王者の道(3)
「人に好ましい者、好ましくない者がいるように。
魔人であっても同じで御座います。
目を見て、交友してみなければ分からない。良い魔人も悪い人間も居るのです」
「そんなことないわ。 魔人は皆、悪者よ。決まってるじゃない!」
それを聞いて、ネージュが腕を組み、不機嫌そうにしている。ザイデルは悲しそうな表情でフレーテを見た。
「御母上の御言葉をそのまま鵜呑みになさるな。
あの方は少々、思考が偏りすぎる。フレーテ様が御自分で考えることも大事です」
「私は、自分で考えてものを言っているわ。皆みたいに、私を侮辱しないでッ!」
フレーテは怒った様子で叫ぶと、目を見開く。
「侮辱などは致しておりません。では、フレーテ様に御兄弟が居たとして、そのものが魔人の血を引いていたらどう思いますか?」
「そんなのッ、いないんだから分からないわよ!」
その時だった。
金の扉が開き、重い金属の音が洞窟に響く。
中から燕尾服を着た漆黒の髪の男が出て顔を見せた。
「インハルト!」
フレーテは男、インハルトに駆け寄る。その腕を掴んで、ザイデルを指さした。
「あの男が、私に無礼を働いたの」
インハルトはザイデルたちの方を窺って、不可解なものを見るような目をした。
「確か、貴方はザイデルでしたね。あなた方どうしてこのような場所へ?」
「あんたが、インハルト・ライエンなのか!」
「そうです。私に何か御用がおありなのですか」
ミルヒが叫ぶと、インハルトは冷ややかな目で彼女を見た。その冷静沈着な様子に、珍しくミルヒが焦慮している。
「クスリラに魔体を送るのをやめてくれ!」
「私の権限では無理ですね」
「やっぱり聖王様なのかっ。じゃあ王様に会わせてくれ!」
彼女の狂騒たる問いかけに、男は静かに首を振る。
「あなた方のような下賤者を聖王様に会わせる訳にはいきません」
ネージュが堂々とした態度で前に躍り出た。
「インハルトよ。私は魔人帝国から来た魔王の娘、ネージュ・ヴェーメ。私であれば聖王にお目通り願えるか」
「そんなことを言われても。信用などできません」
インハルトが疑念の声で言う。するとグラースがネージュのすぐ左後ろに並んだ。
「僕はネルフ・オルギネス。騎士団に所属しておりました。魔国ではグラースと申します。
ネージュ様の従者としてここへ参りました。ネージュ様は正真正銘の王女様です」
「いやぁ! インハルト、魔人よ!」




