第2章 運命の女 ~Femme fatale~ 第九話
ぼんやりと灯りだした街燈の光に包まれるように立ちすくむジャンヌは、胸の前で力強く手を握りしめて気持ちを振り絞るように口を開き始めました。シャルロット様はそんなジャンヌを真っ直ぐ見つめており、二人の間にはただならぬ緊張が流れておりました。
「…お察しの通り私は…ローザタニア語が分かっております。ドミニク様がいつも何を仰っているのかちゃんと理解しております」
「…やっぱりね」
「先程の男は…弟のジャックの仲間です」
「仲間…」
「はい。プリンセスは『スカーレットシャーク』という集団をご存知でしょうか」
「『スカーレットシャーク』…?」
「このペルージュを中心に主に移民の子供たちがメンバーとなっているギャングもどきの集団です。そして私の弟ジャックは…『スカーレットシャーク』の一員です」
「ギャング…なんでまたそんな…」
「ジャックはこの国に来て以来職になかなか就けずに毎日プラプラとしておりました。ある時酒屋で酔っぱらいの男たちに吹っかけられたケンカに勝って…それを見ていた先程の酔っぱらいの男でその酒屋のオーナーのロバート・グル―バーに気に入られていつの間にか『スカーレットシャーク』の一員になっておりました」
「と言うことは…あの男もギャングの一員なの?」
「あの男はラドガ大国のマフィアの構成員です」
「マフィア!?」
シャルロット様は思わず大きな声を出してその声にご自分でもビックリされたのか、慌ててパッと口を手で塞ぎました。そして驚きと同時に、いきなり大きな声を出してしまったことを反省するかのようにそのまま抑えるように胸に手を当てました。ジャンヌの薄いブルーの瞳にいつもの優しさはなく、まるでロバートを蔑むかのように冷たい瞳で淡々と話し続けます。
「まぁマフィアの一員と言ってもあの男は末端の末端で…見た目はいかにも悪そうに取り繕っておりますが力はほとんどありません。ただ自分の子分として作った『スカーレットシャーク』をいいように使ってお金を集めて…本部に納めているだけのただの資金調達係です」
「…」
「ジャックは馬鹿ではないのですが…とても短気で喧嘩っ早くて少し性格に難があります。弟を褒めるなど手前味噌ですがあの顔ですし、要らないやっかみを受けることも多くて…あの性格もあって、ローザタニアでも仕事に就いてもすぐにトラブルが起きたりとなかなか仕事が続かなくてさらに荒れていたところをロバート・グル―バーに目を付けられたんでしょうね」
「…そう」
「そして同じような境遇の子たちと意気投合して弟は悪いことにドンドン手を染めていき…きっと警察に掴るようなこともしているかも知れません。…ルテーリャに居たころはもっと純粋で優しくて…姉弟思いの優しい子だったのに…段々と鋭い目つきになって…もう私の手には負えないほどになっていきました」
「どうして真面目に働いているお姉さんの貴女を見習わなかったのかしら…」
シャルロット様はポロッと独り言のように呟かれました。ジャンヌはその一言に少し眉をひそめて、キュッと瞳を閉じると喉から声を振り絞るようにして少し低めの声で抑揚を抑えて話し続けます。
「私たちにはお金が必要なんです…。私にはアンリと言う名前の弟がもう一人おりますが…こちらに来てからアンリに重い心臓病が発覚してしまいました。アンリの心臓病は特殊なタイプでして大きな病院でしかも診られるドクターも限られておりました。その治療費も莫大で…父は13年ほど前に他界また母も色々と心労が重なり倒れてしまい、とても私一人のお針子でのお給料では食べていくのがやっとの状況なんです。まともに働いたとしても手に入るお金なんてほんの少し。そう思ったジャックは…『スカーレットシャーク』に入り、悪いことを覚えて人様を騙したり…人様から奪ったりとしてより多くのお金を得ることを覚えていきました」
「…」
「生きるため仕方なかったんです。何としてでも弟を助けたい…そのためにはお金が必要だったから…」
