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王都1号店

「デカ・・・」


ミカギ産業王都1号店。


聞いてはいたが驚きの規模にびっくりだ。


店の前に立つ俺達を往来する市民がちらちら見ているのを感じる。


「あの店の関係者かな・・・」


「って事はもうすぐ開店か・・・何の店なんだ?」


「お前知らねえのかよ?貴族の家より美味いものが出る飲食店らしいぞ。どっかに本店があるらしいんだがそこ行った奴が言ってたぜ」


「違うわよ。貴族が使うような化粧品を売る店よ」


コソコソと会話が聞こえる。


一応それなりの知名度があるのかな?


よく分からんが。


さて、ここに来るまでに王都実施調査としていくつかの項目を考えた。


1、従業員を知ろう。


2、王都の流行を知ろう。


3、お嬢様にどっちが良いかを聞こう。


ジャンヌ曰くお嬢様に魚介と鶏ガラを食べさせ帰って来る答えは「どちらも出せば良いのですわ、オーッホッホッホ!!」だそうだ。


それじゃ困っちゃうので、どっちかしか出来ねえよって言える根拠は欲しいと。


俺がどちらかにしたいと思っている理由は、オソドクス1号店の話もあるからだ。


王都1号店を出すと言う噂をどこからか聞きつけたレメクさんが、ウチにもと言い出したらしい。


この辺りは奥様も理解を示しており、結果どちらかに絞ろうとなったという経緯がある。


俺が知らずに動いてること多すぎないかな?


まあ、そもそも只の学生の俺、経営なんて出来ると思ってないから、名前だけでほぼ奥様に経営方針丸投げなんだけども。




ひとまずこの王都1号店。


社長代理がそもそも誰やねん。


そんな心配はご無用です。


奥様が前もって郵便屋を使って場を整えてくれたらしい。


日時は今日この場所で。


王都にも詳しいらしいので、王都にいる間は一緒に行動すると良いだろうと。


そんなことを考えていると馬車の走る音が聞こえてきた。


馬車に乗るのは貴族か金持ちか俺くらい。


最近乗馬を覚えたので乗らなくなったが・・・って俺のことはいいや。


馬車はこっちに向ってくる。


ということは社長代理はそれなりの身分の人か、実はあの馬車全然関係なくて通り過ぎるだけか。


通り過ぎて欲しいな・・・見たことあるもん・・・あの馬車。


あ、スピード落した。


やっぱここがが目的地か・・・誰が降りてくるんだろー。


「セト・ミカエストです」


はい、王子様入りましたー。




「いや、お久しぶりですね。こうしてお会いするのはクリス郷のパーティー以来ですか・・・。」


「あの時は大した御挨拶も出来ず申し訳ありません、セト殿下。」


「やだなぁ・・・マナウタさんは会長で僕は社長代理なんですから、セトと呼んで下さい。」


「セト殿下、それはご勘弁を・・・周りの目もありますれば」


因みに俺はアズラ王女もアズラ殿下と呼んでいる。


こういうのは普段からそうしておかないと、ぽろっとボロが出るものだ。


「ひとまず中に入りましょう、ここでは諸々目立ちすぎますし」


「そうですね。では」


目を点にしている野次馬達を尻目に店に入る。


営業前だから当然だが、誰もいない広々とした空間。


一応テーブルや椅子が並び、店として使えるようにはなっているらしい。


「へー・・・あとは従業員が入れば直ぐにでも営業できそうですね」


「そうなんですよ・・・その従業員が問題ですが・・・」


「問題?・・・何かあったんですか?」


「?・・・何かも何も、これから雇うんですから問題ですよね?あ、課題といった方が良いのかな?」


どういうことだろう?


これから雇う?


・・・え?


