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ローザタニア王国物語 〜A FAIRY TALE〜  作者: 月城 美伶
jardin secret ~秘密の花園~

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第4章 Jardin secret ~秘密の花園~ 第二十話

 ポツリポツリと降り出した雨は次第に雨脚が強くなっていき、厚い雲が空を覆い何だか重苦しい空気を纏い地面に降り注ぎはじめました。そんな最中、ナルキッスの要人たちとの会談を終えて一息つこうとウィリアム様とヴィンセントは少し湿って重苦しい空気の中を宿泊している別館へと戻って来られました。


「…実のあるようでない会談でしたね」

「議題に則って話していたのは最初の10分だけだったからな」

「後の30分はほぼどうでも良いしょうもない話でしたね…。基本的にくだらない無駄な話ばかり聞かされて頭が拒絶反応示しておりましたよ」

「私も途中から話を聞くことを止めて適当に流していたよ」

「意外と陛下そう言うの上手ですもんね」

「まぁこれも一つの社交術だな」


部屋の中央に鎮座している硬めのソファーにドカッとウィリアム様は座り込み、少し襟元を緩め悪戯っ子のようにヴィンセントに笑いかけます。同じように制服の襟元のボタンを一つ外してヴィンセントもため息交じりにソファーに座りフッとウィリアム様に笑い返しました。


「そうですね。さて…次は経済担当大臣とのランチ会談ですね。30分後に応接間にてだそうです」

「30分後…微妙な時間だな」

「そうですね。どうせなら詰めて一気に終わらせてしまいたかったですね」

「まぁ先方の都合もあるだろうから仕方ないな」

「それが終われば最後にジョージ陛下とお茶して終わりです。これでやっと帰れますね」

「3日程度の滞在なのにとても長く感じるなぁ」

「そうですね」

「シャルロットももうすぐマリー皇后との孤児院の慰問が終わって帰ってくるころか?」

「えぇ、ランチ会談で合流になります」

「そうか。上手くやっているといいが…」

「姫様はコミュ力はあるから大丈夫でしょう」

「そう言えばお前たち仲直りはしたのか?」

「…元から別に喧嘩なんてしてませんよ。姫様が勝手に拗ねているだけですから」

「そうか?お前の方が拗ねているように見えるが?」

「は?」


いきなりのウィリアム様からの質問にヴィンセントは思いがけず一瞬間が開いてしましたが、すぐに冷静さを取戻しいつも通りの冷たいトーンで何事もないかのように切り返しました。そんな様子のヴィンセントをおや?と言った表情でウィリアム様は見つめて顔を覗き込むと、当のヴィンセントは眉間に皺を思いっきり寄せ、明らかに嫌そうな態度を全開しております。


「お前の方が意固地になってるんじゃないのか?まぁ何が原因か分からないが、お前の方が大人なんだから(こじ)らせる前に話し合って譲歩して仲直りしておけよ?」

「や、だから別に喧嘩なんて…」

「意外とお前も頑固だからな。全く…似たもの同志だよお前たち」

「だから陛下…」

「表面上は上手く取り繕って公務をこなしているが、なんやかんや言ってシャルもお前と喧嘩して全然会話してないからか少し寂しそうだしなぁ」

「…」

「シャルも頑固で意地っ張りだからなぁ」

「…そうやって甘やかす」

「仕方ないだろう。たった一人のめちゃくちゃ可愛い可愛い妹なんだから」

「可愛いって二回言いましたね…。ホント、シスコンですよね。…まぁ後で姫様と少し話しますよ」

「あぁ。お前たちのくだらない小競り合いがないとつまらないよ」

「…ったく。何度も申しあげておりますが私は姫様の世話係ではないんですよ。ローザタニアの国王補佐長官兼執務官長なんですけど」

「まぁ同じ様なもんだろう」

「兄妹揃って同じような答えを仰いますね…」

「まぁ兄妹だから仕方ないだろう」

「ったく…昔から貴方方兄妹は本当に仕方ないですね」

「お前はそんな私たちが好きなんだろ?」

「…国王陛下じゃなければぶっ飛ばしてますよ」

「お前とは幼馴染でもあり大切な親友でもあり、そして一番信頼している相棒だ。私もお前が大好きだよ」


眉間に思いっきり皺を寄せてジロっとウィリアム様を見つめ、聞こえるように溜息をつきながらヴィンセントはソファーのクッションを手に取りウィリアム様に投げつけます。あははと笑いながらウィリアム様はクッションを受け取りフッと微笑みながら穏やかな微笑みを返しました。


