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王国上層部の実情

男2人を拘束し、家捜しするもハム君はいなかった。


キュオーンを見るも「なんでぇ~?」みたいな顔をしている。


コイツの鼻信じて良いんだろうか?


単純に無駄足だったと言うことは?


まあ、いないものは仕方ない。


帰るか。


「待てい!!」


あ、猿ぐつわするの忘れてた。


「むぐーー!?」


「何故口を塞ごうとしておる!?」


若い方の男に猿ぐつわをすると、爺さんの方が怒鳴ってきた。


しゃーなし律儀に応える。


「誘拐犯と話すことはないからね。」


「だから誘拐なんぞしておらん!!」


「あ!?」


「あ!?じゃなくて!!お主の探し人もおらんかったのであろう!?」


・・・確かに。


とはいえ、さっきまで一応殴り合った関係だ・・・俺なんもしてないけど。


解放して暴れられても困るよね。


「つか、なんでこんなとこいるんだ?」


「ぬ・・・」


「吐きなよ。アイツが噛みつく前に」


かっこつけて後ろ向きに親指で指した後振り向くと、指の先には、牙をむき出しにするジャンヌ。


「シャアァァァァ!」


・・・ゴメン。


そっとキュオーンを指し直す。


『グルルルゥ・・・』


「わ、分かった・・・言う・・・言うから・・・」


素直で宜しい。




ザアカイと名乗った爺さんは、自身はケイトリック公領地から来たという。


「ケイトリック・・・って北の公爵様だったっけ?」


「その通りじゃ。儂はそこで商会の会長を務めておる。」


「会長?」


嘘くさすぎる。


「嘘ではない!ここまで来て嘘はつかん!!」


どこまでだよ・・・まあ、いいや。


ひとまず喋らせてみよう。


こういうとき喋らせれば嘘つきはぽろっと矛盾したことを言うもんだ。


「で、その会長さんがなんでこんな所に?」


「買い付けだ・・・一言で言えばな・・・」


「・・・ここで?」


「・・・そうじゃ・・・」


なるほど。


「キュオーン、おいでー」


「待てい!?」


「なんでだよ?」


「ちゃんと話す・・・ちゃんと頭から話すから」


始めからそう言えば良いものを。


「話す前に・・・ミカギ産業というのを知っておるか?」


・・・僕そこの会長です。


「まあ、この界隈で知らんわけはないな・・・そのミカギ産業なのだが、とにかく勢いが凄くてな・・・最近王都にまで支店を出したそうだ」


よくご存じで。


「支店では奴隷を雇う余裕振りを見せつけ、更にオソドクス公領にも、この後支店を出すという噂も流れておる」


・・・ほんとよくご存じで。


「そこでケイトリック公爵が危機感を感じ始めたようでな」


どういうことだ?


話が見えなくなってきた。


「ミカギ産業の商品を調達できる裏の調達先を確立するよう儂に命じられたのだ」


なるほど、全然分からない。


分からないがキーワードは全部出て来た。


奴隷、裏の調達先・・・


とはいえ、じゃあ解散とは行かない。


もうちょっと掘り下げて聞いてみようかな。




爺さんの話ってのはこんな感じだった。


北のケイトリック公は発足当初より教会との密接な繋がりを持つ家だ。


つまりノースガブリ聖国を本山とするメシア教教会を王国内にも多数建築し、王国に認知させ、その手腕でノースガブリ聖国との関係を強化。


その実績より外交でノースガブリとの関係を掴むことで、王国内での権威を得ているわけだ。


その権威がちょっと危うくなる事件が起きた。


先日のノースガブリでの事件だ。


モンスターを撤退させた戦士をへの賞賛と感謝を、聖国はアダム王とプロテスト公・・・つまり、当主に送ったのだという。


加えてそのとき誰かさんが、王女や兵にミカギ産業の調味料をつかった料理を振る舞ったおかげで、ノースガブリ聖国はスローンズ侯爵に元締めと思われている当主との関係強化を求めた。


