表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒狼は彷徨う──その“解無き問い”に牙を向けて  作者: 星月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

第4話「模擬戦──牙は静かに顕れる」

※本作は、少しだけ長い時を生きる1人の主人公が、かつての仲間を探し求めて、彷徨う物語です。

彼の記憶はどこか朧げで、それでも手放さなかったものだけを頼りに進み続けます。

再会が彼の救いになるのか、それとも──

それはまだ、誰も分かりません。

彼の旅はどこか“間違って”いるかも知れませんね。

ゆっくりと進む物語ですが、温かい目で見て頂ければ幸いです。

───それでは、この物語をお楽しみください。

学園長室に少しの間静寂が走った。

その静寂をかき消すようにフィンが声を上げた。

「お前、さっき自由に測れって言ってたよな?」

セナはフィンの目を見て応える。

「あぁ…確かにそう言った」

フィンはそれを聞いて鋭い目になり、微笑んだ。

「じゃあ、俺と今から模擬戦しろ」

その場にいた者全員は、それを聞いて驚いた。

何故なら、ただの傭兵が英雄のフィンに勝てるはずがないと、感じていたからだ。

セナは何も言わずに、ラウスへ視線だけやる。

ラウスはそれを理解して、呆れたような声で言う。「はぁ──セナ…手加減してくれるか?」

セナはそれを聞いて、何一つ表情を変えずに答えた。

「当たり前だ。もし手加減しなかったら、死んでしまうからな」

フィンはこれを聞いて期待と、舐められていると言う苛立ちで少し機嫌が悪くなっていた。

「そんなに言うなら、今すぐにやろうぜ…?」

ラウスは頭を抱えて、言葉を放った。

「模擬戦を許可する。場所は──訓練場だ」



訓練場に着いたセナは少し驚いたような声でラウスに話しかける。

「おい、なんでこんな人がいるんだ?」


ラウスはため息をつきながら答えた。「英雄と新たに来た臨時講師の模擬戦だ。見物人が集まるのは当然だろう」

「おそらく、ナリルかフィリウスが広めたんだろう。」

観客席には、すでに教師や生徒たちが集まり始めていた。そこにはさっきまで一緒にいた、英雄達も観客席に並ぶ。だが、ざわめきの中心にあるのは──フィンではなかった。

「誰だ、あの男…」「ラウス様と一緒にいたってことは関係者か?」「いや、どう見てもただの傭兵だろ…」

値踏みするような視線が、セナに突き刺さる。

セナはそれを一瞥し、興味なさげに視線を外した。


セナは無言のまま訓練場中央へ歩み出る。

それを迎えるように、フィンが口を開いた。

「おい…一応言っとくが、俺は本気で行くぞ」

「そうじゃないと、意味がないだろう」

セナは不思議そうな声で応える。


訓練場に、音が消えた。

誰もが息を止める。


観戦する教師たちの視線が、一点に集まっていた。

中央に立つのは、二人。

火を宿す英雄、フィン・ランバード。そして──無感情に立つ、傭兵セナ・ラーファリア。

ラウスが2人の間に来て、確認をしにくる。

「ルールは単純だ。降参か、戦闘不能で終了。……それで双方いいな?」

ラウスの声が響く。

「ああ、問題ねぇよ」「……問題ない」

短いやり取りの直後。

「──開始」

ラウスが放ったその一言で、空気が裂けた。

 

「行くぞッ!」

フィンが地を蹴る。

一瞬で間合いを詰め、炎を纏った剣を振り抜いた。

速い。

剣が炎を纏いフィンが言葉を紡いだ。

「烈火一閃…!」

炎の斬撃がセナの眼前までくる。

並の“人間”なら、反応すらできない速度。

だが──

次の瞬間、セナは布に覆われた武器を静かに持ち上げた。

──そして、セナの武器に斬撃が触れた瞬間、フィンの炎の斬撃は消えてしまった。

セナは一歩も動かず、その斬撃を受け止めていた。

いや、正確には違う。

受け止めたのではない。

──武器が、“魔法を喰っていた”。

フィンの剣に宿る炎が、揺らぐ。

「……は?」

次の瞬間。

炎が、消えた。

 

「魔力……喰ってんのか?」

フィンの声に、わずかな動揺が混じる。

セナは答えない。

炎は消えた。だが、布だけが焼け落ちていく

そしてセナの武器はその姿を顕す。

フィンは驚いたような声でセナに話しかけた。

「は?…なんだお前のその武器。」

驚くのも無理はないだろう。それは槍のように長く、大剣の刃を持ち、先端には砲身が付いている異形の武器だった。

中央には、何かを装填するための機構がある。

そしてセナは鞄に手を入れて、ある物を取り出した。

──それはただのガラス瓶だった。だがセナはそれを武器のスロットに一本入れ、言葉を紡いだ。

 