「セト殿下・・・そのこちらの店の従業員て、現在何人ほど決まっていらっしゃいますか?」


「え、ゼロだけど?」


なるほど、考えてなかった。


1号店は孤児院メンバー丸々使ったし、2号店、3号店と勝手に人が決まっていた。


奥様が動いてたこともあって、もう店としては営業出来るぜ状態かと思い込んでた。


味はどっちにしよう?とか言ってる場合じゃねえじゃん。


まさかの求人からスタートて。


「あ、ゼロは嘘だね。警備護衛は彼等がやってくれるから」


セト王子の後ろに控えるお付きの人達。


騎士にしか見えないが良いのだろうか。


国家の防衛力だろうに。




「一応従業員の候補は決めてあるんですよ」


途方に暮れかけた俺に救いの糸を伸ばす社長代理。


というかその辺りは王子に頑張って貰わないと困る。


俺王都にアテなんぞ全くないし。


王城?


ノーカンで。


「それで候補というのは?」


「奴隷を買ってしまおうかと」


流石王子、考え方が俺とは違う。


困ったことは金で解決、ヤッホゥ!!


だが言いたいことは分からんでもない。


だって王城育ちの王子が市民に伝手なんぞあるわけないもの。


店も出来て出資して、もう動き出さなきゃならんこの状況。


地道に求人するより確かに確実だ。


奴隷に抵抗がないわけではないし、そういえばジャンヌは思うところがあるかもしれないが。


「奴隷から奴隷を使う立場へ・・・ふふ」


満更でもないっぽい。


「それに奴隷を雇っていれば、良い商会だというアピールにもなりますし」


え・・・何で?


俺の感性的には逆なのだが。


世間知らずの王子の言うことだから疑うべきかもしれないが、ジャンヌも頷いているから間違いないのだろう。


「それじゃあ、早速行きましょうか」


セト王子に促されるまま奴隷商に向うことになった。


釈然としないが、困ったときのジャンヌ先生というカードが俺にはある。


ま、何とかなるだろう。




奴隷について。


奴隷商に行くまでにジャンヌに受けた説明だ。


奴隷商は民間が勝手に開けるものではない。


人道を重んじるというのがこの国の在り方だというのが表向きの理由だ。


いわば奴隷商というのは刑務所みたいなもので、まともな商売として成り立たないから誰もやらないが、ないと困る・・・というのが本当の理由らしいが。


この国では借金を返せない、というのも犯罪の一つとして捉えられているが、一応奴隷は犯罪奴隷と借金奴隷に分けられる。


犯罪奴隷は国や領主から危険な任務を与えられたりするらしいが、今は気にしなくて良い。


借金奴隷は奴隷商に売られ、その後民間に渡っていく。


今回買うのはこの借金奴隷ということになる。


で、借金奴隷のシステムが結構厄介だ。


例えば100万の借金があった者が奴隷に落ちる。


この奴隷は奴隷商に100万で買われ、借金返済をして貰う。


つまり貸し手が奴隷商になる。


奴隷商での衣食住は奴隷商で働くことで返すが、来たばかりで良い働きなど出来るはずもない。


買って貰うための教育なども受けるため、奴隷商への借金が更にプラスされる。


で、買い手が付いたとき、負った追加の借金が100万だとすると合計200万がこの奴隷の借金と言うことになる。


この200万をベースに奴隷の金額は決まる。


借金の貸し手が買い手に移る、ともいう。


若い奴隷なら高値が付く。


見た目が良ければもっと上がる。


老人は買って貰えない。


子供も。


借金を返せないと言うことは、働けないと言うことだから、若くて美人な奴隷なんていうのはファンタジーだ。


老人か子供が大抵らしい。


つまり買って貰えない奴隷ばっかりで奴隷商は埋まっている。


とはいえ奴隷商は国家施設だ。


ではその奴隷達をどう養うか?


税金を使っているのである。


つまり奴隷大勢雇用するということは国庫支出削減に貢献していることになる。


また、若い奴隷も大変だそうだ。


200万しか借金なかったのに1000万で買われれば、借金は1000万だ。


高値で買った買い手は当然、その金額をベースに仕事を要求してくる。


高い金払ったんだから良い仕事しろや、と。


ブラック起業の社畜人生が決定するわけだ。


だから若い奴隷が笑顔で仕事をしていると、企業イメージはガッツリ上がる。


俺は社長。


会社の顔だ。


つまり奴隷ハーレムとか夢のまた夢だってことだ。


ちょっと残念。


「おや、元気が有り余っているようで」


ジャンヌ・・・舌なめずりしないで。



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