開く活路
椅子に腰掛けたソイツは手に持った杖に顎をのせ抑揚の無い声でこちらに語りかけてくる、ボロボロに見える黒いローブに身を包んでいるがみすぼらしさや安物っといった印象からはかけ離れた歴戦故の経年劣化又は最初からそう作られていると感じるほどの物だった、いやソイツが着ていれば大抵のものは安物には見えないそう言う覇気を持っている。
血色の悪い土気色の女の顔をしているが瞳と口はピチッと閉じられており全くと言って良いほど生気は感じられない、これ以上は俺の心が持たないし奴の放つ圧倒的なプレッシャーと殺意で前方の空間が歪んで正直まともに観察など出来る状態ではないしその上止めどなくあふれ出る血涙で視界は赤一色に染まってしまっている、急いで視点を地面に移すと流れ出る血涙と鼻血で地面を汚す。
「…小僧ここで何をしていた?何処まで知ってるんだ?」
何をしていたかと言われればレベリングの為に鎧スケルトンを狩っていたと答えられる、しかし眼前のコイツの配下を狩っていたなどと言えば不興を買うかも知れない、それはもう天命に任せるしかあるまい。
それより「何処まで知っているのか」一体全体何をだ?…俺は何も知らないと言っても過言では無いが、もし活路があるとするならばコイツは俺がここで何かを知った可能性を感じていると言うことだろう、逆に言えば知ってはいけないことを知ったと思われれば俺の命はない訳だ、意を決して口を開く。
「ここにはレベル上げの為に来ました…入り口を見つけたのは偶然です、俺のテイムした狼が幻影を見つけたので…そこから…。」
興味があるのかそれとも気ほどもないのかさっぱりわからない、ソイツはゆっくりと気怠げに杖を振ると俺の目の前に魔方陣が現れる、何か間違ったか?と思う間もなく魔方陣からエンヘルがぼとりと落ちてくる。
「コイツか?」
「ええ…そうです。」
目の前が真っ暗になる、エンヘルが逃げられるとは思ってはいなかった、いなかったはずなのだが心のどこかで希望を抱いていたのだろう、それがいま眼前で砕かれた、不幸中の幸いと言えば良いのエンヘルの息はまだあるらしい。
「何処まで知っているのか…というのは正直なにについて仰っているのか私にはわかりませんが、ここが普通のダンジョンでは無いこと、それと俺達はここに来るべきでは無かった…と言うことくらいです…。」
「…彼我の実力差が身体に変調をきたすほどわかる程度には小僧も強い…惜しいな。」
顎下に据えた杖を前に突き出すと地面に軽くトンと打ち付ける。
「だが、死ね人の子よ。」
ソイツはカッと目を見開きそう言い放つ、見開かれた目に眼球は無く奥に怪しくも何処かきらびやかに光る蒼光の球が確認できた、音を置き去りにした一撃を辺りにいた一体の鎧スケルトンが俺の首目がけ振り下ろしてくる。
「ック!!がぁア!!」
刹那、俺は両足に躁血で血を集中させ一気に破裂させると臑から先が千切れ飛ぶが吹き出した血で瞬間的に推力を手に入れる、斬りかかってきたスケルトンの一撃を肩で受けると左肩から先が千切れ飛ぶ、が懐に潜り込むことに成功する。
顎の下からロッテンネイルを突き刺し頭の上まで貫通させると千切れ飛んだ左肩から血を吹き出し身体を回転させる事で首をねじ切る、そのままの勢いでくるりと一回転しスケルトンの肩から腰下まで袈裟切りをかますと両断されたスケルトンはドシャリと崩れ落ちる。
「…勝てた、ハハハ…やってみるもんだな。」
遅れて俺も地面に落っこちる両足も片手も失った俺に既に受け身を取ることなどままならず芋虫のように這いつくばる、推進力に血を使いすぎたんだろう視界が定まらずだんだんとぼやけてくる。
ただ不思議と悪い気はしなかった、ミハイが俺と決闘したときに使った足を吹っ飛ばして推進力を得る技を使ったというものもあるのかも知れないが、一番やはり格上に勝てたと言うことが嬉しいのだろう。
「見事だ…だがそれで?どうした?我が配下はまだいくらでもいる、お前の死は避けようのない事実として数秒後のお前の前に横たわっているんだぞ。」
俺は右手を地面に着き顔を持ち上げてソイツを見る。
「そう…ですね…、ただスッとした…それだけです…そうだ一つ、いや二つ…お願いが…。」
「言ってみろ。」
俺は息も絶え絶えで横たわるエンヘルを指さす。
「ソレは…俺の眷属です、助けてくれとは…言いません、ただ…短いなりに良く尽くしたヤツです…苦しまないように殺して…やって下さい。」
短くわかったと言い軽く頷くと俺に次の言葉を促す。
「…あんたの名前を…聞かせて欲しい。」
「そう言うものは自ずから名乗るものだ…が良かろう死にゆくものよ、我が名を抱いて死んでいけ。我こそは魔王軍輜重部の長パルブラ、小僧名を何という?」
マジかよ…俺はガックリと首を落として残った右手だけ上げて口を開く。
「…魔王軍情報部所属の…ケイです…。」
二人の間に無限とも思える沈黙が訪れる、パルブラは座ったまま口を開く。
「え、うそんやだホント?どうしよかしら?えっえーと…」
薄れかける意識の中椅子から勢いよく立ち上がったパルブラが右往左往しているのが最後に残った光景だった。
誤字脱字報告本当に助かりますありがとうございます、評価、ブックマークもとっても励みになります、総合評価も350が見えてきたのでより頑張らねばと気合いれて構想をまとめています!




