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お兄様・・・真実とまほろばの狭間で・・・の巻

こんばんわ、ついにクライマックス編に突入。

楽しんでいただければ幸いです。

  ◆

早まる拍動……きれる息……もう太ももが上がらないほど乳酸が固まり筋肉が悲鳴を上げる。

進まなくなった歩幅が完全に止まり、俺は両ひざに手をついて、その場にしゃがみ込んだ。

コントロールできない『ぜーぜー』と乱れる呼吸……軽い酸欠状態だ……運動不足が身にしみます☠

乗っていた暴走戦車?振り落とされてはや一時間……遥か彼方からはド派手な明滅や耳を劈く爆音、舞い上がる砂煙と共に人智を越えたバトルがくりひろげている事が容易にわかる。


――ごめんっ――


心で叫びながら砂煙が上がっている戦場に虚ろな瞳を向けた。

疲労と脱水症状が意識を朦朧とさせている……あれっ、ポケットが膨らんだ。


ごそごそとポケットがこそばいなぁ……ぎゃゃゃゃゃゃぁぁぁぁ!

水面の波紋が広がるように激痛が右ポケットから浸食していく!

「うふぃぅ」と声が聞えるとヒョイと赤髪がぼさぼさになって顔を出した赤髪のメガネっ子座敷わらしのヒナナが『ひと仕事やったぜい!』みたいに口角を上げて『ニャッ』と微笑み、何かグッドジョブとばかりに親指を立てている。


――あれっ身体が軽くなった……も、もしや、針治療♪


ミラクル元気が溢れるつぼに金の針が刺された為だろう、身体の筋肉の疲れが一瞬でほぐれていく……って超強力な武器、雨蜘蛛の剣を針治療がわりにつかわないでぇぇ(全力で痛いです(涙))

『よいしょ』とポケットの中からヒナナはひよりのグリグリメガネ(ヤタの鏡)を取り出して俺にかけろって可愛らしく全力ジェスチャーしてくる。


――すこぶる目は良いのだが


ああっ、ヒナナ、目を三角にして金の針をチクチクさせて脅すのは止めてください……はい、喜んでかけさせていただきます(涙)

完全に脅しに屈してしまう(涙)

手に持ったグリグリメガネを装着!少しフレームが小さいなぁ。


……うむ?


平坦な大地に陽炎が浮かび上がる。

陽炎が命を得るように徐々に物質が構築されていく。

かたちを得た物……とてもうらぶれた小さく小汚い小屋……そして、おぼろげに懐かしさが込み上げてくる。


心の何処かからそこに行けと呼びかけられているようである。

重い足取りながら一歩づつ進んでいた。

小屋は煉瓦造りの小さな小屋……もう、風化している朽ち果てたドアをくぐる。


中は思っていたより広く八畳程度……積もった埃と蜘蛛の巣に彩られた幸薄そうな空間、教科書に乗せてもよいほどの、誰も住んでいない家の見本みたい。


不思議に感じる箇所が目に入る。

不自然に取り外せそうな板が足元にある……ミステリー小説ならここを調べるだろうが。

嫌な予感がしたので外に出よう。


朽ち果てたドアから出ようとした刹那「お尻いや~ん」悪寒が走るほどの聞き覚えのある(悪い意味で(涙))フレーズが外から聞こえる。

おずおずと小さな窓からお外を確認♪


……ひいぃぃぃぃぃぃぃ!ってな、何だこのお尻がいくらあっても足らないほどの異様な数は!


目から脳内に飛び込んだ映像……極彩色豊なゲイおにぃ……数万……しかもパチパチと漏電してる大型の電柱タイプまで……ささったら裂けてしまいます(涙)


おやぁぁぁぁ、小屋に向って少しづつ距離を縮めてやがるぅぅぅ。

脳内の記憶ライブラリーによみがえる壮絶なお尻の痛み☠

選択肢は一つしか存在しない……屈んだ俺は取り外せそうな板を掴み渾身の力で矧ぎ取る!!うぉぉぉぉぉ、火事場の馬鹿力!!!