「移民でもこの国には治療保険があるわ。それには適応外だったの?」
「私たち移民でも入れる治療保険の額では薬代にもなりません。それに私たちは…戸籍を偽造してこのローザタニアに入国してきました。だから保険の申請が出来ないんです」
「え…っ!!どういうこと…?ジャンヌ、貴女…戸籍の偽造って…」
シャルロット様は驚いて再び少し大きな声を出しそうになりましたが、次はグッと堪えて気持ちをコントロールされておりました。しかし動揺が隠せないのか、いつもはフワフワと可愛らしい小動物のような愛らしいお顔が少し険しくなっておりました。
そんなシャルロット様を見て、ジャンヌは悲しそうに微笑むと一つ深呼吸をしてジャンヌもまた気持ちを整えたのか、ゆっくりと口を開き始めました。
「…さて…何からお話しいたしましょうか…プリンセス…。少し昔の話をしてもよろしいでしょうか…」
「えぇ…」
「…私…ジャンヌ・ジュノーは―――…ルテーリャ国王の血を引いております」
「ルテーリャ国王の血筋…」
コクン、とジャンヌが小さく頷きました。思っていたよりも遥かに大きな答えにシャルット様は大きな瞳をさらに大きく開いて驚かれておりました。ジャンヌはさらにキュッと手を握りしめ直し、ポツリポツリと静かに語りだしました。
「…私の母、アデリナ・ジュノーはルテーリャの前国王、イヴァン7世の愛人の子でした。イヴァン王の愛人であった祖母はルテーリャのある子爵の娘で…まだ何も知らない16の時に密かにイヴァン王と愛し合い、そして母を身ごもりました。ですが嫉妬深いイヴァン王の妃であったエカテリーナ妃に散々苛められて…そして私の母アデリナは王室に認知もしてもらえず…運悪く実家も断絶してしまい、それからずっと私たち家族は貧しい暮らしを余儀なくされました」
「そうだったの…」
「ですが祖母は教育熱心な人で、母や私たちに読み書きや計算などたくさんの知識を与えてくれました。母も私も…弟たちもルテーリャ語は不自由なく話せます。祖母は兄妹の中でも一番よく勉強が出来た私にとても期待してルテーリャ語以外にもラドガ語、ローザタニア語、アトラス語やエストレア語の古語など…様々な言葉を教えてくれましたし、貴族のご令嬢と同じレベルの知識と教養を私に与えてくれました」
「なるほどね…納得したわ。だって貴女の振る舞いはその辺の貴族の娘より所作が綺麗だもの」
シャルロット様はふぅ…と小さく溜息をつかれ、パズルのピースが組み合わさっていくかのごとく謎が解けていくことに安堵しておりました。
「…15年ほど前にルテーリャを始め北の国に大飢饉があったのをご存知でしょうか」
「えぇ、本で読んだわ。春は雨が降らずに大地が枯れて行き…夏は害虫もたくさん発生して秋には実りがなくそしてさらに冬には大寒波がやってきて…大勢の人が亡くなったと」
「父は農夫でして…もちろん私たち家族はその飢饉に大打撃を受けました。食べるものも無く、皆やせ細っていき…ただ生きているだけでも一苦労でした。そして無理をして働いた父はその飢饉の後に過労がたたったのでしょう…あっけなく亡くなりました。そして残された家族は身を寄せ合って必死に生きていきました。例え読み書き計算が出来ても大不景気のルテーリャでは女である母は仕事に苦労して…文字通り身を粉にして働いて私たち兄妹を育ててくれました」
「…辛い思いをしてきたのね」
「貧しくて辛かったと言えば辛かったですが…それでも家族全員で過ごした日々はとても楽しくて…かけがえのない日々でした」
ジャンヌの瞳はどこか悲しげな憂いを帯びてはおりましたが瞳の奥には幸せだったころの思い出を移しているかのようにどこか暖かみのある色をしており、口元には僅かではありますが幸せを噛みしめているのか微笑みの表情が見えておりました。シャルロット様はそんなジャンヌの表情を読み取られて、ジャンヌに近づいて硬く握られているジャンヌの手を取って優しく微笑まれました。
「貴女のこれまでの人生が辛いものばかりでなかったことが分かってよかった…」
