優しさは温かい
「六つ目の試練なんだが〜実はなにも決めてないんだ。・・・お前らで勝手にやってくれ」
そう言ってガンマは姿を消してしまった。唐突な試練放棄に呆れてしまうがこれは自分で考えろってなことなのだろうか?そもそもこの試練ってブレイブ習得の為だよな?一切それらしいことをしてないのだから今やるべきなのではないか。
考えを整理する為その場に座り込む。
そもそもブレイブは己の武器と一体化するものだと言われているが実際は少し違う。武器、つまりはレイブは己の潜在能力を形にして生み出したものでそれと一体化するってことは自分に秘められた力が体で分かりそれをまたレイブとしてまた生み出してるわけだ。
最初の正喝のアレは未完成で身体能力が上がっただけだが、誠治の奴は完全にコントロールしてやがる。俺もアレぐらいの変化が・・・あっただろうか?
ラグラルク時代の事を思い出そうとしてみるがイマイチ思い出せない。まるで鍵をかけられた箱の中の物のようだ。
「ブレイブ・・・」
レイブと一体化するイメージがまるで掴めないので当然失敗した。ブレイブした時の俺、つまりはラグナラク時代の俺がブレイブを使えたってことは殺戮の勝利って異名に相応しい武器が俺の本質なのか?
あまり思い出したくはないが必死に思い出そうとする。思い出せ、昔の俺を、その本質を・・・
断片的な記憶を探り出すことに集中して頭を抱える。口の中に「ん〜」と声を響かせ呼吸も深くなる。
しかしいくら考えても思い出すことはできなかった。
「大丈夫?勝利君?」
「大丈夫・・・ではあるんだが大丈夫じゃない」
桃花は具合が悪いのではと心配したようなトーンだったので具合の面では大丈夫だが試練攻略の意味では大丈夫ではないのだ。
「桃花、俺ってどんな人だと思う」
「えーとね見た目よりもずっと優しい人かな?」
桃花は質問の意図が半分程しかわかっていないようだった。説明不足もあるだろう。自分がどういう風に見られているのかを知るのも大切なことだ。
あと見た目よりは余計だ。初見の時俺って怖い人にでも見えていたのだろうか?
「優しい・・・か。昔の俺にはそういう感情はなかったかもな」
戦い続けた頃はそんなこと考えもしなかった。思い出せるのは罪悪感と後悔のみ。・・・あれ?いつからだろう、そんな風に考え始めたのは、そういう考えに至ったのは・・・。
優しさが生まれたのは何かきっかけになるものがあったからだろう。
「昔の勝利君はやっぱり違ったの?」
「実はあんまり思い出せないんだ。俺がセンシンで話したことだって戦争が終わった後師匠から聞いたことだから」
あの話が脚色されたものかそうでないかは分からないが真実がどうであれ心に嘘はついていなかった。自由が欲しかった。縛り付けるものがなくなりただ生きたいがままに生きる。その思い自体ははっきりと覚えている。
「ん?ああそっかまだ変わってなかったんだな。俺の本質も」
自由を手にする為にラグナロクというものを滅ぼした。けど今は違う。失いたくない人達がいる。守りたいものがここにあるんだ。
「勝利君?」
「少し、自分の事がわかった気がするんだ。変わったものが多すぎて、けど唯一変わらないものがあって・・・なんて言うのかな?俺は・・・俺だ。他の誰でもないここにいる自分だけが真実なんだ」
立ち上がり刀を呼び出す。そして放つ。忘れていたものを、感じていたものを・・・
これが・・・ブレイブなのか?
その場にはそれは刀というよりは片刃の剣と呼べるものだろう。しかし最も変わったのは形などではない。刀身自身が炎のように燃え盛る。炎で出来た刃なのだ。しかし火傷するような熱さというよりは暖かみを感じる炎だ。
「あったかいね、勝利君の」
「ああ、この炎は相手を傷つける為のものじゃない。命の灯火と言えばいいのかな?」
炎と化した刀身に触れる。この感覚は・・・冬のコタツの様に一度触れたら離れたくなくなる。全てを包み込むものだ。
そう思った矢先その思いが実現する。炎が俺の体を包み込む。力が溢れてくるのが分かる。命の輝きとも呼べるその炎は何人たりとも魅了し惹きつける。
俺の意思である程度炎のコントロールも効くが特に決まった形を持たず自由に燃えさかる。
「これが俺のブレイブ・・・なんだよ、もっと強力な火力じゃないのかよ・・・」
はっきり言ってこれは誠治みたいな攻撃力を上げる様なものではない。どちらかといえば防御寄りのブレイブだ。
「私は好きだよ。勝利君の」
そう言って抱きつかれる。他人に触れられてもこの炎は大丈夫なようだ。
「これ、あったかい・・・それに心地いいよ?」
「む?そうなのか」
まだこれの能力がはっきりしたわけではない。しかし間違えなく俺は殺戮なんかよりは違う力を手に入れた。