めりっと言う音と共に板が矧がれる。

宵闇の先に通路が見える。


ドカァァァァン!!


突然、小屋全体が揺れる……その揺れは貧乏ゆすりクラスより酷い揺れだ。

窓から見えるゲイおにぃ!!

あいつら体当たりして突破口を開こうとしてる……って入り口からもはいってきたぁぁぁ。


――えぇぇぇぇい、後はどうにでもなれぇぇぇえ。


ふぶきは飛びこむように地下の階段を駆け降りた……刹那、小屋の一部が崩れて将棋倒しのように煉瓦や廃材が入り口を塞いだ。


――退路が絶たれた。


それは進む事しか許されない選択肢……何だかバイオレンスなゲーム的にはバットエンディングになりそうな☠

その闇はかなり深くまで続いている……一歩づつ確かめながらひんやりとした階段を下りる。

壁越しに吊られたランプが時々灯っており、ぼんやりとした明りを供給してくれている。


――ランプに火が灯してある=誰かがいる=ドキドキ♪


水滴の落ちる事もない闇の通路……その先に一枚の扉が控えていた。

和の意匠が施された簡素な扉、その隙間から暖色の含んだ零れ明りが洩れている。


心臓が高鳴る……何かとても嫌な予感がする……

ただ、地上で待つゲイにぃの事を考えると全身の汗腺が開き脂汗がいつもの三倍のスピードで流れ出る……あの赤彗星の如きスピードで(涙)

佇まいを整え、ドアノブに手をかける。

古い自転車のブレーキのように『キキキッ―』と音が響く。

そこに広がる空間はとても広かった。


一点のくもりもなく、純白に壁が彩られ、装飾品も真っ白に統一されていた……ラボラトリーと言った感じだ……。

その規模に俺は驚愕してしまう……アール&ディ―なんて可愛いものじゃない……


純水のような透明の培養液が入った常に変化して形をとどめない球体が部屋中に浮かんでいる……その中には、真っ白な素肌と舞い散るように漂う漆黒の髪、身体を覆うようにまるまっている小鳥が数十体はいる(驚)

顔もスレンダーすぎるスタイルも同じだか……下半身についている(雄)とついていない(雌)


と入り乱れている……ってな、何ここは?


清廉潔白のイメージが強い純白の室内……宙を漂う培養液に包まれた大量の小鳥。

とても夢見心地……と考えると、もそもそとポケット越しに赤髪のメガネっ子座敷わらしのヒナナが俺の気持ちを察してか「うん」と頷きポケットの中に再び……ぎゃぁぁぁぁぁ!


激痛が走り思わず悲鳴が……あっ、仕事をやり遂げたぜ♪みたいにヒナナが

ウインクしてくる……いらぬお節介でござるの巻(涙)