「プリンセス…」
「ねぇジャンヌ…これから叔父様と一緒に生きて行こうと思うなら、色々精算して行かなくてはいけないと思うの。まずは叔父様に今私に話してくれたことを全てお話しして…ジャックを更正させて悪い奴らと縁を切って生きていきましょう?弟のアンリのことはお兄様やヴィーに相談すれば何か道が開けるかも知れないわ」
「プリンセス…でも…」
「なぁに?」
「…私はドミニク様と一緒になれる資格はありません。このプロポーズも…やはりお断りしようと思っております」
「どうして?ルテーリャの王家の血を引く貴女ならお爺ちゃまも何も言わないと思うわ。それにジャックのこともどうにか出来るかも知れない!」
「…一瞬でも…病気に苦しむ母やアンリを捨てようとした私が…幸せになる資格なんてどこにもないんです。それにもう私は汚れてしまって…真っ黒で決して綺麗になる事なんてできない…」
シャルロット様がそっと優しくジャンヌの手を包み込むように握りましたが、ジャンヌはその手を離そうと素早く引込めました。そして下を向いて涙を堪えているのか声が震えておりました。
「貴女にどれだけ大変なことがあったか、私には想像できないことだろうけれど…どんなに汚れていても洗い続けていればだんだんと汚れは取れていくものよ。そりゃあ一気に汚れが取れたらいいけれどそんな魔法みたいな洗剤はないから地道に毎日洗い続ないといけないわ。完全に…綺麗には汚れは取れないかも知れないけれどだんだんと汚れは薄くなっていくものよ?」
「…」
シャルロット様は再びジャンヌの手を取って心を落ち着かせようと強く握りしめ、下を向いているジャンヌの顔を覗き込みました。
「それに恋は盲目だもの。一瞬くらい何もかも全て忘れちゃうことくらいあると思うわ。だからそんなに悲観することなんてないわよ!」
「プリンセス…」
「さて…じゃあ叔父様とキチンと話し合いしなきゃ!叔父様とジャックと一緒にお爺ちゃまの所に行きましょう!」
「…はい」
まだ少し戸惑っているジャンヌでしたが、力強くそう語りかけるシャルロット様の真っ直ぐな素直な瞳の清らかさほだされてジャンヌは少しだけ口元が少しだけ緩んでホッとしたように微笑みました。
シャルロット様は軽く頷かれると、ポケットからハンカチを取り出してジャンヌに渡しました。
ジャンヌは頬にキラキラと光る氷の粒のようなに伝っていた涙を拭き取ると、二人はもう一度微笑み合い、手を繋いで歩き出して皆が消えて行った飲み屋へと入って行ったのでした。
・・・・・・・・
「あら?叔父様お一人…?」
「シャルット!ジャンヌ!君たちどこに行っていたんだい!?何か皆トイレだったり外の風に当たってくるだの出て行っちゃって、さっきから私一人だったんだよ~!」
煩い耳障りな激しい音楽が未だに鳴り響くお店の奥のVIPルームに通されたシャルロット様とジャンヌが部屋に入ると、そこにはドミニク様がお一人でまるで借りてきた猫のように静かに姿勢正しくも小さくなってソファーに座っておりましたが、部屋に入ってこられたシャルロット様とジャンヌの姿をご覧になってお顔が一瞬で晴れやかになり、ソファーから勢いよく立ち上がってお二人の所に駆け寄ってきました。
「そうなの?じゃあジャックもどこかに行ってしまったの?」
「あぁそうなんだ…。彼も外の風に当りに行ったのかな、少し前にこの部屋を出て行ったきりなんだ」
「じゃあ早く戻ってきてもらわないと…!もしくはもう私たちも外に出た方がいいのかしら」
「シャル?」
「ねぇ叔父様、早い所お爺ちゃまの所に戻りましょう?ジャンヌとジャックも一緒に!」
「…っ!!」
何か色々と考えながらぶつくさと呟くシャルロット様のお声を聞こうとドミニク様は耳を近づけようとされた瞬間シャルロット様は勢いよくお顔を上げられました。シャルロット様の頭とドミニク様の顎がぶつかり合いってゴンッと大きな音がし、二人はしばらく悶絶しておりました。ジャンヌはビックリして呆気に取られていましたが、すぐにドミニク様を介抱しようと近くに寄り添ってきました。
