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終末ゾンビと最強勇者の青春  作者: 緑豆空
第七章 アークパンドラ編

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第683話 箱舟の記憶を受け継ぐ者

 潜水都市が大陸に近づき、座る俺達の前には、ホログラムの意識体が立っている。俺達も久しぶりに、ゆっくり休むことができて、これからの戦いに備え身体を整える事が出来た。


「あなた方に、世界の未来がかかっています」


 意識体が言い、俺が答える。


「やれることは限られているが、全力は尽くすさ」


「アビゲイル博士と対話をさせていただきましたが、薬が完成すれば滅びを止める事が出来るでしょう。私達の頭脳を駆使し、完全体として仕上げる事を提案します」


 それについて、アビゲイルが言う。


「研究施設があればよかったのだけれど、純粋な脳核の保管と集積のみに特化している場所ですからね。より良いものが出来そうだったのですが、本当に残念です」


「そこで、ご提案があるのですが」


 皆が、意識体を見た。すると、俺達の前にホログラムの、電子で出来た脳が浮かび上がる。


「私達の究極の知識を、大森に持ち歩いてはもらえないでしょうか?」


「えっ! どういうことですか?」


 オオモリが、食いついて来る。


「あなたの技術と我々の知識があれば、いつか必ず、アビゲイル博士の技術を完成に導ける」


「でも、持ち歩けるほど、小さなデータではないですが」


「はい。可能ならば、大森にチップを埋め込まさせていただけませんか? あなたはあなたのままで、我々の知識を利用できるようになればいいのではないかと」


 それを聞いて、タケルとエイブラハムが反発する。


「いやいや。それで、大森が大森じゃ無くなったらヤベエだろ」

「うむ。その通りじゃ、とんでもないことになるわい」


「いえ。大森の個は変わりません。ただ、直接つなぐチップを埋め込むだけです」


「でもなあ……」


 だがそこで、オオモリが言った。


「いや、それが人類の未来のためになるのならば、僕はやりますよ。まあ、少しの興味もありますしね。アビゲイル博士のサポートが出来るようになるし、アークパンドラを倒す為、皆の目になる事が出来る。それに、僕は僕でいられるんですよね?」


「その通りです。あなたはあなたのままで」


「なら、やるしかないですよ。武さん」


「でもなあ。お前は、嫌じゃねえのか?」


「うーん。ちょっと怖いですけど、誰かがやらなきゃ」


「お前……」


 そこで、アビゲイルが言う。


「彼らの知識は、必要です。でも、大森が犠牲になるのは……」


「犠牲とか思ってないですよ。ちょっと、チートっぽくて面白そうじゃないですか」


「チート?」


「反則級の力みたいな感じで。だから良いですよ。やります」


 意識体が、オオモリに微笑みかける。


「ありがとう。あなたなら、そう言ってくれると思っていました」


「で、どうすればいいんです?」


「簡単です。医療施設へご案内します」


「わかりました」


 ロボットがやってきて、皆でそれについて行く事にした。するとそこには、簡易な医療施設が現れて、ロボットの腕がぶら下がっているようだった。


「座ってください」


「はい」


 オオモリが椅子に座ると、アームが降りてオオモリの頭を固定し、そして一本の管が降りて来る。


 プシュウウウウ!


「えっと大丈夫ですよね?」


「あ、消毒です。そして一部毛を剃ります」


「あ、はい」


 アームが降りて来て、髪の毛を沿った。そして、もう一本のアームが降りてきた。


「少しちくりとします」


「わかりました」


 プシュッ!


「うっ」


 次のアームが降りて来て、またプシュっと吹きかける。


「終わりです」


「えっ? もう?」


「はい。チップを設置しました」


「ほとんど痛みは無かったですけど」


「最初の消毒には麻酔も含まれてます」


「なるほど」


 ふわりと、ホログラムが出てきて言う。


「リンクします」


「あ、ああ。はい」


 次の瞬間だった。急にオオモリがかがみこみ、顔を押さえてうずくまる。


 タケルが叫んだ。


「お、おい! 大森!!!」


「だ、大丈夫です」


 そう言って、オオモリが顔を上げる。すると、オオモリは泣いていた。


「泣いてんのか?」


「彼らの記憶や、悲しみが、一気に頭の中に流れ込みました」


「大丈夫なのかよ」


「なんて言ったらいいんでしょう……凄く温かい。友愛の心が凄いです」


「そうなんだな」


 すると、意識体が言う。


「大森を邪魔しないように、必要な時に、必要なものを渡すだけになります。大森が必要と思った事を、思い浮かべれば、こちらで精査して情報を渡します。今、程度の状態では済まなくなりますから」


