人には言えぬ事
聖剣士というのは出世する。
聖剣持たなくても強いもの。
ウチのサムライメイドが変なのだ。
普通は親が4桁単位で領民飢え死にさせない限り、そうはならない。
その社会のエリート、聖剣士が動くのもままならない感じで出血しながら3人川の字で寝ている。
ホームレスみたいだ。
それも全員盗みの現行犯という訳のわからなさで。
どないせえと?
やった本人が言うのもあれだが。
「さて、貴公らの処遇を決めるまえに理由を聞いておこうか。」
「・・・答えると思うか?」
「これは我等が独断によるもの。皇国は関係ない。」
「まさか、このような戦力がいたとは・・・くッ、殺せ!!」
惜しい。
残念ながらクッコロはアストルフォ。
「ふむ・・・。」
考え込むレメクさん。
さっさと殺っちまうってわけにはいかないんだろうな。
「これが彼等の極秘任務であった場合事情を知るのは彼等だけだ。おそらく先ほどの兵達は事情は知らされてはおるまい。」
そういうもん?
まあお偉いさんが言うのだからそうなんだろう。
「真相は彼らしか知らぬとなれば彼等が話すのが手っ取り早い。また吐かなくとも皇国に対する人質にはなる。」
で、あれば・・・殺して貰いたがる理由は・・・。
「ジャンヌ、2人選んで猿ぐつわしといて!!」
はっとしたジャンヌが迅速に動く。
「どうした?」
「一応。舌でも噛まれちゃ敵わんので。最近ちょっとありましてね。」
ベルナデッタさんの服を破って使うというなかなかの猛者振り。
流石です。
「そうか、で、ベルナデッタ殿を残した理由は?」
「一番吐かせやすそうでしたので。」
困ったように見られてもジャンヌの判断基準は分かりません。
「ここは私が聞きだしておきます。お二人はその間に聖剣を。」
ま、手分けした方が効果的かな。
ジャンヌが本調子ではないとはいえ、コイツ等が何か出来るとは思わんし。
「じゃあ頼んだ。」
「はい。」
「よ、よいのか?」
不安そうにジャンヌをみるレメクさんの背中を押して次の階層へ。
『イ、イヤァァァアアアアア!!』
階段の途中で女性の悲鳴が聞こえたがジャンヌの悲鳴じゃなかったのでスルー。
「本当によいのか?」
・・・多分ね。
地下8階。
牙の長い虎、サーベルタイガーみたいなの。
「スミロドン!?」
早くて力が強く、加えて巨体。
しかも長い牙は岩もプリンみたいに貫く技能付きのチート武器。
・・・らしいので動かれる前に頭を撃っておく。
「なっ!?」
地下9階。
デカい蛇。
「ティタノボアだと!?」
動きが不規則。
恐ろしく長くて太い。
巻き付き、毒牙・・・あと色々。
とにかく頭撃っとけばOK。
「こんなことが・・・。」
ほれ、次。
地下10階。
トリケラドラゴン。
解体してもノーマル素材を30個しかくれないケチなヤツ。
いつも通り口撃って終了。
「・・・。」
「レメクさん、惚けてないで聖剣獲って来て。」
「あ、ああ。」
よし、任務完了。
こっからが辛いんだけどね。
また地獄の階段上りだ。
地下7階に戻る。
何というか戻る前までなかった異臭が立ちこめている。
何があった、などと聞く気はない。
一目瞭然だから。
「あー・・・ジャンヌ、で、・・・吐いたのか?」
「はい。」
「一応、訊いていい?」
「どうぞ。」
「ベルナデッタさんが下半身丸出しなのは何故?」
「脱がせましたから。」
「ベルナデッタさんが泡吹いているのは?」
「私のテク故ですね。」
胸を張るなよ・・・。
「えー、じゃあ、本来見てもイケナイ感じの所に聖剣の柄じりがブッ刺さってるのは?」
ちゃんと相手の聖剣を使ったのは思いやりなのか、自分のを汚したくなかったのか。
「流石に赤の他人に指を使うのはちょっと・・・。」
「いや、そういうことじゃなく、何故このような吐かせ方を?」
「マナもこうすると言うこときく「シャルァーーーップ!!!」
人前で何てこと言いやがる。
否定できないのが悲しいが。
ほら、どうすんだこの空気。
聖剣士3人顔背けるしか出来てねえじゃねえか。
ジャンヌがベルナデッタさんで華も散らせるネオ華道をたしなんで得た情報は、簡単にいうとこんな感じだった。
サウスラファ皇国の聖剣士の一人が裏切り、ウリウェスト帝国へと亡命した。
本来聖剣士というのは国の要故、多少の問題は見て見ぬ振りをされる。
それを良いことにⅦの聖剣ギャラクシーの持ち主タダイはかなり好き勝手振る舞っていたらしい。
結果皇国も彼を裁かざるを得ず、捕縛の命が秘密裏に出た矢先の事だったそうだ。
おそらく勘づかれたのだろう。
防衛の要である聖剣を失ったサウスラファはタダイの返却を帝国に要請。
しかし帝国はこれを拒否した。