「──装填。」

 

見えない何かが、武器へと流れ込む。

先ほどまでフィンが纏っていた炎。それが、そのまま“弾”として蓄えられていく。

 

「……なるほどな。面白ぇ」

フィンが笑う。

ならば、と言わんばかりに魔力を高めた。

 

「喰えるもんなら、喰ってみろよッ!!」

 

爆ぜる炎。

先ほどとは比較にならない熱量が、剣に宿る。

そのまま、連撃。

上段、横薙ぎ、突き。

間断のない攻撃が、セナへと襲いかかる。

 

だが。

 

全てが、届かない。

 

ガギン、ギィン、キィン──

鋭い金属音の中に、微かな異音が混ざる。

炎が削れていく音。

 

セナは一歩も退かない。

ただ受け、

ただ吸う。

そして。

瓶が満ちる。

 

「──放つ」

 小さく呟いた。

 武器が、僅かに震える。

「放撃──炎焦」

 ──次の瞬間。

 轟音。

 圧縮された炎が、一閃となって解き放たれた。

「ッ──!?」

 

フィンの体が、大きく弾かれる。

防御は間に合った。

だが、衝撃までは殺しきれない。

数歩、いや数メートル。

地面を削りながら、後退する。

「は、はは……マジかよ」

口元を歪めるフィン。

その目は、完全に“戦士”のそれだった。

「いいじゃねぇか……!」

再び、炎が燃え上がる。 

先ほどよりも、さらに濃く。

 

「今度は、こっちが本気で行くぞ」

 

空気が、変わる。

フィンはゆっくりと剣を構えた。

「行くぞ」

次の瞬間、地面を蹴り、一直線に距離を詰める。

速い。

だが──セナは、動かない。

ただ、その動きを“見ている”。

フィンの剣が振り下ろされる瞬間。

セナは僅かに身体を傾け、それを最小限の動きで躱した。

風が裂ける音だけが、遅れて響く。

「……っ!」

フィンの目が見開かれる。

今の一撃は、決して軽いものではない。

それを、ここまで“余裕を持って”避けられるとは思っていなかった。


だが、止まらない。

そのまま連撃へと移行する。

斬撃、斬撃、斬撃。

速度を上げ、間合いを詰め、畳み掛ける。

しかし──

「遅いな」

セナの低い声が、静かに落ちた。

その言葉と同時に、セナの手に握られていた武器が、僅かに持ち上がる。

カチリ、と乾いた音。

空の瓶が装填される。

フィンの剣が再び迫る、その瞬間。


セナは一歩踏み出した。

避けるのではない。

“踏み込んだ”。

刃と刃が交差する。

──が。

ぶつかる寸前。

セナの武器の銃口が、フィンの剣へと向けられた。

「装填完了」

次の瞬間。

フィンの剣に纏っていた炎が、音もなく“吸われた”。

「……は?」

一瞬の空白。

理解が追いつかない。

炎が消えた?

いや違う。

奪われた。

その一瞬の隙。

セナは引き金を引いた。

「──放撃…焔」

轟音。

圧縮された魔力が、至近距離で解き放たれる。

フィンの身体が、衝撃と共に大きく後方へ弾き飛ばされた。

地面を滑り、砂煙が舞う。

静寂。

誰も、言葉を発さない。

やがて――

フィンがゆっくりと立ち上がる。

口元を拭い、笑った。

「……なるほどな」

その目には、さっきまでの余裕はない。

純粋な戦意と、理解できないものへの興奮が宿っていた。

「もう一回だ」

そう言って、再び構える。

だが──

「やめておけ」

セナの声が、それを止めた。

フィンの動きが止まる。

「これ以上やれば、お前は自分の限界を超えるだろ」

淡々とした声。


だがその言葉には、確信があった。

「そして俺も、手加減ができなくなる」

その一言で、空気が変わる。

周囲の教師たちが、息を呑んだ。

冗談ではない。

この男は、本気で言って

フィンは数秒、セナを見つめ─けど

そして、剣を下ろした。

「……今回は、俺の負けだ」

誰一人として、歓声を上げなかった。

それが、この戦いの異常さを物語っていた。だが観客は一足遅れて、その言葉に訓練場がざわめく。


英雄が、認めた。

目の前の“傭兵”を。

セナは何も言わず、武器を下ろす。

その横顔には、勝利の色はなかった。

ただ──

どこか、遠くを見るような目をしていた。


第4話ご視聴いただきありがとうございました。

さて第4話は主にセナとフィンの戦闘でしたが、どうだったでしょうか。

英雄であるフィンに勝つセナ、そして謎の武器と、装填と放撃これらは一体なんなのでしょうね?

後空白が多いところと少ないところがあるのは、深い意味はありません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