「あいたたた…ゴメンゴメン、シャル…。相変わらず君は石頭だね…」
「叔父様こそ…丈夫な顎をお持ちだわ…」
「丈夫なのはメルヴェイユ家の血筋だよ、シャル…。怪我は…お互いないようだね…」
「えぇ叔父様…。今度から気を付けるわ」
「私も不用意に近づかないように気を付けるよ。話は戻るけれど…そうだな、早い所ここを出ようか。実はさっきから耳も痛いし空気は悪いしで…気分があまり良くないんだ」
「そうね…煙草の匂いかしら?何だか嫌な空気がまとわり付きそうで凄く心地悪いの。早くジャックをピックアップして出ましょう!」
そう言ってシャルロット様が踵を返してドアの方を開けると、そこにはロバートが相変わらずニヤニヤとした下品な顔で仁王立ちで立っており、その後ろに数人の屈強な身体をしたいかにもガラの悪そうな男たちが数人ドアを塞ぐように立っておりました。
「おっとぉお姫様…どちらに行かれるんですかねぇ?」
「…っ!」
「へへへ…小便に行った時に外から声が聞こえると思って耳すませて聞いてみれば…!ジャンヌぅ~話は聞かせてもらったぜぇ?まさかおめぇがルテーリャ王家の血を引いた人間だったとはなぁ!そしてそっちのお嬢ちゃんは似ているとは思ったけど本当にシャルロット姫とは…俺も運が良いぜ!」
ドミニク様はシャルロット様とジャンヌを自分の後ろに下がらせました。足が震えながらも、ドミニク様はお二人を守ろうと一生懸命立っております。ジャンヌはドミニク様の腕をキュッと掴み後ろで怯えておりましたが、ロバートが手下の男の一人から何やら引っ張ってきたのを見て驚いて駆け出しそうになりましたが、ドミニク様とシャルロット様に止められてその場に引き戻されました。
「…!ジャックっ!!」
ロバートはそんなジャンヌを見てまた笑い出すと、そのまま殴られたのか項垂れて下を向いて後ろ手を手下の男たちに掴れていたジャックをグイッと自分の横に持ってきて、肩を組んで顔を近づけてジャックの顔を覗き込みました。
「ってことはこいつは世が世なら王子様ってわけだ!まぁ…どうりで綺麗な顔しているわけだぜ!いやぁ…驚いたねぇ~ルテーリャの王家の血を引いたやつがマフィアの子分だなんてよぉ!へへへ…これってルテーリャの王様強請れそうじゃね?」
「そんなの関係ねぇよ…っ!俺たちは…何も関係ねぇんだっ!」
「うるせぇっ!」
ガッとロバートはジャックを容赦なく殴りました。口の端が切れたのか、ジャックの左唇から薄らと血が滲んできました。
「ジャック!」
「おっと…大切な大切な王子様の血が流れちまったぜ…こいつはすまねぇなぁ!」
ケタケタと笑いながらロバートはジャックの顎を掴んで顔を上げさせると、小汚い舌を出してジャックの頬をツツツ…っとヘビのように這わせて嫌がるジャックの顔をニヤニヤした顔で見ておりました。
「…っ!」
ジャックは露骨に顔を横に向けたり身を捩ったりとしておりましたが、ロバートやその手下たちに強く抑え込まれて動くことが出来ませんでした。
「その汚い手を離しなさい!」
シャルロット様ははっきりとした大きな声でそう告げると、男たちは一斉にシャルロット様の方へと顔を向けました。ロバートは一瞬、あ?と不機嫌な顔でシャルロット様を睨みつけましたが、すぐにまたニヤニヤ笑い出してジャックをパッと離すと、今度はシャルロット様の方へと寄ってきました。
「シャルっ!」
ドミニク様の制止を振り切ってシャルロット様も一歩前に出られると、真っ直ぐ前を見つめたまま微動だにされませんでした。
「おっと…これはこれはお姫様…ずいぶんと威勢がいいですねぇ」
「近寄らないで。臭い息をこれ以上吐かないで」
ロバートが少しかがんでシャルロット様のお顔に自分の顔を近づけて、まるでメンチを切るかのように覗き込みましたが、相変わらずシャルロット様は動かずに前だけを見つめておりました。
「へっ!生意気なガキだぜっ!お姫さんよぉー、まだ自分が置かれている状況が分かっていねぇ様だなぁ!」