「やっぱり来てくれたんや。うちは信じてたんよ」


幼い声音……その声は部屋の奥から聞こえた。

イントネーションは小鳥そっくりだが……声の質がまったく違う。

声の主を見定めるように俺は宵闇の先を睨みつける

返事もせず押し黙ったふぶき。


『カランッ』と缶を蹴ったような音が響く。生き物の気配がこちらに向ってくる。


「クククッ……アリ地獄って知ってる?」


その声音は何処か猟奇的で何か達観したような寂寥が含まれていた。。


「ここは、魂のアリ地獄なんよ……ずっとまったんやから……じゃけん、もぉ、うちの手からはなさへんけん」


ぼんやりと幻想的なランプの灯りが少しづつ声の主を浮かび上がらせる。

仄かな光に映し出された声の主は皮膚が爛れて目を覆いたくなる。

醜悪な姿は男女の性別もわからない……猜疑心に溢れた瞳、掻き毟られたか細い右腕は蛆が湧き、思わず鼻を押さえてしまうほどの悪臭を放っている。

ただ、ランプの灯火を柔らかく反射する黒髪……漆黒の闇を連想されるほどの長い黒髪はこの世のものとは思えない光沢と美しさ……後ろ姿美人コンテストがあれば優勝だろう。


「待ってたんよ……ずっと時も変わらずに……お兄様を……」


切望するような声、闇の中で悲しむ子供のように悲哀に満ち溢れている。

その声は俺の心をむしばむように闇の色を植え付けていく。

瞳から入る映像が脳を混乱させる。


恐怖……と言うものではなく、無意識の感情から慙愧の念が溢れだす。

とにかく落ちつけ……震える喉で一呼吸する。

うっすらだが目が暗闇に慣れてきた、ぼんやりと室内が見え始める。


僅かに相貌を上げて、記憶と思考が少し混乱した俺は一人呟くように言葉を零した。


「小鳥……この小鳥達は何なんだ……」


俺の面持ちを見て満足したように「ふふふっ」と無邪気な子供のような笑いが聞えた。

声の主を睨みつけた一瞬……目の前の化け物が憐憫の情をもよおす、泣きじゃくる小さな小鳥に見えた……見えるはずのない、知るはずのない幼少期の小鳥の姿。


茫然と凝視している俺に目の前の化け物ははにかんだようにも見えた。


「うちはな、小鳥やねん……閻魔小鳥……コピーを通じてお兄様は見てきたやろ。本来の閻魔家の三女の想像上の姿を。とと様に……閻魔大王にこの地に隠ぺいされて、うちは封印されたんよ」


見かけと声のギャップが凄すぎる……この化け物、声優さんがアテレコしているのでは?と思うほど可愛らしい声をだす。


「そこに浮いてるのは……うちが持て余した時間で造ったコピーや。うちの代わりに閻魔家でせこせこ動いとるやろ……そしてうちの餌でもあるんよ」


――う、うそ、こいつが小鳥……閻魔小鳥!それに小鳥達が餌だって!!かなりドン引き☠


そういえば……純白の室内の床に所々血痕がぁぁぁぁ……しかも、リアルに鉄分の香りが☠


「全てはお兄様を取り戻して、昔のように二人暮らす為……あの『ひより』さえお兄様の前に現れなければ……お兄様のご寵愛は私だけのものだったのに……」


黒く淀んだ怨嗟の念が言葉からにじみ出ている……ってご寵愛って俺の前世ってロリコンの近親相姦だったのかぁぁぁ、最低やん(涙)

その上、ひよりと結ばれているし……はっ!ひよりがいつも子供の姿なのも……(涙)


「そうそう、先に言っておくね♪」


凄く楽しみにしていた無邪気な子供のように溜まっていた思いが堰を切ったように言語として溢れ出る。


「お兄様を殺したのは・わ・た・し。ああっ、今でもお兄様を奪った瞬間は忘れない❤再び、私に向いてもらう為にひよりから切り離す必要があったから……それに、ささやかな、ふ・く・しゅ・う♪」


ドロドロの昼間のメロドラマかよっ!と突っ込みたくなる。

黒い気炎に包まれるように邪気に満ち溢れた小鳥と名乗る化け物……俺の知っている小鳥とは大違いだ……って俺の前世を殺したのはこいつなのかぁぁぁぁ(怒)


「お兄様のお肉……美味しかったよ♪てへ」


――『てへ』じゃねぇぇぇぇぇぇ――


この化け物、少しお茶目かもなどと思える自分に反省……目が慣れてきた、化け物の姿がはっきりと視認できるようになってきた。

だからこそ見えた……隠れるもう一つの人影。

俺の僅かな視線の機微に気がついたのか、小鳥と言い張る化け物はチラリっと横を見ると物影に隠れている何かに「かくれとらんで、はやく出てきなさい」と促す。


影がわななき震えながら一歩前に出てきた。

見間違う事はない、くりっとした大きな瞳は憔悴している……仄かな灯りに照らされた黒髪とかぐや姫と見間違うほどの端正な容姿……俺が知っている閻魔小鳥が弱弱しく俺を見つめていた。


