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未来国家大日本帝国興亡史  作者: PATRION


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第五十四話 アラビア海海戦(2)

攻撃隊が編隊を組み、敵部隊へと向かっている最中、九七艦攻を操縦する三航戦第一次攻撃隊隊長の志摩圭吾大尉の視界に正面からやってくる黒点が映った。


「敵の攻撃隊です。瑞鳳の零戦隊が向かいます。」


右を向くと瑞鳳所属の零戦隊が編隊を離れていくのが見えた。


「艦隊は直掩すら攻撃隊に回している、何としても食い止めるように伝えろ。」


「了解。」


敵の攻撃隊の数は想像以上に多かった、護衛空母と言えば日本でいう軽空母、それこそ瑞鳳程度の物だろうと考えていたが、100機近い敵編隊から鑑みるに全機を一気に投入してきたのだろうということが想像できた。


「小さい空母でこれだけ効率よく発艦作業が出来るのか。カタパルトか?」


「カタパルト?アメリカは空母にカタパルトを装備しているのですか。」


志摩は以前内地にいた時、市原海軍工廠にてカタパルトの試験を行ったことがあった。

日本海軍は空母搭載用カタパルトを実現するべく、現在軍技廠で試験を行っていたが、それのテストパイロットとして招聘されていたのが志摩であった。

カタパルトが実用化されれば、艦上機の設計にも相当な余裕が生まれ性能向上に寄与出来る、そしてなによりも将来超重量攻撃機となる流星は、エンジンが強化されても予定されている最大兵器搭載量では滑走距離が足らないことが明白であったため、海軍にとってカタパルトの実用化は必須であった。

問題は流星レベルの艦載機を打ち出すパワーを持つカタパルトの実用化に手間取っていることであるが、アメリカ軍には当然それほどの物は必要なく、空母に次々とカタパルトを搭載しているため、発艦効率では現在の日本軍はアメリカ軍に引けを取っている。

これは技術的分野においてこの日本がアメリカに後れを取っている数少ないジャンルでもあった。


「知らん、ただカタパルトがあればチビ空母でも一気にこれだけ発艦させることが出来ることの納得もいく。瑞鳳ではこんなことは行ってなかっただろ。大鳳ですら一度に全機発艦させることは出来ないからな。」


話ながら右を眺め続ける、やがて敵編隊の護衛機も分離し、両編隊の中間程の位置で戦闘機同士の空戦が発生した。

F4F相手の零戦隊は当然優勢であった、志摩は航空隊の練度に自信が無かったが、それは相手も同じようで主力となる精鋭がこちらに配属されているわけではなさそうであった。


「部隊増速、今のうちに行かせてもらおう。敵はすぐそこだぞ。」


志摩は左手を伸ばし、スロットルを上げる。

徐々に速度が上がり、戦闘空域はどんどんと後方に離れていった。


その後20分ほどして日本軍攻撃隊の視界にアメリカ軍任務部隊が映り込む。

志摩は操縦桿奥に倒し、機体は高度を下げ始めた。


「全機突撃、各小隊の判断で攻撃。」


扉を少し開け、発煙弾を打ち出す。雷撃隊は一斉に降下し、艦爆隊は速度を上げる。

急降下爆撃を先に行い、回避運動を強要させたところに雷撃を行うという手法は、開戦当初から南雲機動部隊で行われ、先のミッドウェー航空隊でも基地航空隊が大和に対してタイミングよく実現したものであったが、現在の日本海軍航空隊では正式な攻撃法として教育に取り込まれていた。


高度がどんどん下がり、海面が近づいてきたところで、上空で銃声が響き始めた。

上を見ると、艦爆隊に襲い掛かるアメリカ軍の直掩と、それに対して迎撃を行う大鳳の零戦隊による空戦が行われていた。九九艦爆が落とされ、攻撃したF4Fを零戦が後ろから更に落とす、そんな空戦により優勢に進んだ空戦も、九九艦爆から数機の被撃墜機を出してしまっている。

