第2話 また走れメロス
また、羊小屋で目を覚ました朝だった。
小屋の隙間から差し込む、薄明の光。
雨の音も、寸分違わず、同じだった。
メロスは、今度こそはと、気合を入れ直した。
「川の氾濫は、分かっている。今回は、上流の浅瀬から渡る」
計画通り、氾濫を回避した。
「よし、いい調子だ」
だが、上流に回ったせいで、予定より遠回りになった。
体力の消耗が、いつもと違う形で蓄積していく。
やがて、山賊に襲われた地点が近づいてきた。
「今度は、位置まで分かってるぞ」
先回りして、山賊の縄張りを避けるルートを選んだ。
だが、そのルートには、思わぬ落とし穴があった。
崖崩れに巻き込まれ、足を挫いた。
「なんでだよ!」
痛む足を引きずりながら、メロスは走り続けた。
刑場が見えてきた。
「間に合う……!」
セリヌンティウスの姿が見える。
だが、あと一歩というところで、力尽きて倒れた。
「メロス……!」
友の悲痛な声を、また最後に聞いた。
世界が白く塗りつぶされる。
気がつくと、また羊小屋の中だった。
「また、かよ」
メロスは、天を仰いだ。
一度目とは違う失敗。
だが、結末は同じだった。
「何が悪かったんだ、俺は」
体力配分か、ルート選定か、それとも、そもそもこの三日間という枠組み自体が、呪われているのか。
分からないまま、メロスは、また走り出す準備を始めた。
激怒は、まだそこにあった。
だが、その熱の中に、冷静な分析の芽が、少しずつ生まれ始めていた。




