世界の真実
『ジ・・・ジジ・・・ジーーー』
無線機がただ不快な音を垂れ流す。
もう何度目のトライだったか。
肩を落した親父がアームローダーから出て来た。
「やっぱりダメ?」
「ああ・・・」
親父が落ち込む理由は分かっている。
イサギリ工業の野営地と連絡が取れなくなったからだ。
セントルシフの噴火後、直ぐに無線機で呼びかけをしたものの応答はなかった。
ずっと砦にいるわけにも行かない。
とはいえ噴火中の火山に近寄るわけにも行かない。
伊佐霧さん達は大丈夫だ。
きっとちゃんと逃げられてる。
拠点に展開しいていた機材が壊れただけだ。
そう親父に言いながら自分に言い聞かせ、一度俺の家に戻った。
家ではたわいもない話を続けた。
ミカギ産業のこと、親父が持って来た兵器のこと。
親父の得意料理がカレーで材料になる植物の味も分かるとか、じゃあミカギ産業で新メニューにカレーを起こせるねとか、引っ張ってきたトラックベッドにライフル銃が無造作に突っ込まれててマジ親父いい加減にしろとか、放置するわけにはいかないからライフルと弾を格納したら、弾丸の名前が「ユニバースエンド」とかいう怖い名前で何材料にしたんだよ!?とか。
そうやって無理矢理騒いで、不安を払拭しようとしてた。
皆きっと生きている。
でも日にちが経つほどに冷静になる。
冷静になると希望が余りに少なすぎることに気付いていく。
親父達が野営地にしていたのはランドベルの森だった。
例え溶岩から逃げられたとして、逃げた先にいるのは凶悪なモンスターだ。
借りに銃を持って逃げたとして、俺みたいに弾を作れればまだいい。
だが普通は弾がなくなれば銃はガラクタ、只の筒だ。
加えて親父の話では野営地は何故か全く周囲に生物がいなかったらしい。
傷だらけのホームレスみたいな成人男性を一人保護したらしいが、だからこそ周囲にはここは安全という空気が広まっていたそうだ。
セントルシフの噴火から既に1週間。
イサギリ工業の誰一人とも、未だ連絡は取れていない。
「お前に話しておかなきゃ行けないことがある」
その夜の夕食後親父に呼び出され、外に出た。
「なんだ親父?急に改まって」
「この世界のことだ」
「あん?」
「お前、ガイア理論て知ってるか?」
聞いたことはあった。
地球を一つの生命体とみなす理論だったはずだ。
「ざっくり言えば大いなる意思、つまり神や、地球のシステム、生命の進化に繋がる科学的理論の一つとして用いられる一方で、人間このまま自然破壊繰り返していると地球に滅ぼされるぞっていう倫理的理屈に使われたりもするアレだろ?」
まあ、ざっくりしか知らないんだが。
「その通りだ。じゃあ、そのガイア理論に新たな仮説を追加して提唱された新ガイア理論は?」
「・・・何ソレ?」
こっちは知らん。
「知らなくてよかったよ。倫理的に問題があるとそこまで公になっている説ではないからな」
じゃあよかった。
「それで、その新ガイア理論がどうした?」
「まずその説を一言で言ってしまうとだ・・・人間こそが地球を浄化する存在である」
「・・・ん?」
「今までのあらゆる科学が人間こそが地球を滅ぼすと言っているのに、逆だよな」
「ああ」
「これを提唱したアメリカの学者アークレス・サタネウスがいうにはな・・・そもそも地上に生命体がいることそのものが不自然なんだそうだ」
「あー・・・どういうこと?」
「他の星に生命体の痕跡らしきものが過去発見されたことはあっても、生物が発見された実績はない。即ち星の正しいありかたというのは只、そこに存在し、地上に何もいない状態である、というのがアークレスの理論の根拠だ」
「それが、この世界にどう繋がるんだ?」
「まあ聞け。もしガイア理論が正であり、地球が他の星と比べ唯一生命体が生息し続けられる・・・即ち異常な状態であるならば、我々生命体と同じように地球は地上に巣食う生命体の排除に動き出す」
「それって・・・」
「人間こそが地球のシステムが創り出した、生命体を排除するための要素。他の生命体をウィルスや細菌とするなら、さしずめ人間は抗体と言うわけだ」
そらまた、大胆な発想で。
「人間が自然破壊に使う様々な科学技術は何故生まれたか。人という種が何より弱く、弱いからこそ弱くても生きていけるよう世界を変えていく。知恵があるから?いや、人が弱かったからだと」
まあ、一理あるような?
