獣の島グロウ 第二話 勝利くんは抱きまくらにされたようです
「………来ましたね。桃花ちゃん、心さん」
そこには天本さんがいた。そして後ろには立派なホテルが……
「今日はここに泊まります。」
「あ…天本さん?場所間違えてないか?」
「いえ、もうチェックは済ませて、八神さんと本田さんは休んで居ますよ」
「いや、代金は?どうするんだ?」
テレビでお金持ちが泊まるホテルを紹介する番組がある。今それ並のホテルが目の前にあるのだ。
「大丈夫ですよ。必要経費ですから私が払いました」
「そ……そうですか」
勝利は正喝達がいる部屋に向かった。今は6時ぐらい。
部屋は二部屋とっていて男子と女子で分けている。
とりあえず疲れた。師匠との戦いもあったしナンパどもに勘違いされるし、襟引っ張られるし・・・面倒事は避けたいのに、なんで俺には降りかかるんだ?
そんなことを考えていると……
「どうした?」
「え?…いや、単に疲れただけだ。」
「そうか、なら露天風呂に入るといい。疲れがとれる。」
俺は、迷わずタオルと近くにあったバスローブを持ち、風呂に行った。
そこまで広いとは言えないが、必要な物は揃っている。
シャワーやサウナなどと、大体は揃っている。余計な物は脱衣所に無駄に牛乳があることだろう
20分ほど入って、サウナに5分ほど入って風呂場から出た。バスローブを着た後牛乳を飲んでから部屋に戻った。
「お疲れ〜」
「誠治か、って何それ?」
勝利がみた物は丸い円盤のような物だった。
色は緑と赤で、表面は鋭い刃が無数に着いている。
「ここをこうして〜」
近くにあった赤いリストバンドを拾い、何か難しい作業をしている。
「これで完成〜」
「ん?出来たのか?」
「そうだね、後は・・勝利次第かな。」
「ちょ、どうゆうことだ?」
これは、端から見れば何の変哲もないリストバンドだ。一体なにに使おうと言うのか?
「物は試し、着けてみて」
「あ、ああ・・・何も起きないけど、不発?」
確かに何も起きないリストバンドは二つ組で両手に一つずつ着けたが本当に何も起きない。
「リストバンドにレジェを送ってもらえない?」
「わかった」
俺がレジェ送ったらさっきの円盤が出てきた。
「と・・とと、なんだ!これ!?」
「うん。成功みたいだね。それはシールド型ブーメラン武器通称『CBB』」
「CBB?どうゆう頭文字だよ」
「CBBってとこかな、一応盾としてもある程度は使えるから」
「なる程、普段は邪魔にならず、使いたい時にすぐに使える。便利だな」
「そうだね〜」
「…ところで、どうしてこんな物を作ったんだ?」
「それは……
「それはあなたが危険だからです。」
誠治が言いかけた時に天本さんが部屋に入ってきた。
「天本さん、…どうゆう意味だよ。」
「あなたの戦闘スタイルは接近戦を得意とするもの。故にカウンターや多数の相手は苦手かと思いました。」
「……そうだな。」
認めたくはないがそれは事実
「だから私がCBBを作ったのです。」
「あと、勝利が邪魔にならないよう、僕が調整をしたんだよ。」
「ありがとな、二人とも。」
CBB。
リストバンド型携帯武装。
両手に着けたリストバンドにレジェを送ることでCBBを取り出し、盾、またはブーメランとして活用可能。
「……ああ、そうでした本題を言い忘れいましたね。」
「本題?」
「ええ、夕食の用意ができたそうなので行きましょう」
どうも、このホテルは広過ぎる。
確か天本さんは一階と言っていたが、まず一階が東京ドームより広い。
とりあえず出入りに向かい、案内板を見る。
だが、すぐ外には
「・・・え?」
15分後・・・
「あれ?どうしたの勝利?」
「うん、……まあ、ウチらの部屋に師匠も泊まるって。」
勝利達の部屋にはベッドが一つ余っている。
順当だろう。
入り口には師匠がいて俺が見つかってしまい、師匠も泊まるって冗談じゃない!
