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黒狼は彷徨う──その“解無き問い”に牙を向けて  作者: 星月


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4/6

第3話「重なる記憶」

※本作は、少しだけ長い時を生きる1人の主人公が、かつての仲間を探し求めて、彷徨う物語です。

彼の記憶はどこか朧げで、それでも手放さなかったものだけを頼りに進み続けます。

再会が彼の救いになるのか、それとも──

それはまだ、誰も分かりません。

彼の旅はどこか“間違って”いるかも知れませんね。

ゆっくりと進む物語ですが、温かい目で見て頂ければ幸いです。

───それでは、この物語をお楽しみください。


シエルが学園長室に入った後セナは扉の前に立っていた。


セナは、開ける前からすでに分かっていた。

この先に、“何かいる”──

胸の奥が、ざわつく。

次の瞬間。風が吹く。

セナの頭にノイズが走る。

その奥で、別の光景が重なった。


崩れた空。血で染まった地面と風の匂い。

「セナ──」

そこで、切れる。

呼ばれていた。

──確かに、誰かに。

その声と、今の声が——ほんの一瞬だけ重なった。


「……っ」

セナはわずかに目を細める。

錯覚だ。

そう、無理矢理片付けようとする。 

学園長室からラウスの声が聞こえた。

「入れ。」

そのまま、重厚な扉を押し開けた。


学園長室は異常なほどに静かだった。

高い天井。整然と並ぶ書棚。そして、その中心に立つ男。

ラウス・エルグレイン。

「来たか」

その声は落ち着いていた。

まるで、最初からこうなると知っていたように。


「紹介しよう」

ラウスは軽く手を上げる。

その瞬間、扉の奥から気配が増える。

セナの視線が動いた。

そこには——

“英雄”と呼ばれる者たちがいた。


最初に一歩前へ出たのは、炎のような男だった。

「フィン・ランバードだ。戦闘担当だな、よろしく」

明るいが、目は鋭い。

(強い)

一目で分かる。

(……こいつは)

“知っている強さ”だ。

だが、思い出せない。


次に、静かに頭を下げた女。

「スイ・リンファ。実技補助と潜入任務担当」

視線は柔らかいが、隙がない。


聖職者のローブを着た男が続く。

「ソルド・エイレスです。治癒と支援魔術を担当しています」

穏やかだが、芯が強い。


大きな影が一歩前に出る。

「ウェイラス・ドーラだ。守るのは得意だ、任せろ」

低い声、揺るがない存在感。


雷のように鋭い空気。

「ナリル・イナリス。実戦指導だ」

短い言葉。視線は常に周囲を測っている。


軽い調子で笑う男。

「フィリウス・ユーティア。授業は退屈にしないようにするよ」

空気を和らげるようで、どこか読めない。


そして、重い気配。

「エレウス・ロードス……戦闘訓練担当だ」

一言だけ。圧が違う。


静かな声。

「アルレア・フリスト。魔術理論と応用」

冷静で、観察する目をしている。


ゆるく笑う影。

「ナリティ・ウラスナ。まぁ適当によろしく」

掴めない存在。


最後に、明るくシエルが話しかける。

「一応もう一回自己紹介するね!私はシエル・ファルリア。担当教科は遠距離実技を担当してるよ、よろしく〜」


全員が名乗り終えたあと。

視線が、セナに集まる。


ラウスが言う。

「こいつが今日からの臨時講師だ」

短い説明。

それだけだった。


沈黙。

一瞬だけ空気が重くなる。


フィンが先に口を開く。

「んで、お前」

フィンが一歩前に出る。

そして、セナが顔を少し向ける。

「どれぐらいの強さなんだ?」

空気が、僅かに張りつめる。

──試されている。

セナは、短く答えた。

「さあな」

たったそれだけ。

僅かな沈黙。

セナは静かに言葉を紡いだ。

「測るなら、好きに測れ」


ナリルが目を細める。

「一応聞いとくが、戦場経験は?」

「ある」

即答。


ウェイラスが腕を組む。

「ふーん……見た目は細いがな」

セナは何も反応しない。

ただ、無意識に視線がシエルに向く。

その時、一瞬だけ止まる。

そして

——また“あの感覚”。

さっきより強く。


その瞬間──

世界が、重なる。

風。

崩れた空。

倒れる影。

「……また、助けられたね」

知らないはずの言葉。

なのに——

胸が、痛い。


ラウスは、そのセナの様子を見ていた。


そして誰にも聞こえないような声で、静かに呟く。

「──やはり、な」

それは誰に向けた言葉でもない。

ラウスは少し暗い表情から元に戻った。

「自己紹介は済んだな」

「今日からここが、お前の仕事場だ」


セナは静かに頷く。だが何も答えない。

その代わりにただ一度だけ、全員を見る。

そして——

その中にいる“何か”を探すように、目を細めた。


(俺は、何を探しているんだ?)

それはセナ自身にもわからない。

だが──

ラウスのいう通り

(ここに来たことは、間違っていない)


そういう理由もない確信だけが、残っていた。



第3話ご視聴ありがとうございました。第3話ではセナが英雄達と顔を合わせる話でした。まだ戦闘がないですが次回第4話では戦闘シーンがあります。お楽しみに。

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