episode.11
よろしくお願いします
ハロウィン当日。私、東堂颯はハリ〇タのローブを羽織り、自宅の鏡の前に立っていた。
「変なとこないよねー?」
全身を写す大きさの鏡の前で回転し、どこかダサいところがないかを確かめる。
「よしっ、大丈夫」
「颯ー?もう車出すけどいいのー?」
「大丈夫ー!お願い!」
さすがに仮装して市電には乗れないから、と母に泣きついて今日は学校に送ってもらえることになったので、出発時間はいつもより少しゆっくりだ。
「じゃあ、いってきまーす」
「はーい、気をつけてね。帰りはどうするの?」
「ローブ脱いで帰るから大丈夫だよ、ありがと」
車から降りて母に手を振りながら、校門に向かって歩く。登校するみんなの姿を見ても、そんなに奇抜な格好をする人は見えない。
学校に着いてから着替えるのかな?と思いながら校舎に入り、教室へと向かう。
「おはよー」
…
……
…………
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トンネルを抜けると、そこは雪国であった。
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…………
……
…
「颯ー?」
「ハッ」
トントン、と肩を紬に叩かれて意識を戻す。いかん、ぼーっとしてた。
そんなことを思いながら、後ろを振り返った。
「おはよー」
「おはよー。お、おそろいだね!」
「そりゃそうでしょうが!一緒にハリ〇タの仮装しようねって決めたんだから!」
「紬ちゃんナイスツッコミ〜」
いつも通りの(?)掛け合いをしている紬は、私と同じくハリ〇タのスリザ〇ンのローブを羽織っている。ローブの中がズボンの私と違って、彼女は黒いワンピースのようだが。
「1回荷物置いてくるわ」
「おっけー」
一言断ってから自席に行き、リュックとお弁当の入った袋を置く。それからまた、紬の元へと戻った。
「紬なんかめっちゃ魔法学生みたいな感じする笑笑。」
「まあ一応そんな感じを意識してますし?てか、そんなこと言ったら颯もでしょ?」
紬の言葉に私も改めて自分の身体を見下ろす。中に何を着るのかは個人の自由に任せたため、私はチェックのズボンにシャツ姿だ。自分の中では、かなり学生っぽさを出せたと思っている。
「でっしょ〜。いいズボンないか結構探したんだよね」
「めっちゃ魔法学生っぽいわ、颯も。あ、ねえそうだ、写真撮ろー」
「撮るとる!!」
そう言って私もズボンのポケットに手を伸ばした。が、
「………………………………………」
「どうしたの、颯?」
左右のズボンを何度も触る私に、紬が不審げに声をかけてきた。え、まって、そんなことある…………?
「どうしよう、スマホ忘れたかも」
「……………は?」
「どのポケットにも見つからない、、」
「え、いや今日に限ってそんなことある?」
「え待ってどうしよう、どこに置いてきたっけ」
「1回落ち着いて、とりあえずジャンパーのポッケとか見てみよう?」
紬の提案に頷き、自分の席に戻り、手荷物を漁る。ジャンパーだけでなくリュックも手当り次第見てみたけど、どこにも見つからなかった。
「どうしよう……」
「おはよー。あれ、どうしたの?」
頭を抱えているところに洸太と一織が登場した。2人は落ち込んでいる私と、傍にたっている紬の姿に不思議そうに首を傾げた。
「颯がスマホ家に忘れたかもーって騒いでてさー。今探してるんよね」
「え、まじで?!それはキツイ」
「あー、電話とかしてみようか?」
「ありがたいけど、音消してるからわかんないと思う…」
「うーん、そっか…」
一織からの提案を申し訳なく思いつつも断って、もう一度リュックの中を漁り続ける。メインポケット、サイドポケット、全てを探したけどなかなか見つからない。これはやっぱり家に置いてきたか…?