「……ふーちゃん」


消え入りそうな言葉が柔らかな赤みがかった唇から零れる。

少し俯いた小鳥……とても申し訳なさそうに、悲しそうに後悔の念が身体中から溢れていた。

ふぶきの足は無意識に駆け寄っていた。


綺麗な男の娘、小鳥に駆け寄って、俯き小刻みに震える小鳥をたぐり寄せるようにぐっと抱きしめた。

鼻腔をくすぐる優しい香り。

数日間ずっと一緒に居た小鳥の香りに心が少し安心する。


「ご、ごめん……う、うち、始めはどうでもよかったん……だけど……ほんまにふーちゃんの事好きになってしもて……だけど、うち……オリジナルじゃないから……すぐに……食べられて死んでしまうから……だけど、ふーちゃんの事が……」


俺の胸まわりを力いっぱいすがるように強く抱きしめる。

小刻みに震える身体の体温がこすれるように服越しに伝わってくる。

しどろもどろした言葉に振り絞り、精一杯の懺悔と本音がミックスジュースのように入り乱れている。

俺は抱きしめる事しかできなかった。

言葉では説明できない愛おしさが思考と感情に埋め尽くされていた。



「ぎゃゃゃゃぁぁぁぁぁぁ!!」



大きな悲鳴に『ビクッ』と小鳥が大きく震えたが俺は抱きしめながら小鳥の黒髪を撫ぜて『大丈夫』と語りかけた。

継続する断末魔の様な声が部屋全体に響く。

小鳥と共に振り向いた俺は驚愕の眼差しをむける。

自称・閻魔小鳥と名乗っていた化け物がよつんばになって、もがき苦しんでいる。


その首筋にキラリと神々しく輝く金の針(雨蜘蛛の剣)が根元近くまでどっぷりと刺さっている。

床を見ると『テコテコテコ』と運動会のリレー選手のように全力でこちらに走ってくる赤髪メガネっ子座敷わらしのヒナナが俺の足元でダイナミックに飛びあがり抱きついてくる。


……ちらりっと俺を見て『良くやっただろ♪愛でろ』と催促している感じだったので、頭を撫ぜてやった。


『ニヒヒヒッ!』と口元を歪めながらうっとりとしているヒナナとは対象的に自称小鳥の化け物は金の針(雨蜘蛛の剣)の刺さった皮膚がジュ―と焼き爛れるように水蒸気のような白い霧が舞い散り、苦しみ悶えている……『時折、助けて……お兄様』と小声で漏らしている。

何故か心が揺れる俺がいる……。

何か決心をしたようにふわりっと俺の首に腕をまわし綿で包まれたような感触が広がると「愛してる」と囁きが聴覚に届いた刹那、唇に柔らかな感触に包まれる。

そして、ひょいっと離れると人差し指で唇をなぞる小鳥。

名残惜しそうにニッコリと微笑む。


「ふーちゃん……ありがとう」


頬に伝う涙……ペロッと舌をだして、申し訳なさそうに踵を返した。


「逃げて……うちはオリジナルと一緒にここで残る……だから……来世はふーちゃんと巡り合って……愛してもらいたい……」

後ろ姿……切なさが覆いかぶさるほどに知っているはずの小鳥の後ろ姿がブルブルと震えている。



ガタガタガタッ――



震度計が振り切れるほどの大きな揺れがこの地下室を襲った。

激しい振動に反応してぶつかり合う球体の培養液、投げだされるように床に落ちる小鳥のコピー達は目覚める事なく、空気に触れると灰塵のようにもろく塵に変化して崩れていく。