「聖剣士と言え、亡命すれば只の亡命者。なれば亡命者についての国家条約に沿って彼も扱われれるべきだと。」
サウスラファとしては帝国に既に兵力である人員を大分持って行かれている。
他にも帝国に鉱山があったり、時に防衛を支援して貰うなどの借りがあったりと強気に出れない相手。
そこで、サウスラファの尊皇とかいう人はアホなことを考えた。
「ミカエストから借りちゃえば良いんじゃね?どうせ彼処使ってないし。」
口調の程はしらんが、ともかく命を受けた聖騎士2名は本来「余り」であったアストルフォを連れて第4の遺跡へ。
それがこの結果である。
「それとメタエスター島の警備兵を覚えていますか?」
「ああ。トマスさんね。」
流石に俺が忘れちゃいけない名前だとは思う。
「サウスラファの密偵のようです。」
「へ?・・・帝国じゃなくて?」
「ええ、敵対国家の仕業かと思っていましたが・・・まさか同盟国家とは。」
「なんでまた?」
「それもこの方に話して頂きました。」
「話して頂いた、ね。」
「遺跡は重要施設の一つ。砦の外で常時警備が難しいとは言え、定期的に見回りを出すもの。その期間はある程度の法則はあるものの、一応秘匿されています。」
「ま、そうだろうね。・・・あ、分からないなら操ってしまえばいいと。」
遺跡からモンスターが出てきたと言う噂が流れれば、見回りが直ぐに出る。
そして一度出して安心してしまえば直ぐには帰ってこない。
「何故こういうときは鋭いのでしょうか?」
日本男児ですもの。
となると・・・。
「下手すりゃトマスさんが死ぬまでが演技だった可能性もあるのか・・・。王国が疑うのは帝国。だからトマスさんが死ねば疑うのは帝国のまま。一方その情報開示で遺跡の見回りは間違いなく撤退する。」
「なるほど・・・モンスター解放直後郵便屋の操鳥を使って報せる。報せを受けてサウスラファより出発し見回りが来たことを別の暗殺者に気配隠蔽を使って確認させる。」
「暗殺者は何食わぬ顔でミカエスト王国の郵便屋を使いメタエスター島に手紙を送る。送ったところで不審な行動をとって兵達に見つかれば、後は命を絶つだけ。」
「彼はステータスを見せなかった。その理由が所属を隠す者だったとするならば、或いは彼は・・・誰かの奴隷だったのかも。罪状は借金であれば奴隷になった次点でステータスから消えますから。所有物に財産なし、故に借金もなしと。」
「もしくはトマスさんの大切な人、家族とかを人質にされた可能性もあるけどな。もしくはその人を奴隷から解放すると約束されたか?・・・まあ推定だけど、こう考えれば辻褄が合う。」
「ええ、私も違和感はありましたから。」
そう,トマスさんの死は余りにあっさりしすぎていた。
あの場から逃げようともせず、いきなり死んで見せた。
どうしてもこれだけが理解できなかった。
推定なのはわかっている。
追い詰めてしまった自分の正当化かもしれないが・・・。
「いえ、間違いないでしょう。」
何にせよ後味悪いことに変わりはないが。
いや、この場合胸くそ悪いが正解か?
「さて、この3人はどうします?」
・・・え、俺運ぶの?
「貧弱な・・・といいたいですが、郷は私もキツいですね。では、マナとレメク様はここで待機していて下さい。私が地上まで行って応援を連れてきましょう。」
「いや、待て私が行こう。」
今まで黙っていたレメクさんがジャンヌを止めた。
「いえいえ、レメク様にその様なお役目・・・。」
ジャンヌの言葉を遮るようにレメクさんが指で指し示すその先には、鋭すぎる尻尾を生やしたベルナデッタさん。
「お任せします。」
助け船を俺から出して地上に行って貰う。
「宜しかったので。」
「この状況じゃしゃーない。」
「さようですか。」
ところでもう一点俺には疑問がある。
ついでだから訊いてしまおう。
「なんでしょう。」
「お前あのロープどっから持って来た?」
ベルナデッタさんは動けないにも関わらず縛られていた。
亀の甲羅を思い出すアレなヤツで。
「常備しているだけですが?」
なぜ?
どこに?
え・・・何その無言の笑み。
・・・怖・・・やっぱ答えなくて良いです。
お読み頂き、ありがとう御座います。
頂いたブクマ・評価をモチベに変えて、楽しく執筆させて頂いております。
読者の皆様に改めまして感謝を。
と、書いておいて何ですが、次話以降更新ペースが乱れそうです。
本業の忙しさに加え、ストックが切れかけていたところにインフルの直撃を受けまして(言い訳)。
せめて3章までは今のペースで、と思っていたのですが、申し訳ありません。
更新の遅くなる事も今後あるかと思いますが、変わらぬご支援を頂ければ幸いですm(_ _)m