 それには、オオモリが答えた。


「でしょうね。きっと、全部データを流されたら、廃人になりそうです」


「そのセーフティーは万全です。ご安心を」


 そこで、俺が聞いた。


「で、まずは、どんな恩恵がある?」


「イライジャ・ゴールドシュミットがいる場所まで迷いません」


「そいつはいい。オオモリ、頼んだぞ」


「はい」


「ただし、高圧電流に触らないように、チップが焼き切れます」


 すると、オオモリが笑いながら言う。


「チップ以前に、僕が焼け死にます」


「くれぐれもご注意を、我々とのリンクが閉ざされますので」


「気を付けます」


 すると今度は俺達の前に、この潜水都市の構造図が浮かび上がった。そこにはルートが記されており、その先に何かがあるようだ。


「これはなんだ?」


「脱出用の船があります。それに乗って、海岸に辿り着く事が出来るでしょう。見つからないルートも、こちらで掌握しますので、自動運転でお任せください」


「わかった」


 俺達は、ルートを辿り都市の一番端っこまで来た。すると壁の一部が音もなく開く。


「どうぞ」


 中に入ると階段が上に続いていて、俺達はそこを上がっていった。すると奥にまたハシゴが出て来る。どこからともなく、意識体の声が聞こえて来る。


「ハシゴを登ると、脱出ゲートに出ます。その船に乗り込んでください」


 いわれるがままに行くと、そこに船があった。俺達が乗り込んでいくと、どこからともなく声が出る。


「浮上します。長くは浮上していられません」


「まあ、見つかるといけないからな」


「はい」


 すると、船の上側が開いて空が見えてきた。どうやら、もう、日が登って昼間になっているらしい。船がせり上がっていき、俺達は外に出る。外壁にレールが伸び、俺達の船はそれを滑って海に降りた。


 ザブーン。


 後ろを見れば、レールもハッチも消えて元の円盤に戻っている。それを見て、タケルが言った。


「でっ! でけえぇぇぇぇぇ!」


「本当だわ。こんなのに乗ってたのね」


 クキが笑って言う。


「内部があれほどの広さだったんだ、これぐらいは無いとおかしいだろう」


「そ、そうだけどよ。一つの島じゃん。こんなのを、人間が作っていたなんて。しかも、北極の海中に」


「だな。現実離れしている」


 すると、その巨大な陸地の様な円盤は、ゆっくりと水の中に沈んでいった。


「いっちまった」


「ですね」


 だが、今度は船がしゃべった。


「では、ご案内します。しばらくは、やる事も無いでしょうが辛抱ください」


「いやいや、楽ちんで良いぜ」


「そうですか」


 そうして船が滑り出し、静かな海を進んでいく。だいぶ寒い海だが、北極よりは、だいぶマシだった。しかも、この船の中は外よりあたたかい。


 そこで、シャーリーンが言う。


「アークパンドラの意味が、分かってきました。さしずめ、あれはノアの箱舟と言ったところでしょう」


 それを聞いて、ミオが頷いた。


「全くその通りね。あれが正解かは分からないけど、もっといいものになってたかもしれないわ」


「ですね」


 しばらくすると、クキが皆に言った。


「陸地だ。どうやら、自然の岸壁に漂着するようだな」


 それに、船が答える。


「まもなく、皆様とはお別れです。世界の未来をお願いします」


「だとよ。ヒカル」


「まあ、やれることをやるだけだ」


 船はゆっくりと接岸し、甲板から陸地に渡る。渡り終えると、船は自動で沖の方へと行ってしまった。


「これで、証拠隠滅か」


 すると、オオモリが言う。


「だそうです。では、とりあえず南下して街に行きますよ」


「「「「「了解」」」」」


 俺達はオオモリの誘導に従い、あちこちに融け残った雪のある草原地帯を歩き始めるのだった。

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