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大物っぽいボスと話しました

 赤く光っていた大蛇の目が、金色に変わった。

 それとともに、大蛇は首を立ててこちらを見据(みす)えた。


「合格だ!(たけ)き者よ!」


「うお! しゃべった!?」


 大蛇がしゃべった。

 俺はあわてて、ミナとハッチを制止した。


「え? オオナムチさんは、言葉がわかるのでしょうか?」


 スセリが聞いてきた。

 どうも、俺しか大蛇の言葉がわからないようだ。


「合格だって言ってる」


「合格でしょうか?」


 スセリはキョトンとした顔をしている。


「うん、よくわからないから聞いてみるよ」


 大蛇はじっとこちらを見ている。


「人族の言葉で話そう。これでわかるか?」


「うお! しゃべった!?」


 ハッチもミナも驚いている。

 俺は翻訳(ほんやく)の祝福の力で理解できていたようだ。


「人間がここを訪れるなど、何百年ぶりだろうか。我が名はオオモノヌシ、古き蛇王神の一柱(ひとはしら)である」


 オオモノヌシ?

 大和三輪山に祀られる蛇の神様だよな。

 なぜ、こんなところにいるんだろう?


「以前に父が訪れているはずです」


 スセリが凛とした声で言った。


 オオモノヌシはスセリをじっと見つめている。


荒神(こうじん)の娘か? 彼奴がこの地を訪れてから300年ほどになるか。たしかによく似ておるな」


 え?

 スサノオ大王って何歳なの?


 そして、スセリと似てるの?

 スサノオ大王ってこんなに白くて可憐(かれん)なのか?

 ちょっとイメージ違うんですけど。


「彼奴は名に()わず凄まじき神であった。三昼夜にかけて争い、我を鎮めてみせたのは彼奴だけだ。その傷はまだ癒えぬ」


 スサノオ大王パネェ。


「この地の鎮護は彼奴との契約だ。そこの者、名を明かせ」


「俺、、ですか?」


 大蛇はこくりとうなづいた。


大波武一(おおなみむいち)です」


「オオナムチか。よい名だ」


 またこのパターンか。

 大波武一(おおなみむいち)だってのに・・・

 っていうか、最近思い出したけど、大国主命の若い頃の名がオオナムチとかオオナムヂだ。

 それだからなのかはわからないが、どうもこの世界での俺はオオナムチとして認識されてしまうらしい。


 そこで俺はまわりの状況に気づいた。


「あの、すいません。眷属(けんぞく)っぽい蛇さんたち、たくさん倒しちゃったんですが・・」


 過ちは早めに誠意をもって謝罪だ。


「死する者など我が眷属(けんぞく)にあらず。弱者が滅するのは自然の(ことわり)


「そ、そうっすか」


 うわ、スパルタな人だ。

 ジジイのことを思い出した。


「オオナムチよ。我が力にあたう器を持つ者よ。我が力を与えよう」


「えっ?」


 大蛇の身体が粒子のように崩れ、黒いモヤモヤしたものに変わった。

 そして、俺の身体にまとわりついて、俺の中に入ってきた。


「うおおおおおおおおおおお!」


 ものすごい力が俺の中で渦巻(うずま)いて暴れた。

 エネルギーがドクドクと注ぎ込まれる。

 全身が反って、ガクガクと震えた。


「オオナムチさん!」


 心配したスセリが叫ぶが、俺に近寄れないようだ。


 そして、そのエネルギーの奔流が止まると、俺の肩に黒い文様ができていた。

 蛇が渦巻くような文様。

 オオモノヌシの力の証なのだろうか?


「大丈夫なのですか?」


「師匠!」


 ミナもスセリも心配そうな顔をしている。


 手足を動かしてみるが、とくに変わった様子はない。

 力を与えれられたというが、とくに力が強くなったような変化も感じられなかった。

 ステータスも確認してみたが、変化は見られない。


「大丈夫みたい」


 まあ、肩に厨二的にかっこいい感じの文様ができたってことでよしとしよう。

 考えてもわからないことは考えるのをやめるのだ。

 考えなければならない事態が起きたとき、そのときにまた考えよう。


「眠ってるな」


 むずかしい顔で考え込んでいたハッチがしゃべった。


「ん?」


「おまえの中にあの大蛇が眠ってるわ」


「わかるのか?」


「おまえの器が大きくなれば目を覚ますだろうさ。今は無理だってことだな」


 ああ、なんか納得した。

 ハッチってこういう思考ができるんだな。


「ああ、そういえば、カワイキュンから武器を預かってきてくれてありがとう」


「ああ、パフェ3つだからな」


「この槍の代金は?」


「またでいいってさ。カワイキュンが矛と逆矛を合わせた天地理矛(あめつちのことわりのほこ)だから大事に使えって言ってた!まあ、俺様的に見てもエグゼクティブな矛だな」


 よくわからんが、かなり強力な武器なのはわかる。

 そして、ハッチがエグゼクティブの意味を理解していないのもわかった。


 スセリが俺を見た。


「とりあえず洞窟を抜けることにしましょう。オオモノヌシのことについては、父に尋ねてみるのがよいでしょう」


「わかった。じゃあいこう!」


 俺が盾役(タンク)ということで先頭を歩き、ミナとスセリが続く。

 ハッチは殿(しんがり)で、後方の守りを頼んだ。


 洞窟はくねくねと蛇行したものの、別れ道もなくすんなりと進むことができた。

 蛇や魔物もおらず、二時間ほどで出口に辿(たどり)り着くことができた。

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