「黙りなさい」
「おいおい~!『スカーレットシャーク』を始め、この辺の仲間にはここに集合するように連絡したんだ!おめぇたちはもうもがいてもここから逃げられねぇンだよ!ドミニク様よぉ!ついでに今からアンタの家に行ってその頭の固ーいお父ちゃんをぶん殴りに行こうと思ってるんだがよぉ!そしてお宝とかぜぇーんぶ俺様がいただきに行かせてもらうぜ!」
「…なんだとっ!?」
「そしてアンタたちは…まぁ全員見目麗しいし売り飛ばせるな!奴隷でもなんでも…なぁ?」
「そんなことはさせない…っ!」
ドミニク様は飛び出してロバートに殴り掛かろうとされましたが、ドミニク様の弱々くスピードの遅い拳を簡単にロバートはかわし、その流れのままドミニク様のお腹目掛けて膝蹴りを一発入れました。
「痛っ!」
ドミニク様はそのままその場に倒れ込むと、ロバートはもう一発ドミニク様に蹴りを入れました。武術の心得がなく受け身を取ることが出来ないドミニク様はそのまま蹴り飛ばされ、勢いよく壁に激突されるとうめき声を発しながらその場で蹲って動けずにおりました。
「へっ!貴族様は弱っちぃなぁ!」
「ドミニク様っ!」
ジャンヌが思わず倒れているドミニク様に駆け寄ろうとした一瞬ロバートはジャンヌの腕をパッと掴み、ジャンヌを羽交い絞めするように抱きしめて捉えました。
「おっとジャンヌっ!売り飛ばす前におめぇとは一度遊んでみたかったんだよ…。へへへ…出会う男を次々に虜にして破滅の道へと導く悪女!!今だって…お前に惚れてるコイツはもう金もねぇ、お前を守れる力もねぇ…終わりだ!!破滅だ!!」
「…やめてっ!」
ジャンヌは顔を背けようとしましたが、ロバートはそんなジャンヌの顔を掴んで自分の方に向けると鼻息荒くジャンヌの顔を見つめてニヤニヤと笑い出します。嫌がるジャンヌは逃げようと身体や顔を捩りますが、意外と力強いロバートにがっつりと掴まれているため動くことが出来ませんでした。
「いいねぇ…美人が睨むと余計に美人が増すねぇ。確かにおめぇほどの美人になら人生狂わされてもいいかなって思っちまうわなぁ…」
「ジャンヌ…シャル…逃げろ…っ!」
「へっ!この状況でどうやって逃げろって言うんだよドミニク様よぉ!無理に決まってんだろ!馬っ鹿じゃねぇのっ!?」
「…ジャンヌ…」
ゆっくりと起き上がろうとしているドミニク様の方へ手下の男が数名近づきさらに殴るけるの暴行を加えて動けなくさせてしまいました。そしてドミニク様を無理やり引っ張って立たせるとそのままどこかへ連れ去ろうとし始めました。
「さぁてジャンヌ…今からお前は俺の相手をしてもらおうか!前からおめぇのその白くて美しい肌に触れてみたかったんだよ俺は…」
「離して…っ!」
「ジャンヌに…姉貴に触るなっ!!」
「うるせぇっ!」
手下の男たちに羽交い絞めにされているジャックも抵抗してモジモジと動いておりましたがまた男たちに殴られて、今度は口からポタポタと血を垂らして項垂れております。
「ジャックっ!」
「へへへ…愛する男と弟はおめぇのせいであんなにもボロボロになっちまったなぁ、ジャンヌ。全部おめぇのせいだよ」
「…っ!!」
「さぁて…今からおめぇは俺が飽きるまでとことん付き合ってもらって…あちらの姫さんは…まぁ俺は子供には興味ねぇんだが…何しろこの国一番の美しさを誇るという姫様だしな…こんなチャンスはめったにねぇ!!たっぷりと遊ばせてもらおうか!!おい!この二人を奥の特別プレイルームに連れて行くから準備しろっ!!」
ロバートがジャンヌをパッと部下の男の方へと突き飛ばしました。そして先ほどから全く微動だにしないシャルロット様の方へと近づいて腕を取ろうとしたその時、ドアの付近から何やら鈍い音と共に男たちの野太い悲鳴が聞こえました。
そして何事かと思ったロバートがすぐに後ろに振り向いたその瞬間、もの凄い速さで吹っ飛ばされてドンッと言う大きな音を立てて壁にめり込んでおりました。




