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現実世界で世界を救った俺、異世界で魔王に転生したみたいだけどなんやかんや世界を救うはめになりそう ~世界を救う魔王の英雄プロトコル~  作者: 足本 弘
第三章 特別教育機関

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第三十八話 結果連絡

アオが部屋に戻ったのを確認してから、ロッドは静かに扉を閉めた。


 他のメンバーが待つ特別教育計画のために設けられた会議室に戻る。

 普段は使われることのない空間だが、内部の端末と記録装置は常に待機状態にある。

 外部回線は遮断され、この会議室で交わされた内容が外に出ることはない。


 全員が着席しているのを確認してから、ロッドが口を開いた。


「……正直に言っていいか?」


 軽く肩をすくめる仕草。

 会議が始まった合図でもあった。


「ここで、あれだけ魔法を扱える人間を見るとは思わなかった」

「七歳、だよな? 記録、間違ってないよな」


 冗談めいた口調ではあったが、笑う者はいない。


「測定誤差では説明できません」


 即座に返したのはアヤセだった。

 端末の画面を操作しながら、淡々と続ける。


「全項目で、再測定をかけています」

「誤差範囲内での変動はありますが、傾向は変わりません」


「年齢をごまかす意味がない」


 ミナトが静かに補足した。


「特殊な生まれとは聞いているが、保護者記録を照合済みだ」

「七歳で間違いない」


 ロッドは小さく息を吐いた。


「……だよな」


フジワラが視線を向けた。


「……失礼しました」

「では、順に確認します」


 場の空気が、雑談から評価へと切り替わる。


 まず、ミナトが知能評価を提示する。


「知能面について」

「換算で十三から十四歳相当です」


 数値が並ぶ。


「実年齢に合わせた進度での教育は不要です」

「同年代向けの課程では、刺激が少なすぎます」

「基礎課程は、想定より早期に終了する可能性が高いと思われます」


 淡々と話す。


 次に、ゲンマが身体能力のデータを示す。


「体格は十歳相当」

「そして、運動能力は十二歳前後。七歳のものではない。」


 一度、画面を切り替える。


「早熟の可能性もある」


 ゲンマは腕を組んだ。


「ただし、できることが多いからといって、基礎学力と同じように負荷を上げるのは論外だ」

「今“伸ばす”より、“壊さない”ことを優先する」


 異論は出ない。


 最後に、アヤセが魔法適性の項目を開いた。


「魔法適性についてです」


 わずかに間を置く。


「四十QEUは外界基準では、訓練済み成人相当の力です」

「本来、このシェイラの環境で再現される値ではありません」


 数値が並ぶが、説明は最小限だった。


「最終判断を確認する」


 フジワラが引き取る。


「我々は、本気を出した彼を制圧できない可能性が高い」


 誰も否定しなかった。


「刺激は避ける」

「単独対応は禁止」

「必ず二人体制」


 決定事項が淡々と積み上がる。


「必要に応じて、シェイラの拘束用装備を携行する」

「ただし、使用は最終手段とする」


 ロッドが一度だけ視線を伏せた。


「念のため、魔法の教育は行いませんよね?」


「その通り。ここでは魔法の教育は行わない」


 即答だった。


「特別教育機関には、魔法の教育を行うためのノウハウはない。

 そして、特別教育機関の役割は、魔法を教えることでもない」


「少なくとも、この段階で扱うべき力ではない。

 我々が制御できない力を、無理に引き出す理由もない」


「加えて、なぜこの段階で“使えているのか”すら分かっていない。

 分からないものを、伸ばすのは危険だ」


「教育は、知識と生活の安定を優先する」

 全員が了承する。


 フジワラは最後にまとめた。


「最終判断を確認する」

「知能面は年齢基準を撤廃」

「身体は現状維持を最優先」

「魔法については、触れない」


 そして、付け加える。


「……外部との私的通信は、当面、許可しない」

「彼自身には、危険性は伝えない」

「“特別な教育を受ける”という事実だけを伝える」


「これは、才能のある子供をどう育てるか、という話ではない」


少し間を置く。


「この国にとって、

 将来、制御不能な存在になる可能性があるかどうか、

 その分岐点にいる、という話だ」


誰も口を挟まない。


「失敗する余地はない」


 会議は、それで終わった。


 翌朝。


 ロッドは昨日と同じように、アオの部屋を訪れた。


「おはよう」


 軽い声だった。


「昨日の結果について、少し話をしましょう」


 アオは頷く。


「難しい話は省きますね」


「碧殿の理解力は同年齢より上のようなので勉強は、年上向けの内容になると思います」

「通常で10年以上かかるカリキュラムを想定していましたが、恐らく早く終わる事になるでしょう」


「体格についても、理解力と同様に同年齢より上のようですが、

 こちらに関しては当面は無理をしません。

 身体の成長に合わせて、段階的に負荷を調整していきます」


 一拍置く。


「何か質問はありますか?」


 少し考えてから、アオは口を開いた。


「大まかで構いません」

「今後のカリキュラムを、共有していただけますか?」


 ロッドは一瞬だけ、言葉を選んだ。


「詳細まではお渡しできませんが、

 大枠なら説明できます」


「基礎学習、基礎鍛錬、生活訓練。

 この三本を並行して進めます」


「具体的な内容は、その都度担当の教員から説明があります。

 分からないことがあれば、その場で確認してください」


「それと、魔法について一点」


「使用自体を禁じるわけではありませんが、出力を上げることはしないでください。危険です」


「使うなら指定区画で。制御の確認に留めてください」


「安全管理のため、記録を取ります」


「何か困ったことがあれば、すぐ言ってください」


 少し考えてから、アオは口を開いた。


「もう一点だけ」

「外部に、連絡は取れますか」


 ロッドのまばたきが一度だけ遅れた。


「当面、碧殿からの“直接の私的通信”は控えていただきます」


「必要な連絡は、こちらが預かり、確認した上で取り次ぎます」

「遮断ではありません。緊急の要件は必ず通します」


「母さんに……無事だと伝えることも?」


 ロッドは否定せずに頷いた。


「“無事の報せ”は、こちらから出します。定期的に」

「ただし、碧殿の言葉をそのまま外へ流すことはできません」


 アオの目が僅かに細くなる。


「信用されてない、ってことですか」


「違います」


 ロッドは即答した。


「信用の話ではなく、責任の話です」

「碧殿の生活と学びを守る責任は、いまは施設が負っている。

 だから“窓口”も、我々が持ちます」


「……加えて、碧殿も被害にあった直近の事案に関連しても、外部への情報の流れに確認すべき点が出ました。連絡経路の安全確認が取れるまで、外部とのやり取りは一度こちらで預かります」


「碧殿を疑っているのではありません。事故を起こさないための運用です」


 アオは頭を下げた。


「……説明、ありがとうございます。分かりました。

 これからよろしくお願いします」


ロッドは軽く頷く。

ロッドの声を背に、アオは小さく息を吐いた。


「今日から、少しずつ始めていきましょう」


ここで学ぶべきことは、多い。

だが、時間を無駄にするつもりはない。


 全部吸収して、

 一日でも早く、ここを終える。


 ――守れるだけの力を、身につけるために。


 教育は、始まった。


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