Does it match well? 【高坂】
大型量販店の入ったビルを発見し、僕と遠見さんは用心深く侵入する。
「…………」
店舗は2階に位置しており階段を昇って入り口に到着すると。
「おおう」
遠見さんは大量の衣類の前で呆然と立ち尽くす。
ほとんどビルのワンフロアが店の敷地らしく端から端まで全力で走ったら息切れしそうな広さ。棚は殆ど倒れていて衣類は散乱し放題になってはいるが、まだかなりの数の服や靴下、下着類が棚や床に残っているようだ。
高級品ではないがバリエーションは申し分ないだろう。
「リンコ?」
「ふあぁ。これだけあると何がなんだか」
床に散乱するシャツを捲りながら歩き出すリンコ。
確かに物凄い量である。
「僕は座ってるから選んで来て」
僕は遠見さんに声を掛け店内に設置してあった簡易なベンチに腰掛けた。
これだけあれば遠見さんの気に入ったものも見付かるだろう。
くるくると踊るように店内を物色する遠見さんは、気に入ったものや気になるものがある度に僕の座っているベンチに小走りで駆け寄ってくる。
「高坂さん高坂さん!」
「?」
「ど、どうです?」
あまり特徴の無い白いシャツを「どう?」と聞かれても困る。でも確かに飾り気の無い服装の方が遠見さんには似合っている気がした。
顔のパーツが整っているので充分可愛らしくなる。
ま、『可愛らしさ』が今の世の中必要か?という疑問はあるが。
「リンコは可愛いから好きな服を選べばいいよ」
「……テレますから、そういうの」
「そう?」
顔を少しだけ赤らめた遠見さんは再度ぱたぱたと衣類の倒れた棚を覗きに行った。忙しそうに店内を歩き回る遠見さんはすごく楽しそうで、それだけでこのムシムシするビルの中での時間が苦じゃなくなるから不思議なもんだ。
「……」
こんな世の中じゃなく、病気も無い世界の遠見さんを想像しかけてすぐ止めた。
彼女は病気の経験コミで今の彼女がある。
病気も個性だ、なんて偽善的な事をいうつもりはないが……人格形成に大きな影響を与えているのは間違い無い。
遠見さんは、やはり遠見さんなのだ。
「似合います?」
今度は大きなサングラスをかけた遠見さんが小走りに駆け寄ってくる。
「……バッタみたいだ」
「にひ」
バッタみたいに飛べたらいいですね、そう言い残し遠見さんはまた棚の森に消えていく。
今日はいい日だと、そう思った。