と、そこで洸太が「あのさ、」と声をかけてきた。
「もしかしてなんだけど、お弁当の袋とかに入ってない?」
「え?」
「もしかしたら上のポッケのとことかに入ってたりするかもよ?」
「待ってね、探してみるーーーーーーーーーーーーーーーあった!!!!」
「颯ちゃんどこに入れてるの馬鹿ーー!!!」
「ごめんってー!!てか洸太ナイスすぎるありがと!」
「全然よー。見つかって良かったね」
「ねー、ほんと。さすが名探偵洸太!」
「なんかコ○ンと似てる笑笑」
「確かに笑笑笑」
「違うからね??」
「見た目は大人!中身は子供!ってか笑笑」
「本来の設定と逆笑笑」
「だから違うってばー!!」
スマホが見つかったと思ったら直ぐにとっ散らかる会話を整理すべく、話の転換を図る。
「せっかく見つかったし写真撮ろ!」
「全くこうなったのは誰のせいだと…」
「まあまあ紬さんも入って入って」
「洸太達も入った?ーーじゃあ撮るよ、はいチーズ!」
カシャッ
「ありがとねー、後で送っとくわ」
手早く3人それぞれに写真を送り、改めて洸太達の服装を見る。
「それにしても…一織の格好はデ○ズニーのキャラの着ぐるみってのはわかるけど…」
「洸太のやつはどこで買った???」
私と紬の真っ当な(?)疑問に、洸太は写真を撮るためにつけていた被り物を脱いでみせた。
「これ、ド○キーで買ったんだよね〜」
「確かにこういうの売ってるのドン○ーくらいしかないか笑笑」
「色んなとこで売ってたらびっくりだな笑笑」
「ちなみに言うとこれクラスでもう1人持ってる人いるけどね?」
「「めっちゃ人気じゃん!!」」
思わず声を揃えて叫んだ私と紬に、2人は大笑いした。
「前日に洸太からこれやるって聞いた時私もびっくりしたもん笑」
「事前に聞いてたんかい笑笑」
「そっちの方が面白いわ!」
そのままわちゃわちゃ喋っていると、るいやあっちゃんも傍によってきた。
「おー!あっちゃんレイ○ンクローじゃん!」
「ハリ○タで揃えたみたい笑笑」
「って、るいももしや……」
「ハッ○ルパフだよーん」
そう言うとるいは、その場でくるりと一回転してみせた。ローブの下に合わせたワンピースの裾がひらりと舞う。
「結構揃ったね〜」
「4分の3かな?あともうひとり居れば揃えられるのに」
「メイン的なグリフ○ンドールがいないとは笑笑」
「いちばん有名って言ってもいい奴なのに笑笑」
そうこう言っているとーーー
「そうー!!!」
入口の方から私の名前を呼ぶ声が聞こえた。なんだろう、と思いながら振り返ると………
グリフ○ンドールがいた。
「「「「グリフ○ンドール!!!」」」」
思わず揃った私たちの言葉に少し首を傾げた彼女達は、私たちの仮装を見て目を輝かせた。
「3つの寮揃ってんじゃん!写真撮ろ!!」
そう言って、102の大宮陽乃と海藤茉里奈が教室に入ってきた。2人ともグリフ○ンドールのローブを纏っている。
肩までのボブをきっちりとポニテにし、ローブの間から鍛えられた脚を覗かせた陽乃は、陸上部所属の女の子だ。グラウンド横のテニスコートが縄張りの女テニは、土日の部活練習の休み時間に彼女と知り合い、今ではよく休み時間にお互いの教室を行き来するくらいの仲になった。そんな彼女は陸上のエースであり、短距離で県体入賞するレベルのアスリートである。
彼女に続いて入ってきた茉里奈は、私と同じく女テニだ。腰まであるサラサラの黒髪を低い位置でお団子にしている。ーーとはいえ、そこまで関わりは無いのだが。きっと陽乃の付き添いかな?
「ごめん、撮ってもらっていいー?」
はい、と陽乃のスマホを預けられた一織は、遺憾無く自身の人見知りを発揮してオドオドとしている。そっかそこはまだ喋ったこと無かったか、と少し苦笑いして一織に声をかけた。
「ごめん一織、私のスマホでもお願いしていい?」
そう言ってからみんなの元に向かい、魔法使いっぽい(?)ポーズをとった。
「じゃ、じゃあとりまーす。はいっチーズ!」
「「「「「いえーい!!」」」」」
「ありがと〜、そうだ次みんなで撮ろ!!」
撮ろとろー!とみんなが動き出し、みんなが集まれるスペースを作る。かなり大掛かりにやっちゃってるけど、周りの人に迷惑かかってないかな?ーーー周りも盛り上がってるし、大丈夫そうだ。
スマホを机の上に置き筆箱に立てかけ、タイマーを起動する。みんないいー?と聞く……までもなく、準備は出来てそうだ。
「ボタン押したら3秒で撮るよ!じゃあ行きます!」
ポチリ、とボタンを押しみんなの列に加わる。シャッター音がなるまでの合間をポーズを固定したまま待ってるとーーー
カカカカカカカカシャ!
バーストで撮られたらしい音がした。
まず先にスマホに駆け寄り、ちゃんと撮れてるか確認する。
「おっけ!ちゃんと撮れてた!」
ありがとー、と声掛けを受け、後で送っておくねと返す。
「まって、もうすぐチャイムなるじゃん!」
慌てた陽乃の声を耳にし、改めて時計を見ると始鐘まで2分ほどとなっていた。
「やばっ、戻んなきゃ!」
「また昼休みとかに来るわ、じゃね!」
慌ただしく教室から出ていった2人を見送って、写真を撮るために作ったスペースの状態復元に務める。
それを終えた頃に教室に入ってきた担任を見て、みんなでわらわらと自席に着いた。
「きりーつ、きをつけーーー」
こうして、初めての南高ハロウィンが始まった。
ありがとうございました
多分そんなにハロウィンの話は続かない………???