「え、いきなり愛の告白されても困ります。お気持ちは嬉しいですが、残念ながら私はマシュマロ巨乳のグラマラス美女じゃないと無理なんで」

「私だって知的でスレンダーな女性が好きだから安心しろ」

「女性の好みは一致しませんね」

「そうだな。でもまぁ競合しなくて良いじゃないか」

「確かに遊ぶ時に被らなくていいのはラッキーですね」


年相応の若者の話題が可笑しかったのか、プッと吹きだして二人して屈託のない笑顔でひとしきり笑い合いました。

一国の国王とその側近とは言え、まだ10代の青年である若い二人はこのような少し砕けた話が好きなようで時おりシャルロット様のいらっしゃらないところではこのような話に花を咲かせたりしております。

しかしすぐに脱線から帰ろうとウィリアム様は襟元の乱れを正して、んんっと喉を正します。


「そう言えばマリアは?」

「マリアでしたら今日はフランツ皇太子殿下の傍にぴったりとくっついております」

「そうか。…こういう時に三人でゆっくりとしたいものだがな」

「まぁ昔みたいに何も考えずにダラダラと酒でも飲みたいものですね」

「あぁ。もう少し自由な時間が欲しいものだ」

「…感傷に浸られているところ大変申し訳ありませんが会談までにあと15分しかございませんので、こちらの資料に目を通してもらえますか?」

「いきなり仕事モードになるな」

「休憩時間と言えど次の仕事のことを考えないと後々無駄が増えますので」

「…執務秘書官(バルトやグレブ)たちに同情するよ」

「アイツらはすぐサボろうとするので締め詰めないと仕事しないんです」

「…お前が女王様と呼ばれるところはそこだよ…」

「私の性別男なんですけど」

「うん…そうだな」


ヴィンセントの頑なな氷のような態度に観念されたのか、ウィリアム様は目の前に積まれた書類の束をパラパラと捲って資料に目を通し始めました。腕を組みながらヴィンセントはツンッとした態度のまま横から同じく資料を一緒に見ております。

お二人が真剣に資料を読んで少しお互いの意見等言い合っているその時、部屋のドアを素早くノックする音が響き渡りました。


「陛下、ヴィンセント様…休憩中に申し訳ございません、セシルです。ジョージ国王陛下が今すぐ会談室の方へ来てほしいとのご伝言です」

「あと10分ほどでランチ会談だというのに?…分かった、すぐ行こう」


いささか疑問に思われている様子のウィリアム様はヴィンセントと顔を見合わせると、すぐに立ち上がり部屋のドアを開けました。走り回っていたのか汗だくのセシルが静かにお二人を見送ろうとスッとすぐ横に控えます。ご苦労、と小さく声を掛けてウィリアム様はヴィンセントを伴って少し早足で会談室へと向かって行かれたのでした。


・・・・・・・・


 「再びすまんのぉウィリアム…。まぁ掛けなさい」

「いえ、陛下からお声が掛かればすぐにでも馳せ参じます」


頭を抱えながらふぅ…と大きな溜息をついているジョージ陛下は、丸々としたお腹の横についているこれまたむちっとした丸い手でウィリアム様に着席を促しました。ジョージ陛下の後ろに控えていたマリアは、ウィリアム様が着席されヴィンセントもすぐ後ろで待機されたのを確認すると、ドアをもう一度開けて廊下に誰も居ないことを確認すると素早くドアを閉めてその場に待機しておりました。


