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未来国家大日本帝国興亡史  作者: PATRION


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第五十五話 アラビア海海戦(3)

幸いにも艦攻はやはり鈍重であった。

瑞鳳は既に爆撃を受け火災を発生させているが、大鳳は未だに被弾していない。

魚雷だけが危惧される点であったが、遠くから進路をいきなり変えることのできない鈍重な雷撃機は、大鳳や秋月の高角砲の前に次々と撃墜されていく。

特に数こそ少ない物の、射撃管制装置を取り換えた秋月の10cm砲の精度は飛躍的に向上しており、大鳳と同じものとなっていた。艦隊外縁部を突破しようとする際に一気に数機を落とし、残った機体は必死に大鳳へと迫ってきた。


「右舷雷撃機!面舵一杯―!」


天楼からの叫びに、操舵手は舵を右に回そうとする、だがそれを静止したのは砲術長であった。


「待ってくれ、噴進砲を使います!右舷対空噴進砲!」


「いいだろう、舵そのまま!」


砲術長の寺田栄大尉が叫び、艦長の菊地もそれに同意し直進を指示する。

アメリカ雷撃隊の運はそこで尽きたといえるだろう、翔鶴型から順次搭載されていた、空母防空用に開発された新型の噴進砲が水平線に向かって火を噴いた。

これらは弾速も相まって機敏に動き回る戦闘機や爆撃機の迎撃には全く向かないが、魚雷を抱え、進路変更の余裕のない雷撃機相手には抜群の効果を見込まれている兵器であった。

その特性故、防巡組にも搭載されなかった代物だが、雷撃の目標となり易く、かつ回避行動が難しい空母には設置が進められていた。

接近してくる雷撃機に向かって、一斉に20連装2基、合計40発のロケットが斉射される。

これらは史実海軍で採用された12cm28連装噴進砲から着想を得た兵器であったが、史実設計を再現したところ、文書の通りほとんど使い物にならないことが判明し、軍技廠が独自改良を行って量産した兵器であった。

ロケット弾頭の直径は同じながら大型化し、推進薬を改良、増加させることで飛翔速度と直進性を向上したものであった。

推進による発熱は製鋼技術の発展により解決できていたが、装填に問題があり連装数は20に落ち着いている。

だがそれでも雷撃機に対して有効であることは事前の訓練からも想定できていた、装填にかかる時間を考えると使いどころは一度の襲撃で一度か二度ほど、ロケット自体が2斉射分しか搭載されていない為いざという時に使用するしかなかった。

それが今であると寺田は考え、それには皆が内心同意を示していた。

突然白い煙を吐きながら接近してくる飛翔体に雷撃機は驚いたであろうが、当然最終調整に入っていながら回避するなんて選択肢は取れない。

投下寸前というところだったTBFの小隊は、突如として眼前に現れた花火に包まれ、一瞬にして姿を消してしまった。

グラマンが剛性を売りにしていたこの機体も無数にばらまかれた焼夷弾には効果もなく、成すすべなく海面へと突っ込んでいく。


「よォーし!」


噴進砲による戦果に艦橋が湧きたつ、だが直進していた分上空から降下してきたSBDによる攻撃に対応できていなかった。

緩降下で単機突っ込んで来たSBDは艦尾方向から縦に侵入すると、機銃を甲板に向かって放ちながら爆弾を投下した。


「伏せてください!」


菊地の叫びに艦橋にいた皆が腰を下げる、あまりにも巨大な甲板はさぞ狙いやすいだろう、投下された1,000ポンド爆弾はしっかりと甲板中央部に命中し、巨大な爆発を起こした。

小沢も見たことないような盛大な爆発、それは格納庫ではなく甲板上で爆弾が炸裂したことを意味していた。

装甲甲板はしっかりと機能し、緩降下で落とされた1,000ポンド爆弾をいともたやすくはじき返してしまっていた。

格納庫ではなく甲板で炸裂した爆弾は夥しい数の破片を艦橋に飛ばし、艦橋のガラスは粉々に粉砕されていた。


「大丈夫ですか?!」


「大丈夫だ、何も問題ない。それより上の彼を運ばせた方が良いだろう。」


菊地に抱えられた小沢はそういうと、上を見上げる。

天楼で対空監視をしていた士官が腕に破片を受け血だらけになっていた、感覚が無いのかその腕はだらんと垂れ下がるだけである、隣にいたものが布で縛るように手当を行っていた。


