↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/4

プロローグ

その女は空を見上げている。

雲一つない青空に、脱力して息をついた。

見たことのある景色、長く生きても必ず変わらない晴れの日の空を眺めて、その女はふわりと笑った。


空に見とれている女を見ていた村人が、一拍遅れて足元の「それ」に気がついた。

真紅の薔薇が、咲き誇っている。

今まで目にしたことのない村人は、腰を抜かして、それから、



あたり一面に甲高い声が響いた。

屋根に止まっていた鳥たちは羽ばたき、部屋の中にいた村人たちがだんだんと外に出て来る。


「ねぇ、そこの君」


空を見上げていた女がいつの間にか、村人を目で捉えていた。大きな帽子がずれて目元が隠れる。村人はもはや、何をすることもできなかった。恐怖で足がすくんでいるのだ。

一歩、一歩、ゆっくりと近づいてくる女に恐怖を覚えない人間などいない。

女が、女より背が高い杖を地面につくたび、バラの花弁が数枚落ちていく。


「だれにも言わないでおくれよ」


女の指が村人のおでこに触れた。少し温かい感触を覚えたと思えば、村人はぱたりと倒れる。その瞬間、透明な膜に包まれた。だがそれも一瞬で弾け散り、残ったものは

                      

ーーー頭部がなくなった血まみれた人間と、それを初(・)め(・)て(・)見る村人たちだけであった。


魔女である。魔女がやってきた。平和な世界に、ただ一人の魔女が。

誰もが慄く。震撼する。そのはずだった。


だが、だれもわからない。魔女がいることは誰も知らない。何故ならそこに魔女はいなかったから。


わけも分からず、一つの村から一人ずつ殺されていく。あるのは、殺しをして回る【人間】がどこかにいるという事実のみ。何もわからないことが、村人たちの恐怖をより煽る。


それでも、空はまだ明るい。

まだ間に合う。



ーーーそう、まだ、猶予は残っている。


「ふふ、楽しませてくれ」


魔女はローブを翻す。揚揚とした足取りで、彼女は最後の村から去った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。