帰国
「えっと光明さま、久我葵ってあの久我葵ですか?」
車の中で話しているとまだ高校生の新米陰陽師の彼女がそう聞いてくる
「もちろんその久我葵だよ、彼が君の通う高校に転入してくるってわけ」
僕がそういうと彼女は驚きと不快感に満ちた表情を見せる
あれ彼って結構人気のあるイメージだったんだけど違ったかな…
「あの方って昔は神童だ天才だともてはやされてましたけどもう何年も活躍したなんて話聞きませんよ…? 少なくとも私たちの世代では聞いたことがないです。それにあの人陰陽師の仕事よりモデルだなんだの仕事ばかりしてるじゃないですか。どうしそんな人がうちの高校に…?芸能系とかの方がいいのでは…?」
僕の親友に対しての明らかな嫌悪感が伝わってくる彼女の口調に僕は思わず笑いそうになってしまう。少なくとも僕の周りでは彼は人気なんだけど事情を知らない子たちからはここまで人気ないとはね…
確かに彼はここ何年も陰陽師として大した活躍はしていない。というのも彼は才能自体は疑いようもないのだがあまりに気分屋なのだ。興が乗らないと本当に働かなかった。そのうえ過去にその才能ゆえにいろいろな面倒ごとにあったせいで完全にやる気がないのだろう。まあ海外にいたときに少し活動したらしいけど…
「知らない?彼はここ3年くらい海外にいたんだ、だけどついに帰国することになってね。こっちで学校に通うにも同級生に僕の知り合いがいた方が都合が良くてさ。それに一応彼も陰陽師だからね。まあ君は彼のこと苦手かもしれないけど陰陽師としての才能は確かだから彼との関わりは君にも損ばかりではないと思うよ」
「そんなにすごい方だったんですか…? 陰陽師としては落ちぶれたという噂しか…。それにそんなすごい才能があるならなおさら活動するべきでは?それにあんな名門に生まれて才能もあるなら…」
「はは…当時は僕も小さかったけど名門中心に大騒ぎだったのを覚えているよ、どうにかしてその子を身内にしたいってね。 小さい頃からお見合いの話だってすごかったんだから…。まあその才能を生かせよというのは同意見だけどね」
僕がそう告げるも、彼女は僕の言うことを全く信じていないことがひしひしと伝わってくる。自分の親友ながら悲しくなると同時に彼の今後の学生生活に不安を感じるよ…
まあでも実際当時の彼の情報は多くを名門家が独自で集めたものだし、そのうえ秘匿したから知らない人がほとんどなのかもなあ… それに彼はここ何年も実績ないし…
そんな風に僕が少し悩んでいると僕の様子を見てか彼女は不安そうに
「申し訳ございません。失礼なことを申し上げたでしょうか…」
「いや大丈夫だよ、成果のないあいつが悪いからね。 あーけど一応彼も家格としては上位だから、正式な場ではそんな口調ではだめだよ。陰陽師としての実績の有無よりも家格を重んじる方々は多いからね。気を付けた方がいい。まあ彼本人はそんなの全く気にしないだろうけど。 っとこんなことを話していたらもう着いたよ」
僕がそう告げると彼女は再び申し訳なさそうに言う
「いまさらですがよかったのでしょうか私なんかがわざわざ光明さまに送っていただいて…」
「気にしないでよ、あいつの同級生になるように頼んだのは僕だしね。うちの分家でしかも同年代というのはなかなかいなくてね。だから君とも直接話してみたかったんだ」
彼の持つ能力や精霊に興味を持っている名家連中も多いから念のためうちからせめて学校内だけでも監視をつけておくべきだからね。帰国してそうそうに面倒ごとになんてなったら彼もますますやる気がなくなるだろうしさ…
「まあ特別なことをする必要はないよ。君は普通に過ごしてくれればいいんだ。さて僕はここまでだ、後はうちのと打ち合わせなんかをお願いね」
「光明さま色々とありがとうございました。」
そう言って車を降りると彼女は小走りで去っていった
「さて僕も色々準備しないとなぁ…」
彼に最後に会ったのは1年前になる。モデルかなにかの仕事で一時帰国したときのことだ。海外にいるときに向こうのエクソシストと一緒に陰陽師としての活動をしたと聞いて僕はもしかしたらと期待してしまう。ただ彼の霊力やら精霊やらを狙ってる人は少なくないからそこのところの打ち合わせをしなきゃいけないかな
けど彼普通に言い聞かせても聞いてくれないからなあ
それに向こうでもいろいろとやらかしてくれたらしいからね、、よそも情報つかんでたりしたら面倒ごとになるかもと思うと今から胃が痛いよ…
「ねえ柳、今の君と葵ならどっちが強いかな?」
運転手兼護衛の柳は僕が幼いころからの側近である。彼は実力、才能ともに間違いなく一級品であるが幼いころから一度も葵に勝つことはできなかった。
