王者の道(6)
彼女は目を瞬かせて首を傾げた。
ザイデルは続ける。
「リーニエ、誰かを傷つけては、己が傷つくんだぞ。お前にも他者を愛する心があるだろう」
その言葉に彼女は、直立したまま静かに瞳を伏せた。
その瞬間を狙って、準備していたネージュが手から短い閃光を放つ。
その光線はインハルトの左側の金属の扉を高い音を立てて破壊した。
「な、なにッ!?」
インハルトが驚いて声を上げる。
すでに回り込んでいたヘルツが走った。
素早くフレーテの元へ近づく。
「フレーテ皇女様、ここは危険です。こちらに来てください」
「いッ、嫌よ、来ないでバケモノ! あんたが皇子なんて、私信じないから!」
「――フレーテ様! ヘルツの顔を良く御覧ください」
ザイデルが叫ぶと、フレーテはヘルツのブラックオパールの宝石のような瞳を見た。
「……お父様」
フレーテが呟くのと同時に静かに考え込んでいた、リーニエが瞳を開いた。
《主殿の言うてることはいつも、よぅ分からんわ。
妾は殺す為に生まれ、殺して生きる、そうであろ?》
洞窟内に、再び殺気が満ちていく。
「ヘルツ、まだか!」
「――フレーテ様、行きましょう!」
ヘルツは困惑するフレーテの腕を掴んだ。
その時、インハルトが懐から短刀を抜き出してヘルツたちへ向かって投げつけた。
しかし、投げ方が甘かったのか短刀は軌道を変え、二人の横を掠めて落下する。
「インハルト!? どうして、私もいるのに!」
フレーテが悲痛な面もちで叫ぶと、彼は手を掲げて横に首を振った。
「少々計画と違うが、まぁ良いい。
皇女様、貴女はここで魔人によって無惨に殺害されるのです。怒り狂った聖王は魔国に進軍し、それを破壊する」
インハルトはニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながら言う。
「聖王は、私が盛っている薬でそのうち死だろう。
そうすれば魔国も聖国も、お終いだ。全て終われば、私が魔体の王として君臨し、この国を支配する」
「な、なにを言っているの!」
フレーテが叫ぶとヘルツは唇を噛んだ。
「皇子としては悔しいか、ヘルツ? 何かの役に立つかと幽閉していたが、もう必要ない。
大人しくフレーテ様共々、死ねッ」
ヘルツは苦渋の表情で、それでも短剣を手に取った。
「まぁ、争うというのもいいだろう。第三番!」
《承知じゃ》
リーニエが二人の背後に出現すると、フレーテが驚嘆を上げた。ヘルツは恐怖で震え上がった。
掲げた剣先がガタガタと震えている。
《ホホホ、怖いのかぇ? 大丈夫、一瞬で死いいいぐいい》
しかし、リーニエが腕を振り上げると同時に彼女の体が急激に変形した。ボコボコと膨張し始める。
《なぁん、じゃあああ!?》
リーニエは痛恨の表情で頭を抱え、踊り狂うようにのたうち回っている。
「リーニエ!」




