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依存させて  作者: サウス・ジュン
1/1

結末は僕だけの望んだもの

数話完結の短い内容の予定です。


短編のつもりで書いてたら、区切ったほうがいい気がして連載にしました。



「マルス・・・」


悲しげな表情を浮かべている元婚約者(・・・・)に僕は頬笑みかける。

彼女の体はやつれており、体には石を投げつけられたのか跡がくっきりと見える。


「ライナ。大丈夫かい?」


「マルス・・・助けてくれるの?」


すがるようなその視線に僕は優越感を覚えつつも、まだダメだと表情を変えずに言った。


「それは難しいかな?君を助ける役目を僕は彼に奪われたからね。そういえば、レオンはどこにいるの?」


その一言に明らかにライナの表情は変わる。

レオンとは、現在の彼女の婚約者の名前で、僕の友人でもあった人物の名前だ。

レオンはライナに恋をして、僕からライナを奪ったと皆の間(・・・)では言われている。

もちろん事実は違うが、間違いではない。


「レオンは・・・レオンとは別れたわ・・・」


悲しげに目を伏せるライナ。


「彼は・・・彼は、私のことを・・・簡単に見捨てた・・・あなたと婚約破棄して、周りの皆から蔑まれて・・・私の家と彼の家が金銭的に危うくなってから、彼はすぐに他の女に切り替えた・・・私とはもう会わないって・・・」


ライナは濁った瞳に涙を溜めてこちらをみる。


「あなたの言う通りだったんだって、ずっと後悔して・・・なんで、あなたを信じてあげられなかったのかって・・・私は・・・」


彼女を見つめている人間の瞳は冷たい。

悲劇のヒロインに見えても、結局彼女が僕を裏切って、他の男に遊ばれて捨てられたという滑稽な状況には変わりないのだ。


「ライナ。」


そんな彼女に俺はなるべく優しげに声をかける。

僕の優しげな声音に彼女の瞳には光が少し灯るが、僕は簡単には許さない。

だって、それでは意味がないのだ。


「ライナ。僕はね。君のことが好きだったんだ。政略結婚とはいえ、本気で愛していた・・・でも、君は僕を裏切った。僕を信じてはくれなかった。どうしてだい?」


「それは・・・」


「友人であったレオンの言葉を信じて、僕のことをまったく信じてなかった。僕はね・・・凄く傷ついたんだよ。今のライナなら僕の気持ちわかるよね?」


その言葉にライナの表情が悲しげに歪む。


「実はね、僕に新しい縁談がきてるんだ。相手は他国のご令嬢でね・・・とても美人でお金持ちの人らしいんだ。相手は僕の婚約者に是非とも自分をって推てきててね。ライナはこの話どう思う?」


「マルス・・・私は・・・」


「うん。君は興味はない話だよね。ごめん。だって、僕の手を離して彼にいった君にはどうでもいいよね?」


ライナの表情が絶望に染まる。

優しげに声だが、内容は彼女を助けないと言っているようなもの、彼女の傷口を広げているような内容なのだ。

周りの観客は、悲劇のヒーローである僕が、元婚約者にざまぁをする様子を期待して待ってるようだけど・・・


「ライナ、選ばせてあげるよ。僕の手を取るか、このまま破滅するのかを。」


「えっ・・・?」


驚きに目を見開くライナ。

まあ、さっきまでの発言とは思えない台詞だろうからね。


「ハッキリと言おう。僕は君を信じられないし、君に対する好意もない。当然だろ?一度裏切られてるんだ。また同じように裏切られると思うし、信用なんてできない。好意だって、裏切られてから完全に消えてしまったよ。」


涙を流すライナ。

辛辣なことを言ってはいるが、事実なので彼女も肯定するしかない。

なにより、壊れかけた彼女の心はもはやちゃんと思考する気力もないだろう。


「だけど、君のご両親や妹には罪はない。まあ、君を止められなかったのは彼らにも責任はあるだろうけど・・・それでも、僕は君よりも彼らの方が今は好きなんだよ。そんな好きな人達には幸せになってほしい。だから選ばせてあげるし、チャンスもあげるよ。」


「チャンス・・・」


「ライナ、君は今何が欲しいの?寂しい孤独な君は何を欲しているんだい?」


「わたしは・・・」


「ねえ、欲しくない?絶対に変わらない、君だけに向く愛情が。それをあげるチャンスを君にあげるよ。僕は君のことを今はなんとも思えない。だけど、これから君が僕だけをみて、決して裏切らなければ・・・僕はそれを与えてあげるよ。もちろん、2度目はなないよ?今回だけだ。それで?どうする?」


僕の台詞にライナの瞳は揺れる。

家のこと、家族のこと・・・なにより、裏切られて絶望の淵にいる自分に愛をくれるかもしれないという言葉にライナの心は揺れているようだ。


「本当に・・・私を愛してくれる・・?」


「君が本気なら答えるつもりはあるよ。」


「助けて・・・くれる?」


「僕だけをみるならね。」


「私は・・・その手を取れば楽になれるの?」


どこまでも暗い瞳のライナに僕は頬笑む。


「もちろんだよ。」


そう返事をすると、ライナは這いずりながら僕の足下にしがみついた。


「お願い・・・私を・・・私を助けて・・・私を愛して・・・私を・・・私だけをみて・・・」


必死にこちらにすがりつくライナに僕は内心歓喜しながらも余裕の微笑みで答えた。


「わかったよ。ライナ。」




ーーー全て計画通りにいった瞬間だったーーー








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