「もちろん私が勝ちます、と言いたいところではありますが正直わかりませんな。あの方の才能はそれほどのものでしたから。」
やはり惜しいことをしたなと実感する。葵には間違いなく歴代でも最高級の才能がある、彼の帰国が本当に楽しみだよ。
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「久しぶりの日本だ!やっぱり空気がおいしいよ!なあ世良くん!」
俺は1年ぶりの日本に思わずテンションが上がってしまう。しかしここであることに気づいた。
「てか誰も出迎えに来てくれてなくない…? 1年前より寂しいんだけど…。 俺の正式な帰国だよ…?」
帰国した直後の上がっていたテンションが急に下がり始めたのが自分でもわかる
するとその様子に気づいた世良が苦笑いしながら
「紬ちゃんが学校があって出迎えに来れなくてね、それで一人だけ抜きでやるのも可哀想ってことで久我家での出迎えはなしになったんだよ。一応君にも事前に伝えたけどね。」
そういわれてみると平日だったことにいま気づいた。とはいえ出迎えがないのは寂しいなぁと思っていると
「あーでも雪ちゃんが迎えに来てくれるってよ。まあこれも昨日伝えたけどね。」
「マジか!それならいいんだよ、なんだよ誰もいないのかと思ったよ!いやー雪ちゃんが来てくれるなんて感激だよ」
「葵…君って本当に単純なやつだね。」
なんだこいつめちゃくちゃ言ってくるな…それに帰国した途端あたりが強くなったな、悲しいよ俺は
まあでも世良がいないと帰国の方法もあやふやだったからな、おとなしくしとこう
「なんか不満そうな顔したと思ったら急に覚悟決めたみたいな顔になったね…君。」
改めて考えるとこいつよく俺についてきてくれたな… 一人で海外とかだったら行き方も帰り方もわからなくて詰んでいたかもな とりあえず頭でも撫でてやろうか
「くだらないこと考えてないで雪ちゃんのところへ行こうか、待たせるのもよくないからね。彼女も君に会いたがっていたし」
「半年ぶりだからな!そういう俺も今からみんなに会うのが楽しみだよ!」
「ん-君のとは少し違うと思うんだけど…まあしょうがないか…」
俺が楽しみでテンションが上がっているというのにこいつはなんか冷めた目で見てきやがる
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「雪!久しぶりだな!1年ぶりだろう、元気だったか?」
「葵!そっちこそ海外で大丈夫だったの? あとあなた全然連絡くれないじゃない!」
そういわれると確かに連絡をしていなかった気がする… まあしていなかったものはしょうがない
「いやあ、ついつい連絡を忘れてしまってね。まあ今度から気をつけるよ、海外に長期で滞在することなんてそうそうないだろうけどな」
俺がそう言うと雪は一瞬疑いのまなざしを向けてきたが、すぐに得意げな笑顔になる
「まあこれからはこっちに戻ってくるんだもんね、私も葵が転校してくる高校に通ってるから色々教えてあげるよ。とりあえず車に乗って」
俺たちはそのまま車に乗るとこれから通う予定の学校の話や近況を聞いた。
どうやらこれから通う学校は陰陽師関係者が多く通う高校であるらしい。卒業後は陰陽師になるものもいれば普通に進学や就職する人もいるという話だ。なんでも一般の試験と陰陽師としての活動のどちらでも評価してくれるようでおかげで俺は過去の実績で試験なしで編入できるってわけだ。
ちなみに俺は2年生なわけだが1年にはうちの分家なんかもいるらしい。
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「そういえば葵向こうで新しい精霊と契約したって言ってたよね? どんな子なの?」
はい!待ってました! この質問をされるのが飛行機に乗った段階で楽しみだったんですよ!向こうには日本じゃ絶対に出会えないような子たちとも出会えたからね
海外にいって一番良かったことはこれだわー
「まずは天使ちゃんを紹介しよう、ミカエルさんです!」
「え…?」
ん、もっと盛り上がるかと思ったけどな…雪だけじゃなく運転手さんも心なしか引いているぞ
「えっと…そのレベルの精霊って国際問題にならない?」
はーなるほど、そこの事情の説明がないとまるで俺が外国から最上位の子をさらってきたみたいに見えるわけだ。
そこで俺はミカエルと契約した経緯を説明する。
「ん-つまりまとめると、イギリスのエクソシストに協力して活躍した報酬として天使との契約のチャレンジ資格をもらってやってみたら契約できちゃったってこと…?」