「病院から連絡があって、エマ嬢は一命を取り留めた様じゃ。父親のハミルトン子爵も安堵しとったわい」

「そうですか…!それは何よりです」

「うむ、じゃがまだ喋られるような状態ではないようでのぉ。一命を取り留めたからと言ってヴィンセントやマリアは一応まだ重要参考人扱いのままなのは変わらん」

「はぁ…」

「こんな話はランチ会談の前にサラッと話せばよいだけじゃが。お主らを呼んだのはほかでもない…例のあの男、カルロ伯爵の件じゃ」

「その後何か進展があったのですか?」


ウィリアム様は少し身を前に乗り出すかのようなしぐさをされると、ジョージ陛下は待て待て…と言わんばかりに手でストップのジェスチャーをされてウィリアム様を落ち着かせようとされます。


「まぁ落ち着くのじゃ。まず…ビストリツァ周辺のホテルの宿泊名簿を洗いざらい調べたのじゃがそのカルロ伯爵の名前は見当たらんっかった。しかし…街外れの古い屋敷にそのカルロ伯爵に似た男性が滞在しているという目撃情報があったのじゃ」

「…なんと」

「しかし先程警察がその屋敷を訪ねるともうそこはもぬけの殻だったんじゃ」

「…事前に察知して逃げられた…と言うことでしょうか」

「そうかも知れんのぉ。誰かがこの伯爵と繋がっていて情報を流したとかも考えられる。ヴィンセントよ、昨晩、お主とそのカルロ伯爵が言い争っているのを見たという者がおってのぉ…」

「えっ!」

「…まさか陛下はヴィンセントを疑っておりますか!?」


ウィリアム様、マリアは同時にユニゾンするように驚きの声をあげました。そしてチラッとヴィンセントの方を見ると、顔色一つ変えずにジッと前を見据えたままの表情で立っておりました。


「まさか。たいして親しくもない人間と仲間になど…冗談にもほどがあります、ジョージ陛下」

「ふむ、ワシかてお主がそんなことするなどもちろん思ってもおらぬ!お主がつるむのは基本的にここに居るウィリアムとマリアくらいじゃろう」


フンッと溜息のように大きく息を吐き、ジョージ陛下はソファーに座り直してついでにむちっとした腕を組み直します。そして目を瞑り、片目でじろっとヴィンセントを見るとニヤッと笑い出しました。


「まぁヴィンセントとそのカルロ伯爵がつるんでいるのではないかという話には無理があるじゃろうてのぉ。おおかたヴィンセント(お主)に恨みを抱いているやつとかが適当に言ったんじゃろう」

「まぁそう言うの慣れておりますので大丈夫です」

19(その歳)で慣れるようなもんではなかろうて…」


それが何かと言わんばかりにヴィンセントは顔色一つ変えずに淡々とジョージ陛下相手に答え続けました。ウィリアム様とマリアはそんな二人のやり取りに多少冷や冷やしながらも見守っております。


「話が脱線したわい…。そのカルロ伯爵の件なんじゃがな…実は更なる疑惑が降って来たんじゃ」

「…え?」

「ウィリアムよ、お主イリス・ブーリンと言う女性を覚えておるか?」

「イリス…?確か先日のグララスで開催されたパーティーで少し一緒に踊ったのを覚えております」

「うむ…。実はな、そのイリス嬢なんじゃが…一昨日森の中で見つかったんじゃよ」

「え?どういうことですか…?」

「詳しい話は…彼に説明してもらおう。入って来てくれ!」


ジョージ陛下が短い腕をスッと上げると奥のドアが開き、立派な口ひげをピンッと上向きに整えている警察の制服に身を包み、胸にたくさんの勲章を飾り光らせたいかにも堅物のお役人といった雰囲気の大柄の中年の男性がピシッと敬礼をして出てきました。


