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目を開けたら、20歳の私だった。

手足が軽く震えていた。思わずしゃがんで、(頑張った証だね)って小さく声に出して自分をいたわった。


こんなことってあるのだろうか。


さっき手を繋いだ相手はどこにもいない。

酔っていたんだろうか。白昼夢ってやつか。真夜中だけど。時計の針は深夜0時を回ったところだ。


こんな夜更けにハタチの女の子が、道の真ん中でしゃがんでていいわけない。

でも、長年の「ああすれば良かった」を解消して、足に力が入らない。

うれしい。あそこで、ああ言えて、逃げなくて、良かった。じんわりと達成感が体を巡り、震えが収まった。



――帰ろう。

名前も知らないアイツは、「戻るだけ」だと言っていた。現実の今に繋がることは何も変えられないと。「こういうことも出来たんだなあって思ってから、今の時間に戻ってくるだけなんです」と言われて意味がわからなかったけど…こういうことだったんだ。




唐突に寂しさが襲ってきた。あれは私だけの体験で、大きな声を出せたのも、逃げなかったのも、三橋君を潤君と呼べたのもただの幻。さっきまであった達成感はカケラも残っていなかった。



気付けばスマホで三橋君に電話を掛けていた。ガラケーからそのまま移したアドレス帳。あのときのままなら繋がる。6コール目で、呼び出し音が途切れる。深夜0時半。勢いだけで掛けてしまった。

もう、酔ってなんかいなかった。


「もしもし…?」


くぐもった、低い、男性の声。


「こんばんは、遅くにごめんなさい。三橋潤君ですか?私、中学校の同級生だった、高田沙耶です。」


息継ぎなしで言い放った。深夜のこんな電話、無言で切られても仕方がない。


「……さ、や…?夢の続き…?」


名前を呼ばれた!!!さっきの幻でも呼ばれたけど!え、待って

「夢、って…」

電話の向こうで寝起きの三橋潤が話す。

「さっき、大きな声だった、ね。…沙耶。」

嘘みたいだ、こんな奇跡みたいなことあるのだろうか。

「み、つ橋君…」

「さっきは潤君って呼んでくれたじゃん。ねえ、おめでとうって言ってよ。」

完全に起きた彼が囁く。私は混乱しているのに。

「お、おめでとう…?どうして…?」


「今、0時42分。今日、20歳になったんだ。」


朗らかに、彼が笑う。


なんてことだろう。驚いた。やっぱり、20歳の誕生日には特別なことが起こるじゃないか。

ずるいよ、私の誕生日にはなにも無かったのに。神様、不公平だ!

特別なのは彼だった。特別なのは彼の誕生日だからだ。


悔しい、でも、嬉しい。こんな特別なことは、奇跡だ、幸せだ。

電話のこっち側で悔し泣きをしている私に気のついた潤君は途端に慌てだした。笑っちゃう。笑っちゃうよ、もう!


私は言った。


「潤君、20歳の誕生日、おめでとう!!!!」


もちろん、さっきより大きな声で。

初めて書いた小説です。

完結を目指しました。

感想等いただければ幸いです。

ありがとうございました!

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