服そうだ。
結局、パフェを食べさせるまで着いてくるということで、なぜかスサノオ大王のいる根の国行きに同行することになった。
ハッチの戦闘力は魅力だが、それ以上に厄介ごとを引き寄せる力を持っているのが不安なところだ。
動きが読めないしコントロール不能でもある。
暇になったらミナと斬り合いをはじめる可能性もあるしな。
って、言ってるそばからミナを挑発しているし・・・
「ハッチはなんでそんなに戦うのが好きなんだよ?」
「ハァ? 決まってんだろ。戦いこそロマン! そしてマイウェイ的ななにかだ!」
自信満々にドヤ顔で言ってるが、さっぱり意味がわからん。
マイウェイ的ななにかって、そのなにかの部分を聞いてるわけだしな。
「強くなりたいのか?」
「それは基本的ななにかだな。まあ、殺さなきゃならないやついるしな」
なんか、ぶっそうなこと言ってるし、ここはもうつっこむのはやめよう。
厄介ごとの匂いしかしない。
「ところでどこに向かってんのマイウェイ?」
マイウェイは自分で決めろよとつっこみそうになったが、つっこんだら負けな気がしたのでグッとこらえた。
俺たちがどこに向かっているのか聞いているのだろう。
「根の国に向かってるのさ」
「あん? それなら近道知ってるぜブーン! ここいらは俺様の庭みたいなもんだからな」
うそくさい・・・
しかし、真っ向から否定するのもアレだ。
ここはスセリにまかせてみよう。
「スセリ、俺はこのあたりの地理や根の国の場所について知らない。ハッチの話を聞いて、ルートを決めてくれないか」
「それでは、ここで野営にしましょう。わたしは地理には詳しくないのです。食事をしながら夜のうちにルートを決めて、明日の朝早くから根の国を目指すのがよいのではないでしょうか」
さすがスセリ、かしこいぜ!
このまま根の国に向かっても、到着が深夜か早朝になるだろうし、そもそも夜の森は危険だしな。
自分の苦手なことやダメなところを、隠さずにまっすぐ出せるところもポイントが高い。
大王の娘なわけだし、やっぱ育ちがいいんだろうな。
俺なんて育ちが最悪な自信がある。
なにせ幼い頃からジジイに、敵をあざむく方法や、虚をつく方法、戦略だの戦術だの策略だのを叩き込まれてきたから、ものすごく立派に歪んでるんだぜ!
俺がスセリの聡明さに感動して、うるうると見つめていると、スセリはなんでしょうという感じで小さく首をかしげた。
くぅ、かわいいぜ!
俺が野営用の家作りをすることになり、ミナとハッチには、魚か鳥がいたら捕ってきてくれと頼んだ。
スセリは戦闘が得意ではないし、待機してもらうことにした。
俺が守るのだ。
家は土魔法でさっくりと作った。
男子用と女子用のふたつだ。
ハッチと一緒ってのがアレだが、この際しかたないだろう。
スセリが俺とハッチの関係についてあやしんでいたが、絶対にそんなことはないと否定しまくった。
「山鳥ゲットだぜ!」
「あい」
ハッチとミナが山鳥を捕ってきた。
スセリとハッチには、明日のルートについて検討してもらうことにして、俺とミナが料理をすることした。
まあ、ミナは調理補助って感じだけどね。
たぶん、料理とかしたことないだろうし。
聞いてみたら、家臣団の人たちがしてたから料理はできないとのことだった。
期待を裏切らないなミナ。
「さてと・・・」
俺は万宝袋から食材と調理器具、そして割烹着を取り出した。
頭に三角巾を巻いて、戦闘準備完了だ。
山鳥はからあげにすることにした。
実はアマで油と鍋を仕入れていて、そのうちやってみようと思っていたのだ。
なかなか機会がなかったけど、今夜は四人だし、ちょっと手間隙かけて豪華なディナーとしゃれ込みたい。
からあげは豪華じゃないという人がいるかもしれないが、この世界ではおそらく存在していない。
イナバ国でのパーティーの厨房でも、焼くか煮る料理ばかりだったしな。
そういえば俺を誘ってくれた料理長はどうしてるかな。
むしろ、ヤカミはどうしてるだろう?
いや、今は考えるのをやめよう。
スセリとヤカミがどうなるかを考えると、ちょっと頭が痛い問題だ。
問題は先送りするのが俺の流儀!
小さな問題は大きく育ててから解決だ!
おそらく間違っているが、今はからあげに集中しよう。
「ミナはサラダを頼む。野菜をちぎって皿に盛り付けておいてくれ」
「あい」
ミナは、俺が作った作業台の上で、真剣な顔でサラダを盛り付けている。
子どもがお手伝いをしてるみたいで、とてもかわいらしい。
鬼子と呼ばれておそれられているとは思えない愛らしさだ。
俺は土魔法で竈を作り、薪に火をつけて鍋に油を入れた。
火魔法で火力をコントロールする。
薪を使うのは、火魔法ですべてやるよりも簡単で楽だからだ。
それと、やっぱ風情があるしね。
「できた!」
われながらおいしくできたと思う。
テーブルに持っていって、塩で食べてもらうことにした。
スセリとハッチが根の国へのルートを相談しているテーブルは、もちろん俺が土魔法で作ったものだ。
「おまたせ!」
テーブルの上にからあげが山盛りになった皿を置いた。
ミナがてくてくとサラダを運んできた。
「塩をつけて食べてみてくれ。俺の故郷の料理なんだ」
「はじめて見る料理です」
スセリが興味津々で見ている。
ハッチが一口でほおばった。
「アツッ、あつうま! うまあああああ!」
「あ、熱いから気をつけて食べてね」
スセリがおそるおそる口にいれた。
はむはむしている。
そして、しあわせな顔になった。
「とてもおいしいです。このような料理ははじめてです。オオナムチさん、ありがとうございます」
丁寧にお礼を言われた。
んむ、作った甲斐があるぜ!
「師匠!美味!」
ミナもおいしいと喜んでいる。
「うままま!うままま!」
ハッチは両手の真剣アメノムラクモノツルギでからあげを食べてるが、神級武具の使い方をあきらかに間違えている。
ふ、美食王国ジャパンの料理は最強だぜ!
古代人の舌をもうならせる日本の食文化ってすごいよな。
最後に残ったからあげの取り合いで、ハッチとミナが殺し合いになりかけたけど、スセリが横からさくっと食べていた。
さて、明日はとうとう根の国だ!