「こちらはグララスの警察署長のワトソンじゃ」

「警察署長殿…?」

「お初にお目に掛かりますウィリアム陛下…。堅苦しいご挨拶はこの辺にいたしまして、早急に説明をさせていただく無礼をお許しください」

「…いったい…」


ワトソン署長はいかにも公務員…と言った具合にサッと一礼すると、少し前に歩み出て、口ひげを少し触って整えるとんんっと喉も整えて話しはじめだしました。

ワトソン署長のオーデコロンでしょうか、いかにも中年の男性が好みそうな少し渋い何とも言えない濃厚な香りがワトソン署長が動くたびに部屋中に振りまかれました。

ジョージ陛下、ウィリアム様、ヴィンセントの三人はあまりその香りが好みではなかったのか、顔をしかめております。


「グララスで一か月ほど前にありましたジョージ陛下主催のパーティーでウィリアム陛下と踊られた、イリス・ブーリンと言う女性ですが…一昨日森の中で瀕死の状態で見つかったのです」

「何だって!?」

「実はイリス嬢は約一か月前から行方不明となっておりまして…ご家族より捜索願が出されておりました。それで一昨日の早朝のことですが、新聞配達員がモンテフェルロト伯爵家の敷地にあります森の近くにある川の橋のたもとで、数名の女性の遺体と共にイリス嬢は意識不明の状態で発見されました。幸いにも一命は取り留めておりましたが…彼女には暴行された痕があり、また大量に血液が抜き取られた状態で予断許さぬ状態であります」


ワトソン署長の口から『カルロ伯爵』というお名前が出てきて、ウィリアム様とヴィンセントは顔が硬直いたしました。その様子をワトソン署長は見逃さず、鋭い視線をお二人に投げかけました。


「…血液が抜き取られた…」

「えぇ、首筋に何やら噛まれたような傷口がありそこから大量の血液が抜き取られたようです。一緒に放置されていた他の遺体からも同じような痕跡がありました。ここ最近グララスで起こっている、通称『吸血鬼事件』と全く同じ手口であり我々はイリス嬢もその事件の被害者だと踏んでおります」

「…」

「…誠に恐縮ではありますが、もちろん形式的なもので…お気を悪くされましたら申し訳ございません。…陛下はカルロ・ジャン・モンテフェルロト伯爵という男をご存知だとお聞きいたしました」

「えぇ…ですが少し話をした程度です」


猛禽類のように鋭い視線のままワトソン署長はお二人の様子をジッと見つめ続けております。ウィリアム様は驚いてはおりましたが、冷静にをワトソン署長からの尋問に受けて立っております。


「…イリス嬢はどうやらそのカルロ伯爵と一晩共にしたようでして…で、そのカルロ伯爵に惚れ込みなんとかお近づきになりたいと画策していた様なんです。街で聞き込みをした際に彼女の知り合いがイリスはカルロ伯爵の情報を探っていた、と証言しております。行方不明になったその日も、夜遅い時間に彼女の乗った馬車がカルロ伯爵の屋敷に向かって行ったのを見たという目撃情報がありました」

「イリスに会った最後の人が…カルロ伯爵だと?」

「おそらく。事情を聴きたくとも最近よく伯爵はグララス以外の地を転々とされており、当日も屋敷にいらっしゃたかは不明なんです。最近外国やここビストリツァにいらっしゃったという証言もございます」

「えぇ…2週間前ほどでしょうか、ローザタニアに滞在されていたようです。ウチのばあやが…妹のシャルロット宛ての贈り物をカルロ伯爵らしき人物から受け取っております」

「まるで霧のように色々な場所を転々とされて足取りがつかみにくいですなぁ…。ジョージ陛下とビストリツァの署長からお伺いいたしましたが、昨晩も何やらこちらで事件があってその疑惑も掛けられているとか…」


口ひげを触るのが癖なのか、ワトソン署長はずっと口ひげを弄りながらうーんと困惑した表情で宙を仰ぎます。その横でジョージ陛下も何か考えていらっしゃるのか、目をつむったままのまま静かに話を聞いておりました。


「署長殿…カルロ伯爵がその…犯人だと?」

「断定は出来ませんが、容疑者の候補ではあります。しかしモンテフェルロト伯爵家…貴族の方なので…どう捜査して良いのか分からず困惑しております…」

「そうですか…」

「とりあえずイリス嬢に少しでも関与された人物から洗いざらい情報を集めている状況です。まぁ彼女はとても奔放な女性だったようで…その…正直いつ危ない目になってもおかしくないような激しくって危ない男性関係がいくつもあったようでして…容疑者候補はたくさんいるのですがねぇ」

