プロローグ 最悪の再会
「本日からお世話になります、ベアトリス・コールヴェールです。よろしくお願いします」
ついに、この日が来た。
私は感動で胸を踊らせていた。
宮廷魔術師団入団試験に合格してから半年、研修期間を終えやっとのことで配属されたのは、念願の『第三師団・魔術研究部隊』だった。
宮廷魔術師団にはいくつもの師団があり、それぞれによって遊撃・防衛など役割は別れている。
その中でも第三師団は研究に特化した師団であり、いくつもの研究室が軒を連ね、魔術薬や魔獣の生態研究というように多種多様だ。
「ようこそ、ベアトリスさん。あなたの配属は『魔術解析室』ね。案内するわ、着いてきて」
大勢の魔術師たちが行き交う第三師団本部の建物で、きょろきょろと辺りを見回しながら案内に着いていく。
コールヴェール家の養子になってから、第三師団に入団することが自分の一番の目標だった。
(ここが、お父さんがかつて活躍した場所……)
父が最初に入団し、大きな功績を挙げやがて筆頭魔術師と呼ばれるまでに成長した場所だ。
そう思うと、喜びだけでなく緊張も走る。
がんばろう。そう意気込んで、案内された部屋のドアをノックする。
「はじめまして、本日よりお世話になりますベアトリス・コールヴェールと申します。よろしくおねが、い……し………………」
え?
なんで、あの人がここにいる?
何も言えず、ただ、呆然と立ち尽くす。
それは相手も同じことだった。
「ベアトリス……本当に、ベアトリスなのか?」
「なんで……」
忘れもしない、夜空のような色をした黒髪。
あの頃よりも背はさらに伸びて、身体つきもがっしりとしている。
かつての面影を残したまま、彼……ジュリアンは成長していた。
「ベアトリス……! 俺はずっとベアトリスに会いたかったんだ!」
なぜか瞳を潤ませ、感激したようにこちらへ駆け寄ってくる。
嘘でしょ。
思わずギョッとして後ずさってしまった。
「こっ、来ないで……!」
「待ってくれ、ベアトリス!」
必死に追いかけてくるが、そんなもの構わず逃げ続ける。
(ヤバい……ヤバいヤバいヤバい!!! なんで、昔の失恋相手が上司になってるのよーーー!!!)
それも、相当苦い思い出のある相手が。
ここへ来た時の憧れとドキドキはどこへやら、白い髪を振り乱して走る。
とにかく、一分一秒でも早くここから逃げ出すことしか考えられない。
——————ジュリアンと私の出会いは、七年前に遡る。
始まりは、私が自身の『前世』を思い出したところからだ。