天上から降り注ぐ小石……振り仰いだ俺は直感で感じた……ここはもう長く持たない。

愛しむように小鳥は苦しむ自称小鳥の化け物の髪を撫ぜた……瞳は慈愛で溢れ、相好は覚悟を決めたように落ちついていた。


「コピーよ……うちを殺せば、お前が私になれるのだぞ……」


息が荒く苦しんでいる表情を浮かべながらも口角を上げてかすれた声で問う。


柔らかな微笑みを湛える小鳥はゆっくりと首を振った。


「うちはコピーなんやろ……だから……うちはオリジナルの気持ちが良く解るねん……多分、ほかの犠牲になったコピー達も理解してはずやわ……だから抵抗せいへんやったやろ……うちですらこんなに辛いのに……もっと長く生きてるオリジナルはもっと辛いはずやもん。裏切られて……幽閉されて、誰にも頼れずに……なにもできひん、うち……ごめんなぁ」


ぽろぽろと泣きじゃくる小鳥、爛れて蛆が湧いている右手を大切そうに愛しみながら胸元で抱きしめる。

その温もりは心も解凍させる本当に暖かい想いがふんだんにこめられている……化け物の瞳からキラリっと一筋の涙が頬を伝い地面に落ちていく。



ガタガタガタガタッッ――



更に揺れは激しくなる、軋む柱、亀裂が入る純白の壁。

立っているのもキツイ、本格的に地下室の崩壊が始まってくる。

逡巡している……今、地上に逃げ出す事に……『ぷすっ』……ぎぁぁぁぁぁぁ!


迷いの色を浮かべた俺に『ワチョ』と飛びあがった赤髪メガネっ子座敷わらしのヒナナの三回転ひねりチョコットキックが右目に炸裂する!

『ムキーっ』と全身で怒りのゼスチャーを織り交ぜて『助けにいかんか!このぼけぇ!』と全力で訴えてくる。


――ええぇぇぇい!後はどうとでもなれぇぇぇ!


俺は半眼ジト目で見上げるヒナナの服をつまんで胸ポケットにしまうと、抱きかかえ丸まっている小鳥の二人に駆け寄り、グッと掴み上げて渾身の力で二人とも担ぎあげる。


「ふーちゃん!」

「くっ……お兄様!」


二人の驚愕した相好をみる暇もなく、狙い澄ましたシューティングゲームのように天上から落ちてくるこぶし大の石を必死に避け、両足の筋肉がパンパンになりながら全力で地下室のドアを蹴り破る。

ランプの灯火が消えた真っ暗闇の階段を踏み外す恐怖を乗り越えて全力で駆けあがる……き、筋肉がさけそうですぅぅぅ(涙)。

俺の肩、賑やかだと思ったらいつの間にかチアリーダーちっくな服に着替えた赤髪メガネっ子座敷わらしのヒナナがボンボンを振りながら、ちょうちんブルマでお尻フリフリして応援してくれている。

もう少し……頑張れる気がするぅぅぅ♪


「どりゃゃゃゃ!」


肉体が自分の能力値を上回った瞬間!

出口を塞いでいた瓦礫や木材を渾身の力で蹴りあげる!

これぞ、火事場の馬鹿力であろう。

ぱっくりと光が見えた出口から人間大砲の弾のようなスピードで地上に上がり出た。


酷使しすぎた全身……巣で親を待つくちばしをあけた子スズメの餌をくれコールの大合唱ぐらい大きく全身悲鳴が上がっている。

柱が軋み上げた小屋から足がもつれながら飛び出た瞬間!