いやいやそこはウチを仲介しては、と横から入れない事情がケイトリック公にはあった。


パナシアの一件だ。


あの件で当主を盾にし、保身を図ったケイトリック公爵。


しかし、当主はその任を果たし、さらに娘が王子に嫁入り。


今や、盤石となりつつある当主の権威にケイトリック公は頭が上がらないのだという。


更に頭を抱える出来事がオソドクス公とサウスラファ皇国だ。


同様に当主を盾にし、聖剣獲得を支援されケイトリック公爵以上に頭の上がらないオソドクス公は、しかし王国軍を統べる軍人である。


領の経営に多少不備があってもその権威は揺らがない。


といってもミカギ産業の商品を輸入することは当初はオソドクス公も当初は嫌な顔をしていたらしい。


本来新たな産業の参入は、現産業を潰しかねないからね。


ここで皇国が出てくる。


皇国は王国に対し現状立場が低い。


聖剣泥棒騒ぎが大きな理由だ。


そのサウスラファに奥様はオソドクス公領の商会を介して、ミカギ産業の商品を売っても良いと通達した。


さらにミカギ産業傘下の店が、ミカギ産業の調味料を使って売り上げを伸ばした事実がオソドクス公に報されたことで、オソドクス公は考えを変えた。


商品をサウスラファにオソドクス公領の商人を介して売れば、運送業が潤う。


加えてサウスラファとの関係を今以上にオソドクス家が握れるかもしれない。


ならばいっそ多少の博打要素覚悟で、とレメクさんを介し、オソドクス公領へのミカギ産業の支店進出を、頭を下げて依頼してきた。


ここでケイトリック公は焦ることになる。


ミカギ産業製品が流通する国内で、取り残される領地。


ではウチにも、と言おうにも、オソドクス公と違いケイトリック公には売る場所がない。


「そこで、ミカギ産業の商品を金がある内に大量に仕入れ、ノースガブリとの貿易を復旧させようというのが公爵様の考えだったのだ」


だそうだ。


確かに近いところから仕入れられた方が聖国も良いだろうからね。


そこでウチでも手に入るぞアピールをして聖国の客足をケイトリック公領に向わせ、歯がみする奥様に「なんならウチに支店を出しても良いぞ?」とか言おうとしたのかもしれん。


スローンズ侯爵と既に直接貿易始めたのに、それは無理じゃねえかな・・・とは言わんでおこう。


「その流通ルートを開拓すべく、裏の調達・・・つまり転売屋との渡りをつけようと、色々と探った上でこの男に行き着いたのだ」


そう指を指されてモガモガ呻くもう一人の男。


「そして待ち合わせていた所に、お主達が入ってきたというわけだ」


となるとここからハム君の匂いがするのは・・・。


「ここはこう言った裏の人間達がよく使う空き家だそうでな・・・普段誰も寄りつかん。秘密の会合をするのにはうってつけだ。一時的に人質を置いておくにもな。・・・おそらくその探し人とやらは我等が来るその前にここから移動した・・・いや、させられたのだろう。」


そういえばハム君いなくなったの昨日からだっけ。


入れ違ったか・・・まあ、矛盾はないな。


「わかったであろう・・・儂もこの件は忘れよう。だからこの縄を解いて見逃してくれ」


「それは却下で」


「何故だ!?」


「見つかった相手が悪かったと思ってよ」


「相手って・・・お主一体何者なのだ!?」


「自己紹介がまだだったね・・・マナウタ・ミカギ。以後お見知りおきを」


「ミカギ・・・馬鹿な!?何故あのドラゴンスレイヤーがここに・・・得体の知れない武器・・・隣に美しき聖剣士・・・はッ!?まさか本当に!?」


「ひとまずアンタはプロテスト公にこのまま突き出してこの後どうするか決めて貰うよ。それまでおとなしくしててね」


「そんなモガガッ!?」


猿ぐつわをして黙らせ、ジャンヌを振り向く。


「これからどうする?」


「ハムさんの手掛かりはなさそうですね。ひとまず帰るべきかと・・・晩ご飯もまだですし」


「・・・そうだね・・・」


男を空き家にあった木の板にくくりつけ、キュオーンに繋ぐ。


ソリの容量でこのまま引いて貰おう。


キュオーンに引き摺られながらモガモガ騒ぐ男を、顔を踏みつけて黙らせるジャンヌを見ながら家路急ぐ。


アリスたんのご飯も待ってるし、美味いものつくるって約束もしちゃったし。


今日は時間的にも限界だ。


明日からもう一度探すとしよう。


食卓を囲む面子は、今日一人少ない。


「いつもいる顔がいないってのは・・・結構寂しいもんだな・・・」


なあ・・・親父。

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