「では人をデザインしたのは?大いなる意思が本当にあるならば人もまたその元に創られた種である。故に地球は滅ぶことこそを望んでいるのだ、というのが話の大筋だ」
「怖い考え方だな」
「ああ、だがその理論は歪な形で継承され、とある実験が実行された。・・・今から30年前の事だ」
「歪な実験?」
「そう、言い換えれば、人が弱くなければ自然は壊されることはない。人が機械に頼らずとも自力で生きていけるなら」
「おい・・・それって・・・」
「人を強くすることで行動を制限する・・・抗体拘束による世界再編実証。俺も驚いたよ。まさか次元を跨いだ場所にこんな世界を創り上げていたとはな・・・」
「いやちょっと待て・・・諸々辻褄合わねえぞ?30年前って・・・」
「始めはデータ上のみでの実験だったらしい。それで済めば良かったんだが・・・脳にバイオコンピューターを埋め込んだ人間をクローン技術で製造し、新たに見つけた生存可能な星にナノマシンをばらまき、人類とシステムとリンクさせ、技能を限定して使わせる。早送りで出来た世界の役割にその者達を当てはめ、データ上の早送りで進んだ歴史を記憶に書き込まれた者達は何の違和感もなく、その星の住人として与えられた役割をこなしながら日々を過ごしているわけだ。人の住む場所を拡大させぬ為、わざわざモンスターまで再現したというのだから、呆れたものだよ」
「いや親父・・・だって・・・」
「信じられないか?」
信じられるわけがない。
「だが冷静になってみろ・・・何億・・・いや何兆分の1だ?人という種が存在する確率は」
「え?」
「じゃあ、たった1度目で繋がった世界に俺達と同じ生命体がいる確率は?」
「それは・・・」
「この世界が予めあると分かっていなきゃこんなこと出来はしない・・・ゲートを開いて新たな人のする世界を引き当てるなんてな。人の力で新たな人類を発見したと言われるよりもまだ現実味があるさ。この世界をそもそも人が創ったと言われた方がな」
そういわれれば・・・そういわれれば、返す言葉がない。
だが・・・
「確証は・・・確証はあるのか!?」
声を荒げる俺に優しく微笑む親父をみて分かってしまう。
「勿論俺も半信半疑ではあったんだ。だが・・・伊佐霧は知っていた」
「え?」
「どこからか情報を得たのかは知らん。20年前、あいつは知っていて、だからこそゲートを開いたんだ」
「伊佐霧さんが・・・」
「まあ確証にかわったのはこっちに来てからだけどな。今思えば5年前か?・・・新しい形式の健康診断と言われて、気がつけば診療所で寝て1日が終わったあの日が怪しい。こっちに来る日を見越していたのか、それとも既に地球にも展開され始めていたのか・・・」
「何のことだよ」
「こっちに来て、彼と話したとき何故気付かなかったかな・・・お前の母親の言葉は分からなかったのにな・・・」
「いや、だから何のことだって?」
「ステータスオープン!!」
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名前 = 三鍵 道薙 (ミカギ ミチナギ)
所属 = 日本
爵位 = なし
天職 = 技術者
先天技能 = 解析
後天技能 = 異世界語
罪状 = なし
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「・・・嘘・・・だろ?」
俺の前には親父のステータスが現れていた。
そう、それはつまり・・・
「これが、この世界に済む者達の技能が地球で創られたことの証明・・・即ちこの世界が、地球人が創ったものだってことの証明だ」