「そうなんだよね、まあ天使側が選んだってことで問題はなかったから大丈夫だよ。」
とはいえ改めて振り返ってみるとなかなかすごいことをしてるかもな…
日本じゃあ天使との契約者自体ほとんどいないからな
まあ俺も天使と契約することになるなんて全く思ってなかったけどね
なんとなくで契約しちゃったけどうちの精霊たちとうまくいかなかったりしてたらやばかったかも…
「色々言いたいことはあるけどまずはってことはほかにもいるのよね?もうまとめて教えてよ…」
「まあ使い魔とかは言うまでもないとして、大物?でいえばあとは一匹だけだよ。フェンリルの子どもなんだけどね、さっき言ったエクソシストの案件で密猟者から保護した子なんだよ。本当はイギリスで保護してもらおうと思ったんだけどこの子にはもう家族とかがいなくてね。放っておけなくてね」
いま思い出しても本当に可哀想だ。特にフェンリルのような貴重な幻獣種の子どもは狙われやすいからこういうことが稀にとはいえ起こるらしい。
「はは…まあ天使様よりはマシ…なのかな…」
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「さ、着いたよ有栖川家のお屋敷」
相変わらずのでかい家だな、さすがは超名門
うちも家格としては別に負けちゃいないらしいけどこの屋敷の差を見ると悲しくなるよ…
「お帰りなさい葵、よかったのかいまずこっちに来て。別に僕は明日とかでもよかったんだよ」
「いいんだよ今帰っても紬は学校らしいからな。あいつが帰ってくる頃に合わせて帰れば文句ないだろ」
確かに言われてみればこんなに急いでここまで来る必要はなかったかもな。まあでも面倒な報告なんかをついでに済ませちまおう。雪のリアクション的に好印象って感じではなかったからな
「へー…君は向こうでもまたいろいろと活躍してたみたいだね、おかげで僕はしばらく忙しくなりそうだよ。けどこっちではもう少しおとなしくしてもいいんだよ。まあ陰陽師として復帰するなら大歓迎だけどね」
なんかどいつもこいつも嫌味ばっか言ってきてないか… やっぱ天使持ってきたのはさすがにやりすぎだったか… 陰陽師にもやる気が出れば復帰するんだけどな。
連中はどろどろしすぎて関わりたくないんだよ…
「ところでさ君さ、結婚したい人とかいたりする?」
ん…?こいつなんだ急に まさかこの質問にはなんか裏があんのか…
こいつそういうところあるからな、油断できねえぞ
「深いこと考えてそうで悪いんだけどさ質問はシンプルだよ。君に結婚したい人とかはいないの?いまだに見合い話とかは来てるでしょそれも名家からね。君と君のその精霊や才能はそれだけ魅力的ってことだよ」
実際見合いの話が来ているのは本当の話だ。 陰陽師の使う術には霊力というものが必要であり、それは後天的にも育つが遺伝による影響が大きいとされる。 俺の霊力はトップクラスらしいから陰陽師としての働きをしていなくても人気の種馬ってわけだ。
「葵のお父さんの総一郎さんはとてつもなく優秀な人だろう。あの人も若い頃から大人気でね、けど選んだのはほとんど一般人だった君のお母さんだよね。そのうえあれだけの能力を持っていて珍しく側室を取らなかったわけだ。そのおかげで彼の才能なんかは久我家にしかつがれてない。つまり名門派閥としては今度こそどうしても君が欲しいと考えるかもしれないなあって、だって君は総一郎さん以上の才能なんだから」
親のこういう話聞くのってなんでこんなに不快なんだろうなあ… 父さんが昔モテてましたなんて言われて喜ぶとでも思ってんのかよ
まあ父親が優秀な種馬だからその息子もって話かな。まあない話ではないだろうね。
側室なんかは確かに珍しいからな、そのせいで散々嫌味言われたぜ…
「まあ深く考えなくていいよ、親友の僕としては自由にやってほしいからね。ただ君は危機感がないからね、一応忠告ってことだよ。それはそうとうちの分家の子が君の同級生になるからよろしくね」
確かに言われて初めて状況に気づいたな… しかし帰国早々に結婚がどうとか聞かれるとはね、まあ自分の置かれてる状況を改めて考えろってとこか
「わかったよ、光明。まあ結婚とかは別としてさ俺も自分の今後をもう少し考えるよ。」
とりあえずはイギリスから天使持って帰ってきたことをなんて父さんに説明しようかな… 光明でさえこのリアクションじゃどんだけ怒られるか分かったもんじゃねえぞ…
一旦今後とかはいいから帰宅後を考えよ!
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