待っていたかのように重力に屈した小屋が崩壊した……助かった。

「ふぃぃぃ」と二人を降ろした瞬間……


化け物の小鳥が光に包まれ少しづつ身体が灰と化していく。


「あはは……うち、死ぬ時が来た……この醜い身体ともさよならできるんやぁ」


小鳥の化け物が振り仰ぐように空を眺めた。

少しずつ化け物の姿から幼い幼少期の小鳥の姿に形をかえていく。

駆け寄り抱きしめるコピーの小鳥の頬を優しく触れる。


「すまんなぁ。うち、夢を見てたのかなぁ……あの頃の姿に戻ってる……死ぬ時は美しい姿でしねるんやぁ」


化け物だった小鳥は完全に幼少期の小鳥の姿になっていた……ただ、少しずつ色あせていく生命エネルギー。


「凜お姉様に感謝やなぁ。あの金の針は怨念と生命を浄化する凜お姉様の究極の宝やもんなぁ、うち、最後は愛されて死ねるけん」


幼少の小鳥の頬に涙が伝っていく……純粋で美しい涙。

俺は無意識に小さな小鳥の傍で腰を屈め、コピーの小鳥から大切に受け取るように抱きかかえた。


「お兄様……ごめんなぁ。うち、ほんまに好きやねん。気持ちが抑えられへんかってん。お兄様に褒めてほしかっただけやねん……ほんまにごめんな……」


涙腺が緩んだようにどっと涙が溢れだす……微笑みかけた俺は優しく黒髪を掻き分けて頬が触れ合うように抱きしめた。


「お兄様……ほんま……愛してる……ごめ……んなさい……」


ひっくひっくとむせび泣く小鳥の背中を優しく撫ぜる。


「死なせないから」


小鳥の耳元でそっと囁いた……そして、俺の中にあるこいつが大好きだったお兄様の魂に願いかける。


「お……兄様」


小鳥は驚いたように詰まらせた声で呟いた。

コピーの小鳥もヒナナも俺を見て驚愕している。

光……とても暖かな……ほっとする柔らかな光が俺と小鳥を包み込む。


静かな湖面に降り注ぐ満開に咲いた夜桜が舞い散るように俺の身体の中から力が放出される。

その光源……俺の魂花が大きな花を咲かせて、消えそうな小鳥の身体に光を流し込む。


パリッ……


小鳥の首筋の金の針がビスケットのように音をたてて砕け散る。

やがて渡りきったように光が弱まると同時に小鳥を抱えきれなくなった俺は腰が砕けたようにその場にしゃがみ込んでしまった。


魂や本能が感じて俺の思考に伝えていた……もう、俺の生命が尽きると……

光は俺の生命エネルギー……そして、小鳥に注がれた……まぁ、もともと、列車の行き着く先は地獄だったから、少しだけ人生楽しめたかな……あっ、心配そうなヒナナが廃材を蹴り上げたミラクルなスーパージャンプで俺の肩にしがみついてきた、可愛いやつめ❤

一人得心した俺に小鳥が申し訳なさそうに仰ぎ見てくる。

しかし……もう一つの問題が発生していた事を全力で思い出した。


「お尻いや~ん」


……彼はわざわざ待っていてくれたようだ(涙)

現実にかえってしまう俺……残りの生命エネルギーで出来る事……俺の心意気をくみ取ったようにヒナナは肩から飛び降り、ダブル小鳥の元に走って行った。

ちらりと振り向いたヒナナが見せた面持ち『ふぶき、命を張ってる男性ってカッコ良い』といった瞳だった。

もう、小鳥達(コピーの男の娘♪)を守る為にはこうするしかなかった……『逃げちゃだめだ』と言い聞かせる、俺は大きく息を吸った。

そして、渾身の雄たけびをあげながら精根尽き果てた身体をものともせず煌びやかに輝くゲイおにぃの集団に突っ込んでいった。

もし、近くにきみがいてるなら耳を澄ましてほしい……ほら聞えるよ♪

『ぎゃゃぁぁぁぁ』と木霊する俺の断末魔とうっとりと『お尻いや~ん』と桃色の吐息を吐いている極彩色な奴らの歓喜の声が……☠


いかがでしたか? この作品は四月に日刊コメディ部門40位になっていましたが、新作のたんぽぽ荘も5月18日に日刊コメディ部門34位という結果でした。

これも皆さまのおかげです、ありがとうございます。

えんま家のひとびと、たんぽぽ荘をはじめ、ご意見、感想お待ちしております。

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