ボウガン先生、出番です。
木の板にバイオトイレの設計図を書く。
といってもディクションで見つけたサイトの丸写しだが。
使うのはガラスペン。
インクをつけて書き、インクがなくなったらまたインクをつけて書く。
いちいち不便だこの世界。
当たり前の様にあったボールペンも、文明の利器だったのだと改めて実感する。
設計図をゴモラさんに届けて貰って俺とジャンヌは孤児院へ。
「マナウタ?どうしたんだ?」
「ああ、それが・・・。」
何て言おう?
「実は先日ここに来た者達が、とある組織に雇われた者達であるという情報がありまして。当主より密命を受け来た次第です。こちらの推測通りであれば、奴等を捕縛し、雇い主を吐かせよと。」
嘘が上手い。
当主の名を簡単にかたった気がするが・・・ま、いいか。
ジャンヌのことだ。
多分裏で手を回してるんだろう。
・・・
3日程通ったがチンピラ達は全く出てこなかった。
「どして?」
「え、いや、俺に言われても・・・。」
そうだよね。
奴等の目的は孤児院の立ち退きだったことは間違いないらしい。
裏にピラト商会が居るかどうかまでは分からなかったが。
事の発端は子供達が外を歩いていると、奴等とぶつかった・・・というありがちな奴。
「汚えガキ共が、俺の服が汚れちまっただろうが!!」
孤児院の子供にめっちゃ因縁つけて来たらしい。
慌てて孤児院の管理者であるミサさんが出て行き、頭を下げるもチンピラ共は弁償しろとまくし立てるだけだった。
多分ぶつかったのもわざとだな。
ところで孤児院というのはここでは地域貢献を名目に教会が設営している。
お布施をこんな風に使っていますよというアピールもあるんだろうか?
何にせよ、孤児院に廻される費用というのは少ない。
教会の優先順位として、まず教会だからね。
自分のところに使って余った金が回る感じ。
一方文明の進んでいない場所ではありがちだが、皆やたらと子供を産む。
子供が死にやすい、避妊具がないとか色々理由はあるらしいけど、それは置いといて。
結果子供は捨てられる。
孤児院はカツカツだ。
当然命を落す子供が出る程に・・・で教会がそれをアピって布施を募る理由にされるんだが。
話が脱線した。
要はこの孤児院は金がない。
男が要求する明らかに法外な・・・弁償金に対する法があるか知らんが、ともかく弁償金を払えず困っていたのだ。
「じゃあ、そうだな・・・1週間やるよ。その間に用意しておけ。」
で、1週間が経ったと。
当然、金なんて用意できない孤児院。
用意する必要もない気はするが。
教会に助けを求めるも、教会は知らんぷり。
裏で手を回されたのでしょう、とはジャンヌの意見だ。
教会はそれなりに権威がある施設。
自分の物件に手を出されれば、本来何某かの対応をする。
それをやらないと言うことは、多額の金を掴まされた可能性が高いらしい。
教会からすれば孤児院は少額でも消費しかしない施設。
なくなった方がありがたい。
ここで不幸な事故があって、施設が消えれば暫く消費が消えてお布施が増える。
当然新しい孤児院を後で建設する必要があるが、そこには最初子供達はいない。
金銭の消費は極力抑えられる。
逆に言えば新しい土地と施設が建つ位の費用を受け取ったという事だが。
そこまで欲しい土地なのだろうか?
「街から外れたとは言え公爵領、一つ離れた区画に住宅地がありますから。店を建てるにはいい物件ですよ。」
なるほど。
さて、チンピラ共再来。
彼らはここで本命の要求をして来たと。
この土地を寄こしな、って。
で、そこに帰ってきたジャック登場。
妹のいる孤児院に何してくれとんじゃワレ、とチンピラ共らに立ちはだかった。
チンピラ共を投げ飛ばし「覚えてろよ!!」を言わせて帰らせた。
そして懲りないチンピラ共は徒党を組んで翌日再登場。
焦るジャック。
にやけるチンピラ。
そこに何故か公爵家の馬車登場。
チンピラ共は逃げた。
やましいことをやっている自覚はあったらしい。
だったらどうせまた来んだろうと来てみたが、意外にも奴等はそれ以来姿を見せない。
「やはり、この馬車がいけないのでしょうか・・・?」
ジャンヌ的にはさっさと奴等をフルボッコにして雇い主を吐かせ、商会潰して終わりにしたいらしいが。
そもそも馬車見て逃げたわけだ。
その馬車で往復してたらそりゃ出てこないよね。
「困ったな・・・。」
「ええ。」
俺にもジャンヌにも余り時間を使えない理由がある。
俺はトイレットペーパーだ。
実は前回の紙すきは失敗した。
出来上がっていたのだが、問題があった。
網の代わりに布を使ったのだが、これがいけなかった。
紙が枠と布にべったりくっついたのだ。
そりゃそうだ。
金属網であれば密着性が低い上、くっついた紙を刃物で切ってとれるのだが、布だと一緒に切れてしまう。
網がないならいいじゃんと思ったが、何であれ選ばれる材料にも意味があるのだと実感。
回収後もったいないから使おうと思ったが無理だった。
使ったトイレットペーパーはひとまずもう1回溶かして放置している。
紙すき器を屋敷経由で発注。
もう一度トライしたいのだが、この件である。
ジャンヌは何かというと米・・・というかオリザだ。
ミカエスト王国の領地である、大陸の東に位置するメタエスター島。
オリザはそこの文化だ。
オリザの栽培方法は秘匿されており、輸入に頼るしか取得方法がないらしい。
畑に水入れるとか、思いつかなかったんだろうな・・・。
只の穀物扱いと言うこともあり、プロテスト公領地でも積極的に取得しようとするものはいない。
内陸にあるプロテスト公領地は海産物を取得するにも輸入に頼るしかないからね。
ジャックの言っていた魚との組み合わせの為だけに手に入れたりはしないのだそうだ。
つまり、オリザの取得は運送屋が運んでくるものを手に入れる位しか取得方法がない。
その為大量に手に入れるにはジャックのような伝手が必要とのことだ。
なんか欲望まっしぐらだなジャンヌ。
余り文句を言わないが、何度か食べさせた俺の持ち込み食料に心奪われていたらしく、あの味をもう一度、という感じらしい。
作れると分かった途端、我慢できなくなっているのだ。
紙どころじゃねえよ!?というのが本音っぽい。
何にせよ米がなきゃどうにもならんのだが。
そんなこんなでジャンヌのストレスはフルマックスだ。
先日のジャックの活躍もあり、その内訓練中に殺されかけないと思える程度に、午前の訓練は過酷なものになっている。
ジャンヌと言うより俺の寿命がヤバイ。
というわけでさっさとチンピラ共には出てきて欲しい。
御礼にボウガンで腕でも足でも打ち抜いてあげるから。
銃は流石にヤバイだろ。
殺す気は流石にない。
日も暮れて、今日も来ないかと諦めかけていた頃、事態が変わった。
道の向こうからわらわらと人が来たのだ。
やったぜ!
ボウガン先生出番です。
肩で風を切りながら来るそいつらをスコープで確認。
あれ?
先頭に見たことがある奴等がいる。
誰だっけ?
えーと・・・あ、思い出した。
クサイーズだ。




