招かれざる者(まねかれざるもの)
いつもの様にはしゃぐヘルツとミッテ、ロッテが笑顔で手を振っている。
「クロイツ、種ここに植えていいのー」
ヘルツの質問にクロイツが手を振り返すと、彼らはしゃがみ込んで種を植え付け始めた。
雲一つない晴天。青々とした空には、飛ぶ鳥もご機嫌で喉をならしている。
こんな日は絶好の農作日和であった。
クロイツは毎日のようにヘルツと庭の畑へ出る。
今日は妹たちも一緒だ。いつもは邪魔ばかりする子達も彼女と一緒なら言うことを聞いてくれる。
あまりにも世間知らずなヘルツを見て、「自分たちの方がお姉さん」とでも思っているのかも知れない。
ヘルツを拾ってから、もう一ヶ月が過ぎようとしていた。
その間も、彼女は見るもの全てが新鮮なようで日々これはなんだあれはなんだと駆け回っていた。
十四、五歳ぐらいだろうか。結構まだ子供っぽいところがあるなと感じる。
クロイツはそこまで考えて鍬を振り下ろした。次々と、土を耕していく。
季節は春。ただ、ルクライヤそれほど季節が変動しない。冬も温暖な方なので、比較的過ごしやすくて良い。
それでも、「やっぱりこの季節はいいなぁ」とクロイツはまた鍬を振り上げた。
この季節になると都会の方では、教会で祭り事があるとかないとか聞く。ルクライヤは田舎街なので、そういった大きい行事は特になかった。
家も一つ一つ離れて点在している。たまに商人が尋ねてくる以外は近所の人とも滅多に顔を合わせない。
それはそれでいて平和なのである。クロイツはそうでもないが、ヘルツを見て驚く人間は多くいるからだ。
人は、己と違うものを嫌悪する。それが魔人となると、見た目の問題も有り尚更そうだ。
外側ばかりに目を向けると本質を見失うと、クロイツは思う。それでなくても儚げで可愛い彼女をどうこうする奴が現れたら、そいつを許すことはできまい。
そうだ。愛する両親を奪った、聖王を許せないように……。そう考えたクロイツの胸はざわつく不快な感情に支配された。
この黒い感情はいつも、平和主義なクロイツの心をかき立てる。
そして、いつかはそれに支配されて自分は悪魔となる。彼はそんなことをいつも感じていた。
「きゃ~!」
妹たちの叫ぶ声で、クロイツはその方へ顔を向けた。ヘルツが必死で手を振っているので、何事かとクロイツは駆け寄る。
「クロイツ、この人達がっ!」
ヘルツの側に、ぐったりとした少女を抱えた金髪の男がいる。彼は苦しそうに喘いで、額に脂汗を流していた。
男が切れ切れに言う。
「すまない。少し休ませて貰えない、だろうか」
クロイツは少女を覆っている上着に血が付着しているのを見て、怪我をしているとすぐに気が付いた。
「兄さん、家へ入りな。怪我してるその娘は俺が運んでやろう」




