そのⅨ
コンビニを出ると、いつの間にか黒い車が止まっていました。
「え、先生。まさかこれに乗るんですか?」
美春が驚きの声をだしました。なんとその車は大きさが普通の車の二倍もあるのです。
「そうだよ。」
そういう美春の言葉どおり、先生は車に入っていきました。
残された二人はどうするか悩んでいましたが、
「ほら、早く乗りなさい。さもないと二人とも留年にするぞ。」
こう先生に言われて従わない生徒はいないでしょう。
「おじゃまします…」
二人は恐る恐るといった感じで車内に入りました。
中は前後で向かい合う感じになっており、その間にはテーブルが設置してあります。先生は前側に、美春と千紘は後ろ側に座り、ドアを閉めたところで車は発進しました。
「さて、」
ここで先生は口を開きました。
「二人は魔術管理局が魔術による犯罪を捜査していることについては知っているかな?」
「はい。」
豪華な車内を見回しながら、美春が答えました。
「そして、魔術が上手に使える人が少ないから、水野原学園の選抜クラスの人も事件の捜査を行うことができる。ここまではOK?」
「はい…えー!マジで。」
ここで美春が現実に帰ってきました。
「美春、そういうはしたない言葉を女の子がつかうんじゃないの。」
生還後、千紘からのきつい突っ込み。
「警察官に君たちの手帳を見せたら、すんなり帰っていっただろ?」
二人はコンビニでの出来事を思い出します。
「確かに、敬礼までして帰っていきました。」
「それは、魔術事件だからだよ。」
そして先生は説明を続けます。
「警察はあらゆる事件に対応できる力を持っている。しかし、そんな彼らにも対応できないものがある。」
「魔術ですね。」
千紘が先生の言葉に続けました。
「そのとおりだ。そこで管理局の登場だ。魔術についてはこちらのほうが何枚も上手だからな。だから魔術管理局には警察官以上の権限が与えられている。二人とも、手帳の身分証明のページを見てご覧。」
そういって二人は手帳を開きました。
「そのページが水野原学園の選抜クラス在籍を証明するものだ。これがあると警察官と同じようなことができる。」
「え、それじゃあこれでケーキを無料で食べたり、泥棒しても怒られない!」
美春は目をお金のマークに変え、よだれをたらしています。
「美春、もしも乱用したら友達としてじゃなくて、人間的に侮辱してあげる。」
「大変申し訳ございませんでした!」
と、二人のジョークはさておき。
「さて、二人にはこれから先ほどコンビニで起きた事件の解決を手伝ってほしいんだ。」
待ってましたといわんばかりに美春がくいついてきました。
「先生。事件とは何ですか?強盗?殺人?それともセクハラ?」
「美春、最後のはちょっと…」
先生は呆れ顔です。
「管理局が担当する事件といったら、どう考えたって魔術がらみだろう。それで今回起きたのは、誘拐事件だ。」
「なーんだ。誘拐事件か。」
「そこ残念がるところかな?」
「千紘さん、そこ突っ込むところだから。」
そして先生は厳しい顔つきになり、
「誘拐されたのは生後三ヶ月の赤ちゃんだ。発光系の魔法で目くらましにあった隙に連れて行かれたようだ。」
そしてとんでもないことを言った。
「管理局側で犯人のいるところがわかっている。二人には少々危険かもしれないが、犯人逮捕に当たってもらいたい。」




