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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第693話 意識体に再接続、ロシアからウクライナへの道中で

 市民は核戦争が起きたと思い、終末世界を生き延びるために、略奪行為などに走っているようだった。この状況では、きっと弱いものから死んでいくだろう。


 だが……ゾンビや試験体が来てしまえば、強いも弱いも関係なく奴らに飲み込まれる。


 タケルが、残念そうに言う。


「結局、人間はそうなってしまうんだよな……」


「仕方があるまい」


 クキも、諦めたように口にした。それでも俺達は荒れた都市を歩き、テレビ局を探す。


「電波塔。あれじゃない?」


 ミナミが指さした先に、それらしきものが見えて来る。


「じゃねえか?」


 街が荒れているおかげで、俺達一団も怪しくは見られなかった。あちこちでガラスの割れる音がして、激突した車が煙を噴き上げている。


「ん? ありゃ警察じゃねえか?」


 テレビ局の前には、バリケードが作られており、そこに銃を腰にさした奴らがいる。


「九鬼さんよぉ。警察はスピーカーでしきりになんて言ってんだ?」


「市民は速やかに、家に帰って外に出るのを避けろ。ロックダウン中だから、出歩くなと言っている」


「でも、人が集まってんのか……」


 バリケードの外に市民の集団が居て、警察に交渉しているようだ。


「行ってみよう」


 俺達が列の後ろに行くと、警察が言う。


「市民は、速やかに帰宅をしてください。政府から通達があるまでは、家を出ないで下さい」


 前にいる市民が言う。


「いつまでたっても、政府は動かないじゃないか」


「ここで言われても、どうしようもない」


 そこで、クキが言う。


「我々は旅行者だ」


「ここに来られても困る。領事館へ」


「いや、情報が取れないんでね、ここなら回線が繋がると思ったんだが」


「ダメだ。他国の人間を入れる事は出来ない」


「ネットが繋がらないんだ。どこに行けばいいのかも分からない」


「それは、警察のあずかり知らないところだ」


 正論だった。無理に突破も出来るが、オオモリがぼそりとクキに聞いた。


「ここって、テレビ局ですか? 領事館じゃない? って聞いてください」


 とぼけた質問だった。クキが聞くと、それに、警察が眉間にしわを寄せて答える。


「そうだ。分かったらとっとと行け!」


「わかった」


 そして俺達は、その場を離れる。


「じゃあ、車庫に侵入しましょうか?」


「車庫? 分かった」


「きっとこっちだわ」


 シャーリーンが建物を回っていき、裏手に行くと、そこに大きな車庫らしきものがあった。


「ビンゴですね。シャーリーンさん」


 そして、ミオが俺に言う。


「人もいないわ」


「真空裂斬」


 俺は、フェンスと中の壁ごと斬り落とした。


「入ります」


 静かに空いた穴から、皆でぞろぞろと入り込むと、そこには数台の車が止まっていた。


「ビンゴです。あれですよ」


 それを見て、マナが頷いた。


「なるほど、中継車ね」


 そこには、小型バスほどの大きさの車があった。天井にアンテナが付いており、会社のマークが一面に書かれている。


「武さん。出番です」


「へいへい」


 タケルがどこからともなく針金を出し、あっさりカギ穴をあけて車に潜り込む。


 チュチュ。ブゥゥゥゥン。


「かかった」


 マナが車内に乗り込んで機器を触り、オオモリに言った。


「あんたも、たまには役に立つわね」


「えっ! いつも、じゃないんですか!」


「図に乗るな」


「す、すみません。では、回線を繋げます」


 オオモリは端末を繋げて、ハッキングを試みる。それは、一瞬だった。


「繋がりました!」


「おお、やったか!」


「はい。で……マジか……」


「なにがだ?」


「敵に取りつけた発信機が、まだ生きてますよ」


「なに?」


「……ウクライナ……あの敵はウクライナに逃げてます」


 それを聞いて、クキが言う。


「モスクワじゃなかったか」


「ですね」


「だが……厄介でもあるな」


「ですね」


 俺が、二人に尋ねる。


「どういうことだ?」


「紛争地帯です。停戦したかどうか、ロシアが非常事態ですからね」


「なるほど……なら、どうする?」


 すると、そこでタケルが言った。


「こんな大変な時だからよ、この車、パクっちゃえばいいんじゃね? 警察も身動きとれねえだろうし、多分しらーっと、抜ければ盗めるぜ」


「ナイスアイデアです。武さん」


「んじゃ、行こうぜ」


 そして皆が直ぐに中継車に乗り込み、俺が先を行ってくりぬいた壁の外を見る。誰もいなかったので、手招きをすると中継車が俺の後ろに来た。そのままゆっくりと外に出るが、警察はどこにもいなかった。


