隣の芝生は青い18
「ねぇねぇ、見てあそこのイケメン」
「やば、読モか何かかな?」
「てか、真ん中のモブ男が引き立てて余計に二人が際立つのかも!」
「うん、そうだね、真ん中のモブ男もモブでいい味出してる出してる」
すみません、真ん中のモブ男ですが、街中を騒がせてしまい申し訳ありません。
さっきからこの変哲の無い街中を歩いているだけなのにたくさんの視線を集めている。
イケメン天王寺と二人でこうやって歩いている時もこんな風にキャピキャピのJKとかに見られたり、ショップ店員とかに必要以上に商品を進められたりしているけど、今日に限っていつもより注目浴びてるのは何故だ?
多分、いや多分ではなく間違いなくコイツのせいだろう。
「カラオケ楽しかったね、また行きたいね、今度は二人がいいけど…」
オレの左隣でキュンキュンと瞬きをさせて夢見る乙女のように声を弾ませているのは、同じクラスメイトの蒼井雅樹である。
今日の放課後オレに話しかけてきた時はいつも通りぎこちない言葉使いだったのにカラオケと言う密室空間を供に過ごしたせいなのか?
新密度がかなり上がってしまった。
とは言っても極力オレは蒼井から離れた席に座っていたのだが。
別に蒼井の事が嫌いな訳ではない。
オレの勝手な誤解なのかもしれないが、蒼井はオレに特別な感状を抱いている気がして自然と距離を取ってしまうのだ。
まぁ、こんなこと言っておきながら全てがオレの勝手な思い込みだったら蒼井に大変失礼なのだが…。
まぁ、それはさておき、彼のルックスはオレの右横にいる天王寺の正統派イケメンルックスとはまた違う甘いルックスだった。
イケメンは一人でも絶大な効果を表すが二人だと倍増の破壊力をもたらすと言うことを今日知った。
「いやー、でも蒼井の歌声って天使レベルだったな」
今まで黙っていた天王寺がポツリと言った。
天使レベル…天使の歌声と言いたかったのだろう。
それはオレも感じた。
透明感のある透き通った高音ボイスで放たれる声は、ウィーン少年合唱団も真っ青なぐらい、美しい歌声だった。
「そこら辺のアイドルより上手なんじゃない?」
確かに、歌手を目指してると言われても全く驚かないレベルだった。
イケメンで歌も上手いとか…。
何故、オレの周りはこうも完璧な人間が揃っているのだろうか?
イケメン天王寺に誉められて悪い気はしなかったのだろう、ふふふんと鼻唄を歌ってみせた。
「アイドルかー、全く考えたことなかった、アイドル、うん、面白そう。でも、僕は鈴木くんと一緒にカラオケに行ける方が数倍楽しいー」
ねっ、鈴木くん?
と無邪気に同意を求められても何の取り柄も無い平凡なオレには何と返答していいか分からなかった。
ああ、神さま、1つでも自分に取り柄をください。
と思うのもワガママなのでしょうか?