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Ⅱ 翡翠色の悪魔(ひすいいろのあくま)

※この章は 少し

長いのでごゆるりと観覧くだされば幸いです!



 少女、ミルヒは本当の意味での家族を知らない。血を分けた親も兄弟姉妹や親族さえいないからだ。



 その体は痩せ細り、日に焼け、傷だらけの肌だった。そばかすだらけの鼻上を掻くのが癖。

 ぼさぼさで整えられていない錆色の髪が、風で靡いている。


 毎日食べ物を探して、瓦礫の街をさまよい歩く。


 幸いなことに、この街は気候が温暖で安定していた。飢えや病で死ぬ人はいたが、それでも外で厳しい冷風にさらされることはない。



 この『クスリラ』という街、真聖王国(スウェア)の最西端にある。


 決して小さい街ではないのだが、先の戦争で破壊され尽くされた領地は全く復興の気配を見せない。


 周囲に住んでいるのは老人や子供ばかりで、他には首都などから逃げ出してきた罪人なども多く潜んでいた。



 だが、ミルヒは一人ぼっちという訳ではなかった。同じ様な境遇の子供たちと小さな小屋の中で暮らしているのだ。


 十六歳の少女にとって子供たちを養うことは似荷が重いことだったが、そんな逆境はもとろもしていない。ミルヒは持ち前の陽気さでなんでも乗り切って見せた。


 そう、彼女は十分に幸福だった。


 貧相な自分にはこの暮らしが十分似合っている。いつもそう思っていた。



 ある日。

 それは、(そら)からやってきた。



 昼下がりの微睡む時間である。長い髪を踊らせながら、何かが瓦礫の山へと落下してきた。


 ぼんやりと窓の外を眺めていたミルヒの目にもしっかりとその姿は映り込んだ。


 スローモーションのようにその翡翠色の瞳と視線()が合うと、轟音とともに瓦礫が吹っ飛び、土煙が上がる。

 ミルヒたちが暮らす小屋から、目と鼻の先の出来事だった。


 その轟音と衝撃に、泣き出すかと思った子供たちは、ただ唖然とその方向を見ていた。暫く呆気にとられていたミルヒは、はっと我に返る。


「みんな、じっとしていろよ。姉ちゃんがちょっくら様子を見てくるから」



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