師匠は大変うるさい!なんとゆうか、存在がやかましい。・・・まぁ、今はそんなことおいといて、夕食を楽しむか。
「これは…バイキング形式か」
「バイキング?ビュッフェじゃないの?」
「え?いや、同じような物だろ」
「そうなんだけど、」
「どっちでもいいだろ、そんなこと」
一方、師匠は・・・
「師匠?何ですか?そのご飯の量は」
おそらく5合はあるだろう。
だが、この程度で俺は驚かない。前は倍近く食べた事があるから。
「いいじゃねえか、食べ放題なんだろ」
「まあ、そうですけど・・・」
この人に栄養バランスとか言っても聞かないだろう。
「おい桃・・ってあれ?いない?」
さっきまで隣にいた桃花の姿が無い。辺りを見回すと、もう食べ物を取りに行っていた。
「もう行ったのか、・・ん!?」
帰ってきた桃花の皿には主食と呼べるものがなかった。と言うより、デザートしか乗っていなかった。
「えへへ、ちゃんと食べられるだけ取ってきたよ。」
「・・・・・はぁ」
どうする?おそらく桃花はデザートだけで十分とでも思っているのだろう。
「桃花、それだけで足りるか?」
「うん。大丈夫だよ?」
笑顔で言うな。さて、どうするか。
俺がため息をつくと、なにかを感じたように、天本さんが来た。
「桃花ちゃん?」
「あ、お姉ちゃんこれだけで足りるかなぁ?」
「(さて、天本さんはどんな反応をするか)」
少し考え、まぶたを2秒ほど閉じたあとゆっくり開き
「桃花ちゃん。ちゃんとバランスを考えてください」
まあ、当然こういう反応するな。少しだけホッとした。
「ん・・・でもこんなに取っちゃったけど・・・」
「大丈夫ですよ。みんなで分ければ問題ありません」
「ほ、よかった。」
「桃花ちゃん。私が選んでおきますからね」
「うん。分かった」
桃花がテーブルに座ったのが見えて
「助かりましたよ天本さん」
「何がです?」
「フォローですよ。俺はなんて言えばいいか分からなくって・・・」
「・・・意外と甘いのですね。桃花ちゃんに」
「なんか、怒れなくてさ。桃花には」
それが桃花の代名詞といえるかもしれない。
「ところで勝利さん、あなたも楽しんだらどうですか?」
「ああ。そうだな。」その後、誠治が調子に乗って食い過ぎたなどとゆう話はおいとこう。
午後10時
そろそろ寝ようかと思ったが明日の予定とか色々と天本さんから話があるそうだ。
「皆さん揃いましたね。明日は7時に起床、9時にはここを出ます。」
無駄の無い台詞を出された後誠治が
「ちなみに〜さっき面白いもの見つけたんだ〜」
やや苦しそうに話す誠治そう言いながら出入り口に向かった。
ピィ…とボタンを押すと……
ゴゴゴゴゴと天井から壁が降りてきた。
「・・・なんか凄いな。」
部屋の中には4つの個室ができていた。
「どうも、寝室を4つに分けるみたいなんだ〜」
「じゃあ俺様は一番奥を使わせてもらうぜ。」
まあそんな感じで寝ることになった。
「んじゃ、俺は一番手前で」
「おやすみ〜」
夜11時30半
「(駄目だ、眠れない)」
眠れないと言うか半分寝てる感覚がする。そして背中には何かがある。意識が徐々に戻り、謎の違和感の正体を掴もうとし動くと…。
(ふにゅ…)
何か柔らかい感触が当たった。 しかも随分心地好く、何故か反射的に身を固くしてしまう。
「(なんだこれ)」
気を取り直し、意識を覚醒させた。目は開いたが瞳孔は閉じているためまだ真っ暗だ。
その時、謎の物体が動いたようだ。
薄々正体に気がついてしまった。
瞳孔が開き、暗闇の中で正体を掴んだ。
そこには見慣れた姿があった。
「ん?桃花!?」
なぜ俺の布団に入っている!?彼女は同じ布団の中で、気持ち良さそうに寝ていた。
「(えーと、落ち着け俺はいつコイツを部屋に入れた?)」
勿論入れた覚えはない。入れたら師匠に半殺しされる。答えは簡単。勝利が部屋の鍵をかけ忘れ、勝手に桃花が入ってきた。と言うか、今の年齢で男女がこうするのはマズイ。それにも関わらず桃花はかなり密着している。
「桃花っ!起きろっ!」
肩を揺さぶりつつ声を上げ、起こそうとするが反応しない。
その時突然、桃花は寝返りをうち勝利を襲う。
「く、くそっ」
さらに密着した桃花は勝利を抱き枕を見つけたかのように抱きついた。一気に胸の感触を押し付けて来る。純朴な勝利には余りにも新鮮な感触だった。
「!!!!!」
勝利は声にならない声を上げた。
結局……その日は寝ることなどできず、次の日の朝、師匠や天本さんに半殺しされたのは言うまでもない。