米到着
日が経つのが早い。
ハム君が来てからもう5日程経つ。
ハム君はあれから元気に過ごしている。
午前中の俺の訓練時間はキュオーンと遊ぶ時間だ。
「キュオーン、お手!!」
『ワオン!!』
「おかわり!!」
『ワフン!!」
「バク転!!」
『ワッホーン!!』
・・・。
ちなみに、ハム君のお仕事については現在保留だ。
アリスたんの教育で忙しいからね。
正直構っていられない。
餌やりだけは任せた。
少しでも俺の時間が欲しい。
「ア、リ、スたーーーーん!!」
遠くから聞こえるイケメンの撫で声。
鳥肌が立ちそうだが、待ちわびていたものだ。
アグネスさん、いなくて良かったね。
ジャックは、ああ屋敷の門兵に足止めされてらっしゃる。
「退け、貴様ら!!俺のアリスたんが!!」
・・・はよ行ってやらんと問題になりそうな気がする。
「すげえ量だな・・・。」
俵20はあるオリザ。
運送屋を雇って持って来たらしい。
入っているのは樽だが。
脱穀されているが精米はされていない。
よしよし。
「収穫時期って訳じゃないから、手に入れられたのは乾燥したものばっかりなんだ。一応今なっているものも1樽貰ってきた。まだ青くて身が若いんだが・・・。」
若干見た目は違うが、穂先に実るこの形状はやはり米だ。
「いいね、注文通りというか思ってた以上だよ。助かった。・・・つかこれだけの量高くなかったか?」
「貴重な薬を買うために溜め込んだ金が、おかげで必要なくなったからな。問題ない。」
ありがとう、ジャック。
持つべきものは金持ちの友達だ。
「それと、これ。これがないと食べるのに適さないらしいが。」
「石臼・・・おお!!忘れてた!!」
精米せんとね。
気まで利くのかこのイケメン。
最高の友人だ。
「ジャック、今日は暇か?」
「ああ。」
「じゃあ、ゆっくり休んでくれ。妹がつくる飯を食べて行ってやってくれよ。」
「アリスたんの手料理!?ぐふぅ・・・。」
、
ただしこれがなければ・・・。
えと・・・なんだ。
喜んで貰えて何よりだ。
長い旅路を戻ってきた兄妹水入らずを邪魔する気もない。
屋敷の侍女にジャックを任せ、ひたすら石臼で精米する。
中々パワーが要る。
「私がやりましょうか?」
ジャンヌか、・・・頼む。
ちょっと腕が痛くなってきた・・・って早っ!?
さてここからが時間との勝負だ。
酢と醤油と味噌。
これら全部に麹菌が必要だからだ。
よって麹菌をとっ捕まえる必要がある。
で麹菌の餌となるのが米だったりする。
野生の麹菌の捕まえ方はディクションに載っていた。
昔は有害な麹菌もいたらしいが、有害な菌はこの世界では精霊ではなく悪霊である為、精霊格納が効かないという不思議。
何と素晴らしきかな。
というわけで麹菌を捕まえてしまえば醤油と味噌も何とかなる。
つまり、麹菌をどれだけ早く捕まえられるかがパーティーの成否を大きく左右するわけだ。
当然捕まえ方も分かって居る。
ディクション有能。
「これがあれば異世界生活行っても余裕www」は嘘じゃなかった。
使うのは米ぬか、つまり精米した余りの方。
これを木の枠に入れ、灰汁を入れて布を被せる。
ジャックが急いでくれたおかげでパーティーまであと8日もある。
なのだが、いまできるのはこのまま放置のみ。
気が逸るが仕方ない。
しばらくは精米業務をジャンヌと進めてい・・・いや、ジャンヌに任せよう。
そうだ必要な材料を手配しよう。
タートルビーンと塩と小麦と米。
全部ある?
ふむ・・・あ、そうだ。大きな木の枠が必要になる。
ゴモラさーん。
「この忙しいときに・・・!!これで・・・どうだぁ!!」
流石の早さ。
背景に曙フィニッシュを幻視した。
いや、これ頭のせいだな。
結局麹菌が姿を見せ始めたのは3日後。
今が夏の終わりで良かった。
気温的に麹が集まりやすい時期だ。
カビを眺めてにやける俺をジャンヌが気持ち悪そうに見ている。
ふふふ。
今は何も言うまい。
さあ、行こうシプトンさんの所へ。
「これですか?」
めっちゃ顔しかめられた。
カビだしねぇ・・・。
ってそうじゃない。
重要なのは見た目じゃない。
精霊であるかどうかだ。
「うぅ・・・では、やってみます・・・え、ウソ・・・。」
どう?
「格納できました・・・精霊アスペルギルス?」
来た!!
多分!!
早速試してみよう。
まずは酢から。
酢は簡単に言うと酒を浅い入れ物で1日放置しておけば酢になる。
つまり酒を造る事になる。
ということで造っていこう。
米を炊く。
冷えるのを待って精霊注入。
からの精霊培養。
みるみる広がる米麹。
水と米を追加し、酵母・・・精霊サッカロミセスを注入&培養。
からの発酵促進。
あとは布を通して酒粕と酒を分離すれば・・・できた。
米を炊くのに時間がかかったのでもう日が暮れるが行けるこのスピード。
「そのオリザを置いて言ってくれれば明日私が来る前に炊いておくわよ?」
助かります!!
これなら明日醤油と味噌も余裕じゃなかろうか?
折角なので出来た酒を味見する。
ちょっと酸味がある。
ワイン酵母で造った酒は酸味が出ると書いてあったが同じ現象かも知れない。
どうせ酸っぱくするんだからいいか。
「澄んだ味わいね。甘みがあって・・・へえ。」
でしょ?
美味いのよ。
俺はワインより日本酒派だ。
何にでも合う、というのが素晴らしい。
なあ、ジャンヌ?
飲みすぎじゃね?
お前馬車の運転あるからな?
あと、酢の分がなくなるから!!
結局醤油と味噌は次の日に出来上がった。
麹さえ捕まれば製造工程自体は難しくない。
醤油は小麦と茹でた豆に塩と精霊3種を放るだけ。
味噌は茹でた豆と炊いた米に精霊2種を放るだけ。
発酵、熟成の手間暇も発酵促進で何とかなるというチート仕様。
醤油は正確には大豆を使わないと醤油と呼ばないそうだが・・・まあ、無視で。
折角なのでシプトンさんを招き、出来た調味料で料理を造る。
餃子と豚汁と白飯。
皮を造るのに苦戦するアリスたんを横目に唐辛子みたいなのを油につけてラー油擬きを造った。
ジャックもまだいたのでお裾分け。
奥様・・・もう何も言いません。
「んー・・・美味しい!!」
ジャンヌ、いつの間に箸の使い方覚えた?
「すごい・・・キュオーンにも食べさせてあげたいよ・・・。」
犬には塩分多すぎだろう。
「今までにない味でかつこの美味しさ!!今からパーティーが待ち遠しくて仕方ありませんわ!!」
奥様、プレッシャーかけるの止めて。
「これは・・・売れるわ!!」
シプトンさんは正直だ。
「ウマッ!?アリスたんのご飯ウマッ!!!」
黙れシスコン。
料理したアリスたんも嬉しそうだ。
しかし、醤油や味噌は香りがいい。
俺が日本人だからだろうか?
確かめてみよう。
家の扉を開けると柵を囲む侍女達。
ほら、大丈夫だ。
あー・・・アリスたん、すまぬ。