だがそんなことは覚悟の上であった、自分たちは南雲機動部隊ではない、練度も低い、それでも現在世界最強の日本海軍のパイロットとしての誇りを持って皆が戦っていた。


F4Fが離脱を始める、それと同時に艦隊では5インチ砲らしきものから続々と発砲炎が飛び出した。


「来るぞ!纏まりすぎるな!」


命令と同時に後続の艦攻は徐々に左右に分離していく、丁度そのころに後方で5インチ砲が炸裂し始めた。

と言っても数は少ない、眼前の艦隊は、正規空母を擁する艦隊とはまったく対空砲の数も違い、鈍足な攻撃隊でも容易く突破できそうであった。

艦爆組も対して対空砲には巻き込まれておらず、艦隊上空に達した機体から続々と急降下を開始していた。


「俺らも行くぞ!」


「敵空母回避開始しました、現在速力18ノット。」


「やつら鈍足だ、回避させなくても簡単にやれちまうか?」


そう言って志摩は降下で加速した機体を少し減速させるためにスロットルを絞る。

魚雷は優秀だが、投下速度が速すぎると信管の誤作動やジャイロスコープの故障を招く、これだけは丁寧にやらねばならない作業であった。

生憎敵の対空砲火は薄く、速度を落とすことに抵抗もさして感じなかった。


駆逐艦の横を海面ぎりぎりの高度ですり抜けたころに、急降下爆撃隊が投下した爆弾が次々と着弾していった。

針路調整を行い始めたタイミングで狙っていた空母で突如大規模な爆発が起こる。

たった一発の500kg爆弾だろうと、強力な炸薬を用いていれば当然被害も大きい、護衛空母であれば尚更の事であろう。


「いいぞ、いいぞ。」


「速力14ノット。」


「よし、沈めるぞ!」


目標は取舵を取っている、艦首から右腹を晒す形で旋回しており、右舷に配置された対空砲は気が付いたのか一斉にこちらに機銃を向けて発射してきた。

だがそれではもう遅かった、数も少ない機銃では当然落とせるわけでもなく、志摩は最高のタイミングで魚雷を投下する。

後続の三機も同じように連続して投下する、機首を少し上げ、甲板の上空すれすれを通り抜けたときには甲板に穿たれた大きな穴と、そこから燃え上がる大規模な火災が見えた。


機体を旋回させ離脱しようとしたときに、投下した魚雷は無慈悲にも敵の護衛空母へと到達する。

右舷に立ち上がった三本の水柱がこの護衛空母の運命を語っていた、とんでもない勢いで浸水していたのだろう、取舵で右側に傾いていた船体はそのままの勢いで転覆し、一瞬のうちに海中へと没した。



第一次攻撃隊がアメリカ軍任務部隊を攻撃していた時、三航戦もまたアメリカ軍の航空隊の攻撃にあっていた。

瑞鳳の戦闘機隊だけでは到底防ぎきれるわけもなく、80機以上の攻撃隊が襲来している。


「敵機襲来、1時。」


電探士からの報告に小沢らは頷く。

攻撃隊から艦隊に向かう敵攻撃隊とすれ違ったという報告を受けた時点で第二次攻撃隊の発艦作業は中止され、格納庫へと降ろされていた。


「艦隊変針、取舵80。北上も大井も、向こうに付けてしまった。こちらの対空火力は本艦だけだぞ、気合い入れろ。」


小沢は防空の要であった北上と大井を隼鷹、飛鷹の二航戦へとつけていた。

だが大鳳は新型の空母であり、その対空火力は慶鳳、寧鳳と同等、それは護衛艦に守ってもらう存在とは言えないレベルのものであった。


攻撃隊がやってくる前に艦隊は変針を終え、右舷を敵に向けている。

やがて射程内に入ったものから続々と対空射撃が行われ始める、秋月型と大鳳に搭載された10cm高角砲が火を噴いた。

小型電探に紐づけられた射撃管制装置は時限信管の自動調定も行う優れものであった、電探から探知した敵までの距離を瞬時に表示し、射撃管制装置の操作員はそれぞれ紐づけられた対空砲を電動で動かす。

無駄のない照準を行った高角砲は、初弾から敵の編隊を包むように炸裂しはじめた。

遠目から見ても、何機かの爆撃機が炎上しながら墜落してくのが見えた。

だがそれでもこれだけの数を相手にするには到底無理がある、やがて攻撃隊は艦隊の直上にまで到達し、急降下を仕掛けてきた。


「面舵一杯!」


天楼からの声に急速に船体は左へと傾いていく、新型の舵はこれほどの巨艦ですら強引に曲げていく。

最初のいくつかの爆弾を上手く避けることに成功し、機銃の射撃音も加わり煩くなり始めたころ、後方で爆発音が響いた。

小沢は舌打ちをする、それが瑞鳳のものであると理解しているからであった。


大鳳に迫る機体は、圧倒的な火力の前に少なかった、攻撃隊は弾幕の薄い瑞鳳を狙ったのであろう。

数発の爆弾であってもこの大鳳と違い、瑞鳳は使い物にならない。

まだまだ攻撃隊の数は多い、やがて大鳳にも急降下爆撃隊が群がり始め、水平線に目を向ければ艦攻が見えた。


「対空砲は全て雷撃機に向けろ!なんとしても雷撃だけは阻止するんだ、爆撃機は良い!」


「了解!」


小沢の号令に合わせて対空砲は一斉に仰角を下げ始める、今の電探技術では海面高度を飛ぶ雷撃機に対する精度は上空を狙うものに比べて低いが、それでもこの大鳳にとって致命的なのは爆撃機ではなく雷撃機なのは間違いなかった。


「二航戦は?」


「現在第一次攻撃隊が丁度我々の攻撃隊と入れ違えぐらいの時間で到達します。現在敵機動部隊の空母は二隻が沈み、一隻は火災を起こしているとのことです。攻撃未了機はいない為、この後は二航戦次第でしょう。」


澤田の言葉に小沢は頷く、護衛空母相手に正規空母三隻を擁する部隊が負けることなど許されることではない、それだけに今回は緊張も強かった。

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更新お疲れ様です。 一隻拿捕したいところですね!!>カタパルト 次回も楽しみにしています。
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