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冒頭だけシリーズ  作者: 江菓
7/12

7品目 コブサラダ殺人事件

今日はコブサラダでも作ろうかな〜もう仕事行かなくていいし。


澤田の元先輩が死んでから少しの間は心なしか澤田の元気がなかった。まぁ、尊敬してた人がこんな死に方して、殺したのは自分の部下の1人となると精神的に追いやられるのも無理はない。今も助手席でため息をついている。自分が落ち込んでいたら部下に示しがつかないと、できるだけ明るく接してくれているが時折見える疲れは隠しきれていない。

「はぁ…そうだ、松尾。今日は用事があったんじゃないか?」

「えっあぁ、彼女の誕生日で…仕事が入ったからごめんねって言ったらいいよって言ってくれました。優しくてとてもいい人です。」

「そうか、仕事をわかってくれてる人なんだな。」

「はい。彼女には頼ってばっかりです。」

そういうと、澤田はニコニコとしながらそうかそうかと言ってくれた。顔は怖いが、優しく人に寄り添うのが上手な澤田を松尾はとても尊敬している。たわいもない話をしながら、現場に向かった。

現場は高校の近くにあるマンションの一室。野次馬の中にも何人か学生服が見えた。

「はぁ、学生はさっさと帰らせろ。子供がみていいもんじゃねぇ。」

「はい!すいません!」

澤田は近くにいた部下の1人に軽く怒鳴る。そういえばこの近くの高校は澤田の娘が通っている高校だ。部屋に行くと、部屋の前には第一発見者の女子高生がいた。

「お父さん!」

「な、なんで楓か!?」

楓と呼ばれた女子高生は泣きながら、澤田に抱きつく。なんと第一発見者は澤田の娘、楓だった。

「はるちゃんが…はるちゃんが…なんで…」

「大丈夫、ゆっくり話してみろ。」

泣きじゃくる娘を澤田は落ち着かせ、話を聞く。

「今日、はるちゃんが学校来てなくて…メールしたら、最近大学のために一人暮らし初めて引越し中で…荷解きを手伝って欲しいって…ここに呼ばれて…鍵が開いてて…中に入ったら…はるちゃんが…」

詰まりながらもしっかりとどうしてここにいるのか教えてくれる楓をそうかそうかと頷きながらしっかりと聞く澤田は刑事の顔と父親の顔両方を上手く使っている。

「普通なら気が動転して110番できないのに…」

「さすが、澤田さんの娘さんだ…」

周りにいた他の刑事が親子のやり取りを見てそう口走っている。確かに、高校生ましてや女子高生が冷静に110番できることはとてもすごいことだ。大人でも死体を見ると冷静さを無くす。ましてや知人、友達の死体なんて気絶してもおかしくない。そう考えると彼女、楓の冷静さは父親である澤田の教育の賜物なのだろうか。澤田は娘を近くにいた女性警官に託し、現場であるマンションの一室に入った。

中に入ると、玄関からすぐにリビングが見える構造で、荷解き中とは思えないほど殺風景で荷物と思われるのはリュックサックひとつだった。リビングにはブルーシートがひかれており、その上にはやはり白い小さな折りたたみの机がある。机の隣には胸の部分の肉が削ぎ落とされ肋骨の見えた楓の友達、はるなの死体がごろりと上向きで寝っ転がっていた。机の上には四角く切られた野菜と肉が四角い皿に綺麗に盛られたサラダが置いてあった。こういう形のサラダは確か

「コブサラダ…だっけか…」

「封筒は?」

「こちらです。」

澤田は近くにいた刑事から例の封筒を受け取る。澤田はそれを松尾に渡し、読むよう催促する。封筒には『コブサラダ』と書かれており、封筒を開いて中から3つ折りの紙を取り出す。見るのも腹立たしい小説のような文章が見える。

『彼女は野菜が好きだった。なんでも食べるが肉や魚よりも野菜が好きで一番好きな料理はサラダだった。彼女は野菜の美味しさを知って欲しくて、料理の道に進みたいと願っていた。しかし、親にそれを言うと反対されてしまった。理由はよくある親のエゴ、安定した職について欲しいという願いからだった。彼女はそんな親に痺れを切らし家を飛び出した。行く宛もなく街を歩いている時、私と出会った。料理をしていると話すと、教えて欲しいとすがってきた。私は悪魔じゃない。快く、彼女の願いを聞きいれ、一緒に彼女の好きなサラダを作った。様々な種類のサラダを作った。楽しそうに時には難しい顔をして彼女はサラダを作った。彼女は知らないサラダのレシピがしれて嬉しいと、サラダを食べながら話していた。いい料理人になれるよと声をかけると、とても喜んでいた。私は、一つだけ教えていなかったサラダがあった。コブサラダだ。切って盛るだけのサラダでも様々な種類があってついつい忘れていた。材料が残っているかと冷蔵庫を見ると1番必要な鶏の胸肉がなかった。ちょうど目の前に”いい鳥”がいたから、殺して、コブサラダにしてみたよ。松尾さん、食べてみてくれ。隠し味は”彼女にあるはずだった未来”だよ。ぜひ、味わって食べてくれ。神田』

「こいつ…!!!」

「胸糞悪い野郎だ…」

神田は少しずつこちらに近付いている。次は自分かもしれない。松尾は封筒に手紙を戻し、近くにいた刑事に渡す。死体が運び出されるのを見送り、現場の捜査を始めた。

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