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プロローグ

大きな樹が立っているだけの広い草原、空は淡く紫がかった色に染まっていた。

風で草木がなびく音だけが聞こえてくる。


大きな樹から少し離れた所に、空を見上げている一人の青年が立っていた。

右手には手帳を持っており、束ねられた長い後ろ髪は風でなびいている。

服や体には無数の傷があり、旅路の厳しさが窺えた。


草木の音でかき消されそうなほど小さな声で青年は呟いた。


――これで終わりなのか?


青年はそれ以上何も言わず、力なく歩き始めた。


しばらく進んだ所で青年は立ち止まり、再び空を仰ぐ。


「なぜこれでは駄目なんだ。教えてくれよっ!」


叫びは広い草原に広がり、やがて消えていった。


「俺のこれまでの旅は、何だったんだ――」


その直後、一人佇む青年の前に、突如いくつもの眩い光が集まってくる。

突然のことに一瞬固まる青年。


しかし、集まっていく光を見て青年は眉をひそめ、握りこぶしに力を込める。


「そうか……」


青年は手に持った手帳に目を落とした後、再び空を仰いだ。



夜明け前の冷えた空気の中、霧がたちこめる街道に、フードを被った青年が一人歩いていた。

フードからはこぼれた赤い髪が風でなびいている。

虚ろな目をした青年は、今にも崩れ落ちそうな足取りで、前へ進んでいた。

暗く何もない街道を、一定の速度で歩いていく。


道の脇に大きな樹が見えた。

青年はふらふらとその樹に引き寄せられるように近づき、立ち止まる。

時間が流れ、辺りは霧が晴れて、太陽が昇り始めていた。


――糸が切れたように青年が倒れ込む。手には古びた手帳が握られていた。


お読みいただきありがとうございました。

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