「おい、大丈夫か!救護室にいって応急処置を受けろ!」


「大丈夫です、頭は働きますから。包帯でなんとか!」


「馬鹿野郎、1人いなくてもなんとかなる!行け!」


菊池が強く言うと士官は黙って頷くと階段を駆け下り、艦橋から下っていく。

それを見送ると小沢は艦橋から甲板を見下ろした。

爆弾が命中したであろう部分は黒く焦げ、甲板表面は少し剥がれているようにも見えた。

小沢は目論見通りの防弾性を見せた大鳳に満足し、被弾したにもかかわらずむしろ微笑みを浮かべていた。


「応急班は急いで甲板の応急処置にあたれ。」


対空砲火は依然として上がり続けていたが、敵の攻撃はもうすでに終了間際であった。

瑞鳳が被弾した今、艦載機を受け入れられるのは大鳳だけである、菊池は応急班に空襲も終わってない今から修理を開始させた。

側舷エレベーターが下がり、数分後に上がってきたかと思えばそこには修復材や道具を積んだ応急班が乗っていた。

応急班は甲板に駆け出すと一斉に剥がれた表面に鉄板をあて、溶接を始める。

なんてことなく行われるこのダメコン作業も格段にレベルが上がっている、空襲が終わり部隊が帰還し始めるだろうかという頃には既に甲板は応急処置が施され何の問題もなく機体の発着艦が出来るところまでになっていた。


「司令、瑞鳳はやはりダメです、機関にまで被害が。セイロンまで撤退させます。本格的な修理はシンガポールまで戻さねば駄目かも知れません。」


澤田の報告に小沢は頷く、あの小型空母であれば数発の被弾で戦線を離脱することは仕方のないことであった。


「わかった。護衛をいくつかつけろ。大鳳だけで残存艦艇を追撃する。第二次攻撃隊は急いで発艦、第一次攻撃隊が帰還次第すぐに受け入れられるように態勢を整えろ。瑞鳳の艦載機も受け入れ、未被弾機はすぐに放て。」


「はっ。」


小沢の命令を受け、大鳳では再び艦載機の発艦準備が初められていた。

先程まで甲板で発艦を待っていた第二次攻撃隊はエレベーターから次々と上げられてくると、即座に暖機運転を始める。

ある程度のところまで準備が終わると、前部エレベーターは動きを止め、暖機が終わった機体から次々と発艦を開始した。

後部エレベーターと側舷エレベーターでは次々と機体が上げられ続けている、この時点でも相当に発艦効率は高いものであったが、それを見ながら小沢は軍技廠にて小耳に挟んだアングルドデッキというものを欲していた。


「やはり発着艦が同時に行えるというのは魅力的だな。」


「というと?」


「いや、軍技廠で小耳に挟んだ技術だ。後部の甲板を斜めにつけるらしい。」


小沢の言葉に澤田は吹き出しそうになる。


「はっ、ええ?斜めに、ですか・・・。すごいですねそれは、考えもしませんでしたが。確かに着艦軸と発艦軸をずらせば安全に発着艦を行えますが。」


「まあ、将来的な話だ。今は被弾してもなんともないことに感謝しつつ、作戦を続けるとしよう。」


小沢は帽子を被りなおすと三度甲板を見下ろす、大鳳にはまだまだ航空用燃料も、弾薬も搭載さている、補給に不足はなかった。

第二次攻撃隊による攻撃が行われれば先の艦隊にはトドメとなるだろうか、だがこの海域には少なくともまだもう一つ以上の護衛空母艦隊が残っている。

幸いまだ隼鷹と飛鷹が残っているが、大鳳の方は搭乗員の疲労を考えると、決して楽な戦いではないだろうと小沢も覚悟をしていた。


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