第26話 終
村長が願った。村人総出で、都からの客人の見送りをした。ヨシカはクロスの乗った馬車を見たが、クロスの姿が見えなかった。
「とんだ騒ぎだったわね」
メイが腰に手をやりながらいった。
「そうね」
「もうとうぶん、都から人は来ないでしょう」
「そう、でしょうね」
寂しさがないといったら、嘘になる。残念そうな横顔のヨシカを見てメイは思うことがあったが、知らないふりをした。
「ヨシカ、これ。ちょうどいいのが店にあったから」
タオリがカゴを持ってヨシカに声をかけた。カゴの中身は白い布で、コチの頭巾のためのものだった。
「このままふもとのムカエギに持って行って」
「ありがとう、助かる。すぐ、届ける。じゃあ、メイあとで」
「無理しちゃだめよ。病み上がりみたいなもんなんだから」
「大丈夫、歩いて行くから」
「倒れてたら拾いに行く」
メイに手を振り、キシャ山に向かった。昨日の出来事が昨日の出来事じゃないような不思議な感覚だった。動かなかったからだも、治り、さらに軽くなっていた。だから走っても大丈夫そうだった。また、毎日が続いていく。いつ終わるかわからない毎日が。
「ヨシカ」
ユーマが追いかけてきた。
「どうしたの、ユーマ」
「半月がお菓子くれた」
菓子のはいった紙袋をユーマは腕いっぱいに上げてヨシカに見せる。
「よかったね。お礼もいえてよかった」
ユーマは照れた。
「お菓子もらったときにね、半月がこれをヨシカに渡してくれって」
「わたしに?」
白い紙に包まれたちいさいものをユーマはヨシカの手のひらに置いた。
「ありあわせの取り急ぎで申し訳ないけどって」
「なんだろう」
「一方的な約束だって。じゃあ、みんなとお菓子食べてくる」
「はしゃいでこけないようにね」
ヨシカの声はもうユーマの背中に届いていなかった。ヨシカは包みを丁寧に開いた。現れたヌカエの指輪が太陽の光強く、ヨシカのそばできらめいた。
完




