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エピローグ

 次の日、私は若狭教授の研究室を訪ね、前崎さんの推理をパソコンで纏めたレポートを提出しました。

 研究室内は大量の書類や本が散乱し、雑然としています。紙で埋もれたような状態の机を前にして、前崎さんの答えを興味深そうに見た教授は、キノコ狩りをしていたのが教授自身であると当てられたことに驚いた反面、


「中々鋭いが、まだまだだな」


 と笑みを零しました。


 結論から言うと、前崎さんの推理は、少しだけ違っていた部分があったらしいのです。


 それは、弟が変装して兄の家に行った後の行動でした。

 兄を殺害した弟は、目撃者が居なくなるのを待ってから、自宅に帰ったと前崎さんは推理していました。しかし教授によると、実際は殺害後、弟はすぐに森を通って、自宅へ帰っていたそうなのです。

 そしてその姿を、キノコ狩り中の教授が見かけていたことが、逮捕の決め手となったらしいのです。

 死体と長時間一緒に居るのが耐えられなかった犯人は、リスクを犯してでも自宅に戻りたかったのだろうと、若狭教授はその行動を説明されました。


「――ま、犯人の心理は、そう簡単じゃないということだ」


 そう言って、教授はしたり顔で話を締めました。

 しかし私は内心、前崎さんの推理が微妙に外れたことに、どこかホッとしていました。

 犯人の気持ちが完璧に分からなかった前崎さんは、むしろ健全な人だと逆説的に証明されたような気がしたからです。


 レポートを提出して教授の研究室を出た私は、足取り軽く、部室へと向かいました。

 今日もまた、曇天を背にして本を読みふけっているであろう、ちょっと意地悪でニヒルな、あの先輩の姿を思い浮かべて――――――――――――――――――――了。


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