「行こう」


 俺が乗り込み、中継車はスーッと何事も無かったように進んでいく。そして難なくテレビ局を抜けて、俺達は都市を進み始めた。


「マジで、簡単だったな」


「本当ね……警察も手が回ってないんだわ」


 走る車の中で、オオモリが突然話し始めた。


「あ、繋がった!」


「なににだ?」


「意識体が途切れ途切れに、何か言ってます」


 オオモリが、集中して言葉を聞いた。


「信じて良いか分からないですが、敵は意識体と繋がっている事を知り、通信を妨害しているそうです。いつまで繋がるか、分からないらしい。そして、やはり敵はウクライナにいるようです」


「やはり、敵は繋がりを察知していたか」


 都市部を抜け、草原地帯を走り始めた。屋根の上に荷物を載せた車や、荷物を詰んだ車が走っている。


「避難……か……どこに行くかだがな……」


 クキが難しそうな顔でそれを眺め、日本でゾンビパンデミックを経験した他の仲間が頷く。


「こうなってしまうと、時間の問題なのよね。物資を強奪した人は、むしろ生き延びる可能性が高いし。丈夫な建物に立てこもるか、隔壁や丈夫なフェンスのある施設を見つけて、バリケードで塞ぐしかない」


「あの、日本の空港のようにか」


「そう。ゾンビが入れないようにするしかない。でも……」


「相手は、試験体……」


「そう……あれからは、逃げられないわ」


 日本でのようには、いかないだろう。あの時よりも、ゾンビが進化してしまっているのだ。


 オオモリが、ぼそりという。


「なるほど……分かりました」


「なんだ?」


「どうやら、紛争地帯を隠れ蓑にしているようです。そこなら、邪魔される事無く研究が出来るし……、実戦でゾンビの試験をしているらしいです」


「最悪だな。そう言う事か……最終目標のために、試験的に実戦配備をしているという訳か」


 流石に、俺でもわかる。


「これから、ロシアで本格運転が始まるという訳だな」


「あっ、切れました」


「何故だ?」


「分かりません。ですが、こちらからも、かい潜って行くしかないですね」


「やってくれ」


「はい。このまま進めば、ヴォロネジという都市に行きます。百万人の都市らしいですが」


「どうなってっかな」


「わかりません」


 だがまだこの辺りの建物には、生存者がいる。逃げる者、残る者、恐らくは情報が断絶されたために、何をして良いのか判断がつかない状況なのだろう。


「モスクワから近い都市だからね……」


「ああ。既に広がってるかもしれんな」


「この感じ……」


 すると、先の道路上にトラックが横になっており、俺の気配感知では、その周りに人が隠れている。


「まあ……罠だろうな」


「どうするの?」


「構わず、トラックを吹き飛ばす」


「そうね」


 俺が中継車の天井によじ登り、進行方向に身構える。


「推撃!」


 ドン! とトラックを吹き飛ばし、俺達の車は何事も無かったように進んでいく。後ろを振り向けば、ぞろぞろと脇から人間が出て来ていた。


「強奪か?」


「そうね、今は動く車とか武器、物資が貴重な時だから」


「どこでも、同じなんだな」


「そうね。みな、生き延びるのに必死だから……非情になるのよね」


 すると俺の気配感知に、まだ気配がする。


「なんかついて来てるぞ」


「さっきので、なにか武器を持ってると思われたのかもな」


「足止めするか」


「だな」


「氷結斬!」


 道路が凍り付いて、そこに車が向かって来る。


「刺突閃!」


 俺がタイヤを狙い破裂させると、車がくるくると回り出し道を逸れていった。


「やっぱり、こうなるのよね……」


 秩序が崩壊した時の人の動きを、もう皆が知り尽くしているのだ。


 そこで、オオモリが言った。


「あ……ヴォロネジの状況が、映りました」


 俺達は、オオモリが差し出した画面を見る。


「始まったばかりだな……」


「こっからだと、あと二時間だぜ」


「間に合うか……」


 画面に映し出されていたのは、防犯カメラに映る、試験体に追われる人間の姿だった。

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