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フロムエンド  作者: 連打
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49/50

フロムエンド



   ・・

ああ、ヘマした。

冷たいダイリセキ(?)の壁にデコを押し付ける。まさか学校で気絶するなんて。

きのうのあのクソ共の責めが後を引いたんだ。



「……いってぇ」



ビリ、と背中の皮膚が腰まで破れて、そっからなんか透明な汁みたいなやつ出てきてさ。痛くてここんとこ寝てないんだよな。んで気が付いたら病院、医者が親を呼ぶなんて抜かしやがる。

いや、まあさ。

分かってんだよ医者に悪意が無いのは。それどころか『哀れな少年を見過ごせない』ってセイギカン的なヤツがチラチラしてんのもさ。



「……」



でもなあ。

今更なんだよなあ。あいつら殺すの俺なんだよ。余計な手出しされたら計画狂うじゃんな。

お姉ちゃんだって毎日毎日、あれはもうもたないよ。

あのハハオヤもどういう心境で見てんのかね?自分の結婚相手が自分の娘をやっちまってるトコ。





バラバラにしてやるんだ。




俺が、やるんだ。心に溜まっていく澱。これがいい。これさえあればやれる。

あいつらを八つ裂きにするんだ。




「って、いってえええ!?」



「あ」



あ、じゃねえ!なんだこのちっこいガキは!?

なんでこんなバカ広い廊下で誰かにぶつかったりするんだ!?しかも背中!ビリビリの俺の背中!!



「……おにーちゃん、怪我してるの?」



「病院にいるからな、病気か怪我の2択だよな!」



車椅子に乗ったガキはほそっこい腕で器用に車輪を回しながら俺の周囲を旋回する。じろじろガンミしてくるガキはなぜか楽しそうに微笑んでいた。



「……」



こういう視線はニガテだった。なんの作為も無い真っ直ぐな只の『視線』。むきだしで無防備で無造作で。

俺んちではこんな目をしたヤツはいない。

いつも何かを狙ってる目しかない。


憐憫にあやかりたいお姉ちゃんの目。

嫉妬に捻じ曲がったハハオヤの目。

加虐趣味が芯まで詰まったチチオヤの目。

そして……両親を八つ裂きにしたくてたまらない俺の狂った眼。



「……」



誰にも邪魔はさせるものか。

毎日想像し、毎晩夢想する。

鳥肌が立つほど興奮するのだ。

俺はきっとコワレテイルンダ。



「リンコの『こ』!」



「……は?」



「しりとり!」



「なにいってんだ?リンコ?」



「わたし遠見凛子だから!」



謎のガキは自分を人差し指で指し自己紹介をしているらしい。馴れ馴れしいガキだ。



「なんでしりとりなんかしなきゃいけないんだよ」



「その目!リンコその目キライ!」



……キライなら話しかけてくんなよ。ってかハナシ聞いてんのかよ。

俺は憂鬱だが家に帰ることにした。

まだ、死ねない。殺されるわけにはいかない。その為にはなんとかあの医者を誤魔化さなければマジでチチオヤは俺を殺すだろう。


ならば。



あの医者、殺すか。

別に恨みは無いけど練習も兼ねて。俺は誰の助けもいらない。俺は自分でケリをつける。



『助けて』



そう呟いたお姉ちゃんの顔が頭から離れない。

お姉ちゃんがチチオヤにケツから責められていた夜、それを見せ付けられた俺はお姉ちゃんに誓ったんだ。

ヤツラをぶっ殺すと。

必ず助けると。



そのためには邪魔は徹底的に排除するんだ。



俺は。



「っ!?」



「ねえ、病院明日も来る?」



俺は……あわてて腕を振り回した。

突然ガキが俺の袖を掴んできたから。振り払ったんだ、必死に。



「来る?」



気味が悪い。

なんで俺はこんなに焦ってる?ただのガキじゃないか。

なんだこの汗?なんだこの……



「泣いてるの?」



なんだよコレ。車椅子のガキがなんでこんなに……なんでこんなに……



「!?」



目の裏で幾つかの光景がひらひらと舞った。

いろんな景色、匂い、人々、思い。



「……」



終わる世界、変わっていった人々。

終焉。

心臓が、痛い。頭が真っ白に漂白されるように裏返る。






『なんのって。高校でも大学でもいいです!私行った事無いんです!』


『私は怒ってるんです!この冷蔵庫みたいな男に人情とは何かを……教え込んでやるうっ!』


『っていうか高坂さん……いつまで『遠見さん』って呼ぶ気?』





こりゃなんだ!?なんで知らない人間を思い出す!?

僕は



「……」




……。僕は……生きていた。

あそこで遠見さんと、確かに生きていた。



なんで……




ぎり、っと唇を噛み切る。

抑えられない感情が自分の内側から破裂してしまいそうだった。



なんでなんだ。




なんでそんなに強い!?遠見さんは病気で、生きられなくて……それでも僕なんかを最期まで気にして……逝って。

僕は、俺は……結局最期の最期まで甘えてばっかりで!!



僕は!!




「高坂さん」



遠見さんは、笑っている。

それだけで僕は。



「大好きだよ」



そう言うと同時にきぃきぃと車椅子で僕の隣にゆっくりと移動した遠見さんは、僕に持たれかかる様に立ち上がろうと……僕に向け両手を差し出した。



「僕も……遠見さんが好きだ」



ひょいと持ち上げるように遠見さんを脇から抱え上げ腕を回し支える。



相変わらず遠見さんは……羽根みたいにってのは言い過ぎだが、やっぱり軽かった。

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