「近頃社交界では自由恋愛が流行っておりますからねぇ。おおかた彼女もそう言うスタンスなんでしょう」

「…みたいですなぁ」

「ウィリアム、ヴィンセント…お主らも気を付けるんじゃぞ」

「肝に銘じておきます」


ピシッとジョージ陛下がウィリアム様とヴィンセントに注意するかのように語尾強く告げると、お二人はスッと頭を下げました。ワトソン署長はあはは…と少し乾いた笑いを漏らしておりましたが、ヴィンセントが鋭い氷のような瞳で横目に睨むかのように見つめると、ヤバいと思われたのか冷や汗をハンカチで拭い平静を保とうとしております。


「して…なぜワトソン殿はこちらに…?」

「…実は1時間ほど前ですが、グララス近くの検問所でグララスの屋敷に帰る途中であろう伯爵ご本人とその従者である少年を確保いたしました」

「見つかったのか!」

「はい。任意ではありますが本人に事情聴取を行う予定なんですが―――…」


ワトソン署長は何か言いにくいことでもあるようなのか、少しソワソワとしだしてお二人の顔色を伺うようなそぶりをしております。そんな様子に若干イラっとしたのか、ヴィンセントは冷たくワトソン署長を見つめ、なんですが?と語尾を取って問いかけました。


「…カルロ伯爵が事情聴取に応じる条件として、ウィリアム陛下とヴィンセント様と少し話がしたいと申しておりまして…」

「…一貴族が他国ではありますが国王陛下を交渉のダシに使うとは…ちょっと頭が高すぎませんか?」


ゴゴゴゴゴ…と地鳴りがするくらいの音を立てるがごとく、ヴィンセントは怒りを抑えながらも青筋を立ててハッと嘲笑し、ワトソン署長自身は悪くはないのにつつ署長に対して毒を吐くかのように言葉を投げ捨てます。ワトソン署長はそんなヴィンセントの毒と言うか八つ当たりを全身に浴びてヒィッと縮こまりガタガタと震えておりました。


「た…確かにヴィンセント様の仰る通りなんですがっ!この事件はナルキッスを揺るがす大事件でしてっ!!早急な解決が望まれておりますっ!!!そのためにも是非っ!ウィリアム陛下とヴィンセント様にもご協力をお願いしたくっ!!」

「…それでグララスの警察署長直々にこちらに来られた訳か…」

「はいぃっ!!」

「そう言うことじゃ。回りくどい説明で悪かったのぉ」


ふぅ…とウィリアム様は溜息をつかれると、天を仰ぐようにポスッとソファーの背もたれに寄りかかりました。ジョージ陛下も同じく大きく溜息をつかれるとウィリアム様とヴィンセントの二人を交互に見つめ、短くてプクッとした腕を組んでソファーに座り直されました。


「いえ…。それで…カルロ伯爵は今どちらに…?」

「カルロ伯爵ご本人の屋敷です。あくまでもまだ重要参考人での事情聴取なので…」

「ウィリアム、ヴィンセント…ワシからもお願いじゃ。どうかこの事件の解決の糸口を見つけるためにも…カルロ伯爵と話をしてもらえんかのぉ」

「…承知いたしました」

「恩に切るぞ」

「ありがとうございますっ!!」

「そうと決まれば早速伺います」


スクッとウィリアム様が立ち上がり、踵を返して会談室を出て行かれました。スッとヴィンセントはお辞儀をするとジロ…っとワトソン署長を冷たく横目で見て静かにウィリアム様の後に続いて出て行きました。


「…美人が睨みつけると怖いですね…」

「うむ…迫力があるのぉ…」


部屋に取り残されたジョージ陛下とワトソン署長は、まるで極寒の氷の大陸で吹雪に思いっきり吹かれているように感じていたのでした。

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